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口撃開始。
しおりを挟むというワケで、『面白れー女』→ヒロイン辛酸フラグを叩き折らせて頂きます!
「………………」
「お姉様? やっぱりどこか痛い? 保健室に行く?」
「はあ? 保健室くらい一人で行けんだろ。そんなことより、お前は俺に付き合えって」
と、妹の腕を掴もうとした汚い手をバシッ! と強く払う。
「ってぇな! なにをする!」
「ああ゛? ……コホン。許可無く、婚約者でもない殿方が女性に触れるものではありません。公爵家では、そのようなマナーも教えないのですか?」
危うく、ガン付けを食らわせるところだった。わたしはしがない、子爵令嬢。一応、お嬢様の端くれに属している。ここは一つ、穏便に蔑みの視線と口撃だけにしてやろう。
「え? お姉、様?」
「なんだお前、ブスのクセに・・・ああ、あれか? 俺が妹に構うのに嫉妬してんのか? もっとマシな外見になって出直して来いよ」
にやりと自信満々な笑みを鼻で笑い飛ばす。
「ハッ、なにを言っているのか全くわかりませんわ。自分の機嫌も自分で取れないようなお子ちゃまを、わたくし共が相手にするとでも? わたくし、そこまで心が広くないのです」
あと、わたしは可愛い妹よりも地味顔ではあるが、不細工という程の顔ではない。
「あ? 手前ぇ、なにを」
「あら、嫌だわ。早速お子ちゃまが不機嫌になりましたわ。残念なことに、オモチャのガラガラやおしゃぶりの持ち合わせがございませんの。それとも、情緒不安定なお子ちゃまが欲しいのは、お気に入りの毛布の方でしたかしら?」
お気に入りの物を持っていないと情緒が安定しないという症状を、ブランケット症候群というらしい。某愛され系お茶目わんこのマンガに出て来る、お気に入りの毛布が手放せない男の子からの命名だそうだ。
「えっと、お姉様? どうしちゃったの?」
わたしの辛辣な言葉に、目を白黒させる妹。うむ、慌てる顔も可愛いゾっ☆
「てめっ、言わせておけばっ……誰に向かって口を利いてんだっ!?」
「あら、だって、自分の不機嫌を周りに当たり散らして、周囲の人へ自分の機嫌を取ってもらわないと癇癪を起こすって、まるでお世話されている赤ちゃんではありませんか? その分だと、お付きの方やご家族の方も相当苦労なさっているんじゃないでしょうか? こんな、図体の大きな赤ちゃんの面倒を見ないといけないだなんて、幾らお役目や派閥関係で側に侍らざるを得ない方々でもお可哀想に……」
クスクス笑うと、真っ赤になって憤慨するクズ野郎。お、上げたその腕をわたしへ振るうか?
「ああ、ほら? そうやってすぐに暴力に訴えようとなさる。それこそ、お子ちゃまな証拠ですわねぇ。僕ちゃん? お腹が空いていらっしゃるのでしたら、ミルクでも如何かしら?」
プッ、と彼の取り巻きの方から吹き出すような音がした。
「っ!?!?!? だ、誰だ今笑った奴はっ!?」
「まあ! 犯人探しだなんてやめてあげてくださいな。公爵家の、爵位を継ぐ可能性も低い放蕩三男に取り入って来いとおうちの方に言われて渋々付き従っているだけで、学園卒業後には放蕩息子とつるんでいたということでいい縁談にも恵まれないで落ちぶれて行くという、転落まっしぐらな人生を歩む可哀想な方……かもしれませんもの」
現時点での将来を考えると、かなりの泥船なのだよ。この、周囲を巻き込むお子ちゃまクソ野郎は。
「はあっ!?」
真っ赤になる彼とは対照的に、わたしの言葉に顔色を無くして行く取り巻きの一部。そして、
「す、すみません、急用を思い出したので失礼します!」
と、数名がダッシュで立ち去った。
おうちの人へ報告しに行くんだろうなぁ……まだ傷は浅いからどうにかなるかもねー。
さっさと見限るが吉だ。
「へ?」
呆気に取られる彼と、残った取り巻きの女の子二人。そして、侍従と思しき男子一人。
「あなた方、愛人になったところで大して甘い汁は吸えませんことよ? どうせ、この若さとそのお顔が何十年も続くワケでもなし。ご自分を大事になさった方がいいですわ」
「え? あ、あの……」
そこで丁度、お昼休み終了の鐘が鳴った。
「では、授業が始まるのでごめんあそばせ。さあ、行きますよ」
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