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プロローグ
1 憂鬱な帰郷
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「じゃあ、またな」
あいつが階段で立ち止まって振り返り、勢いよく手を振ってくる。アホみたいに無邪気な笑顔を俺に向けて。ひんやりとした空気を吸い込んだとたん、一瞬ジワリと景色がにじみそうになり、俺はあわてて俯いた。
ぐっと喉につっかかったままの思いを、息を吸って飲みこむ。大丈夫、笑えているはずだ。ぱっと顔をあげると同時に、俺は精一杯口角を引き上げた。
「おう」
そう言って手を振って、もう振り向かず駅のホームを足早に歩いた。それきりだ。
…それきり、のはずだった。俺はもう二度とあいつと会わない、と決めていたし、そもそも地元に帰ってくるつもりもなかった。そのためだけに東京にいくことを決め、このさびれたホームに別れを告げたんだ。
なのに、俺は今、あの見慣れた場所に戻ってきている…。あの頃と変わり映えのない小さくて殺風景なホーム。三年ぶりにおぼつかない足どりで、俺は故郷の地を踏みしめようと、していた。
一週間前、母親から唐突にかかってきた電話の第一声を思い出す。
「あんた、帰ってきなさいよ」
「はぁ?」
唐突なそれに、俺は思わず不機嫌な声を電話越しにぶつけた。
「もう夏休みでしょ」
「だからなんだよ」
「一生こっちに帰ってこないつもり?」
ぴしゃりと怒気をはらむ声が返ってくる。言葉につまった。正月くらい帰ってこい、と言われるたびに忙しい、また今度、と適当にあしらってきた。まるで何だか母親に全てを見透かされているような思いになり、俺はたじろぐ。
「うちの手伝いでもしに帰ってきなさい」
「ぬ…」
俺が反論できずに、わかったよ、一旦帰ればいいんだろ、と呟くと母親は、
「じゃあ部屋片付けておくから」
と言って、さっさと電話を切ったのだった。
あいつが階段で立ち止まって振り返り、勢いよく手を振ってくる。アホみたいに無邪気な笑顔を俺に向けて。ひんやりとした空気を吸い込んだとたん、一瞬ジワリと景色がにじみそうになり、俺はあわてて俯いた。
ぐっと喉につっかかったままの思いを、息を吸って飲みこむ。大丈夫、笑えているはずだ。ぱっと顔をあげると同時に、俺は精一杯口角を引き上げた。
「おう」
そう言って手を振って、もう振り向かず駅のホームを足早に歩いた。それきりだ。
…それきり、のはずだった。俺はもう二度とあいつと会わない、と決めていたし、そもそも地元に帰ってくるつもりもなかった。そのためだけに東京にいくことを決め、このさびれたホームに別れを告げたんだ。
なのに、俺は今、あの見慣れた場所に戻ってきている…。あの頃と変わり映えのない小さくて殺風景なホーム。三年ぶりにおぼつかない足どりで、俺は故郷の地を踏みしめようと、していた。
一週間前、母親から唐突にかかってきた電話の第一声を思い出す。
「あんた、帰ってきなさいよ」
「はぁ?」
唐突なそれに、俺は思わず不機嫌な声を電話越しにぶつけた。
「もう夏休みでしょ」
「だからなんだよ」
「一生こっちに帰ってこないつもり?」
ぴしゃりと怒気をはらむ声が返ってくる。言葉につまった。正月くらい帰ってこい、と言われるたびに忙しい、また今度、と適当にあしらってきた。まるで何だか母親に全てを見透かされているような思いになり、俺はたじろぐ。
「うちの手伝いでもしに帰ってきなさい」
「ぬ…」
俺が反論できずに、わかったよ、一旦帰ればいいんだろ、と呟くと母親は、
「じゃあ部屋片付けておくから」
と言って、さっさと電話を切ったのだった。
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