【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ

文字の大きさ
5 / 27
第一章 悠也との日々

2 セミとり

しおりを挟む
 翌日、母親に叩き起こされると、外はもう真っ昼間だった。
「楓、いつまで寝てるの!悠也くん来てるわよ」
 その言葉にがばっと飛び起きる。急いで玄関に向かうと、満面の笑みの悠也がそこにいた。
「よっ、セミつかまえに行かね?」
 ガキか。慌ててランニングシャツの上から羽織った上着が、左肩からずり落ちた。


「…迷惑だった?いきなり家に来たの」
 適当に外着用の半袖シャツに着替え、運動靴をつっかけながらバタバタと家の外に出ると、悠也が不安そうな顔で俺を見てきた。
「別にそんなことねーけど」
 俺は思わず早口でつぶやく。
「よかった」
 悠也はぱっと顔をほころばせた。
「やっぱかえでと一緒に遊びたくてさ」
「お前、他にも友達いるだろうが」
「いいや、セミとりはかえでとがいい!」
 そんな嬉しそうな、甘えるような声音は反則だろ。がっくりと肩の力が抜けて反発する気も失せてしまう。

「なんで俺となの」
 そうぽつりと尋ねると、悠也はキョトンとして目をぱちくりさせた。
「なんでぇって…昔はこうやってよく一緒に遊んでたじゃん」
「そりゃそうだけどさ」
 だからって、昔と今は違うだろ。俺はお前からずっと逃げてきたのに。
「かえでが帰ってきたら、久々にこうやって遊びたいなぁって思ってたんだよ」
 こっちの気も知らずに嬉しそうにそう話すものだから、息がつまる。
「…物好きなやつ」
 ぼそりとつぶやくと、いたずらっぽい笑みをうかべて肘で俺をつついてきた。

 本当にこいつ、全然変わらないんだな。安心して悠也の優しさに甘えるのはずるいとわかっている。それなのに今こうしてあの頃と変わらず普通に話せることに、ほっと胸をなでおろす自分がいた。このままただ一緒に、昔と同じように馬鹿みたいに笑って過ごしたい。それじゃダメなのに。

 あーあ、悠也がすきだ。
 いつまでこの気持ちをぶらさげたまま、俺はこいつのそばにいるんだろう。こんな感情消えてなくなってしまえばよかった。それでも今はもう少しだけ、離れたくない。悠也が俺に屈託もなく伸ばしてくれる手に触れていたい。

 俺は悠也に気づかれないように、靴紐を結び直す素振りをしながら、そっと小さなためいきをもらした。俺がかがんでいる間、悠也は少し先で立ち止まって、何も言わず待ってくれていた。

「お待たせ!」
 勢いよく立ち上がって悠也のもとへと駆けだす。悠也はかぶりを振って、にっと笑いながら虫取り網を軽く振った。

 嫌われることをずっと恐れていて、でもただの友達だと言うのなら、こんなふうに変わらず笑って優しくしてくれるなんて悠也はずるい。行き場のない思いをぶつけるように、道の端の小さな石ころを蹴飛ばすと、少し先の坂道まで転がり落ちていった。

「な、競争する?あの電柱のとこまで」
 目を細めてそう話す悠也の顔は、なんだか綺麗だ。
「ばーか」
 気だるげな顔で首を振り平静を装う。

「よし、いちについて」
「っておい!」
 だっと勢いよく駆けだした悠也の背中を思わず追いかける。ああ、何やってんだ。ぎゅっと胸の奥が痛むのを気づかないふりして、ひたすらに走った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】後悔は再会の果てへ

関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。 その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。 数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。 小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。 そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。 末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

処理中です...