【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ

文字の大きさ
25 / 27
最終章 夜明けのゆびきり

2 約束

しおりを挟む
 結局俺たちは、次の電車が来るまで座っていろんな話をした。
 悠也に「東京のゲーセンを案内する約束も絶対果たせよ」とちょっと怒られた。

「休みには、俺もちゃんとこっちに帰ってくるから」
 ぽりぽりと頭の後ろを掻きながらそう言うと、悠也は「絶対な」と笑いながら、俺の肩をとん、と突っついて笑ってきた。それから大学を卒業する時は一緒にお祝いをしよう、とも約束した。

 二人で話す一時間はあっという間で、次の電車が到着したときに、もうそんな時間なのかと名残惜しく感じた。悠也は「見送る」と言って、ベンチから立ち上がった。

「じゃあ、いくな」
 スーツケースを持ち上げて、電車に乗り込む。
「かえで!」
 扉の目の前まで一緒に来てくれた悠也が俺を呼び止める声に振り返る。心もとないような顔で言い淀んでいる様子を見たら、急に寂しさが胸に溢れそうだ。

「気をつけてな。あと、風邪ひくなよ」
 いや、親戚のばあちゃんか。
 電車のベルが鳴る中、悠也がわたわたとそんななことを真面目な顔して言うものだから、俺は頬が緩んでしまい、笑いを抑えるように口元に手を当てた。
「うん、 いってきます」
 扉が閉まると、悠也は手を振り続けながら走って、ホームの端まで追いかけてきた。ぶんぶんと腕を振って、少し寂しそうに懸命に見送ってくれる姿が遠ざかっていく。

「…ッ悠也ぁ!」
 俺は思わず必死に叫んだ。
「帰ってくるから、絶対!」
 扉越しなんだからきっと聞こえるわけないのに、ホームの端まで駆けてきた悠也がふにゃっと無邪気な顔で笑った。ホームがどんどん遠ざかっていく。悠也が小さくなっていく身体を届かせるように精一杯手を振り続け、かすかにうなずくように首を縦に振るのが見えた。

 悠也の姿と慣れ親しんだ駅はあっという間に見えなくなって、窓の外にはだだっ広い田んぼと畑ばかりがあたり一面に広がっている。初めて、今まで見慣れたはずのその風景を綺麗だと思った。 だんだんと明けて澄んだやさしい色へと変わっていく空と、くすぐったいような日差しの弾ける大地が、ゆったりと窓の外を流れていく。電車の中にまで差しこんでくる日の光に、俺は目を細めた。
 
 全部エゴだと思った、苦しみの数々は一生こびりついて消えてくれないんじゃないかって。臆病で情けなくて、もう何もかも失ってどこにも居場所はない、そう思っていたのに。
 まぶたの裏に悠也のとびきりやさしい顔が煌めいて、抱きしめてくれた温かさがじんわりと残っていて、それだけで胸がひりひりと音を立て、ぬくもりが心を駆け巡っていく。

 景色が滲んでいくのをごまかすように、目をこすりながら座席に腰をおろした。
 眩しくてあったかい、同時に爽やかに肌に纏う涼しい空気が、季節が変わろうとしていることを教える。また秋がくるんだな、とぼんやり思いながら俺はのけぞるように、窓辺にもたれかかった。

 眠ろう、と思ったけれど、悠也のぬくもりがずっと身体中をぽかぽかと灯すように残っていて、胸につきあげる愛おしさは、しばらく俺を離してくれそうになかった。
 がらにもなく手紙でも書くか、なんて思いながら俺は瞼を閉じる。

 拝啓、悠也さま、お元気ですか?

 …いや、さすがにかたすぎんだろ、それは。ふわっと一人でに微笑んで、悠也へ何を綴ろうか、と考えるうちにいつしか俺はとろとろと心地よい眠気に包まれていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

嘘をついたのは……

hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。 幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。 それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。 そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。 誰がどんな嘘をついているのか。 嘘の先にあるものとはーー?

【完結】後悔は再会の果てへ

関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。 その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。 数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。 小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。 そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。 末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

処理中です...