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【聞き出そう】
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・【聞き出そう】
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僕は塩鮭をとりあえず長老の家に置くことにしている。
何故なら長老の家が一番大きいからだ。
「また持って来たので、置かせて下さい!」
そう言って家に入ると、長老の家には大勢の人たちがいて、その中央で長老が寝込んでいた。
「どうしたんですかっ?」
「この塩鮭というモノを持ってきているのは、君だなっ」
昨日の見物人の中にはいなかったと思われる男性が僕に話し掛けてきた。
「はい、そうですけども、何かあったんですか?」
「長老が塩鮭を食べたらお腹を壊してしまったらしいんだ、この塩鮭って本当に食べてもいいものなのか?」
「えっ、いや、食べられるモノですし、僕は食べても平気だった、ですけども……」
僕はしどろもどろになってしまった。
まさか塩鮭で食あたりを起こすなんて。
どういうことだろう、と思った時、ハッとした。
「まさか、生で食べた、なんて、無いですよね?」
そう言うと、その男性を含む大勢の人たちがざわざわし始めた。
そして。
「これは、そのまま食べられないのかい?」
とその男性が聞いてきたので、
「そうです。火を通さないとダメなんです。そのこと、長老さんには言ったはずです」
「そうなのですか! 長老!」
「火を通す、火を通す、でも食べられると思ったんじゃ、食べられるとのぅ」
完全に生で食べていた。
いやいやいや!
「長老さん! ダメですって! 鮭は元来生であまり食べるモノでもないらしいんですから!」
「美味しそうだったからいいと思ったんじゃ、いいと思ったんじゃ、美味しそうだったからぁ」
「いやでも実際、火を通さないと食べられないモノを作られても困るよ」
その男性が僕に対して、強めのトーンでそう言ってきた。
「でも、この世界の食べ物は、火を通すといろいろ美味しくなりますよ……」
一応言ってみたけども、もはやこの状況じゃ僕のほうが自信ナシ。
大勢の人たちが「火を通すなんて」と言いながら、ガヤガヤしている。
そんな時、一人の女性がこんなことを言った。
「でも、火を通す食べ物も食べてみたいです!」
その女性は、僕に昨日”調理の家”を教えてくれたお姉さんだった。
僕はなんとかこの波に乗ろうと、声をあげた。
「火を通すと、保存性も良くなりますし、お米という美味しい主食を作って食べることもできます! どうか火を通す文化をこの村にも入れて下さい!」
「でも火は危ないんだ。扱えない」
あの男性がそう言ったが、僕は続ける。
「確かにそうかもしれませんが、使うことによって飛躍的に便利になります。それに、それこそ調理の家を村の外れに何ヶ所か作って、そこでしか調理できないようにすればいいと思います!」
「安全な調理の家というモノが作れるのならばいいけどなぁ」
安全な調理の家、僕が最初に住んでいた街はIHヒーターで安全な調理ができていたけども、ここでそれは難しそうだ。
でも、きっと師匠なら”安全な調理の家”が作れるはずだ。
「じゃあ作ったモノを見て下さい! それで決めて下さい!」
そう言うと、大勢の人たちも納得してくれた。
僕は早速、師匠にそのことを言いに走り出そうとしたその時、あのお姉さんが僕の袖を掴み、
「私も、お願いをしに行きたいです」
と言ったので、二人で師匠のもとへ行った。
その時に少し昨日のことを会話した。
「昨日、急にどこかへ行ってしまいましたが、どうしたんですかっ?」
「あっ、案内したからいいかなと思って帰ってしまいました……」
「それなら帰るって言ってほしかったですっ」
「すみません、人と会話することはあまり慣れていなくて……気を付けます」
そうか、慣れていなかっただけか。
何か僕が嫌なことしちゃったかなと不安になっていたけども、大丈夫だったようだ。
さっ、聞きたいことも聞けたし、足取りは軽く、師匠のもとへ。
・【聞き出そう】
・
僕は塩鮭をとりあえず長老の家に置くことにしている。
何故なら長老の家が一番大きいからだ。
「また持って来たので、置かせて下さい!」
そう言って家に入ると、長老の家には大勢の人たちがいて、その中央で長老が寝込んでいた。
「どうしたんですかっ?」
「この塩鮭というモノを持ってきているのは、君だなっ」
昨日の見物人の中にはいなかったと思われる男性が僕に話し掛けてきた。
「はい、そうですけども、何かあったんですか?」
「長老が塩鮭を食べたらお腹を壊してしまったらしいんだ、この塩鮭って本当に食べてもいいものなのか?」
「えっ、いや、食べられるモノですし、僕は食べても平気だった、ですけども……」
僕はしどろもどろになってしまった。
まさか塩鮭で食あたりを起こすなんて。
どういうことだろう、と思った時、ハッとした。
「まさか、生で食べた、なんて、無いですよね?」
そう言うと、その男性を含む大勢の人たちがざわざわし始めた。
そして。
「これは、そのまま食べられないのかい?」
とその男性が聞いてきたので、
「そうです。火を通さないとダメなんです。そのこと、長老さんには言ったはずです」
「そうなのですか! 長老!」
「火を通す、火を通す、でも食べられると思ったんじゃ、食べられるとのぅ」
完全に生で食べていた。
いやいやいや!
「長老さん! ダメですって! 鮭は元来生であまり食べるモノでもないらしいんですから!」
「美味しそうだったからいいと思ったんじゃ、いいと思ったんじゃ、美味しそうだったからぁ」
「いやでも実際、火を通さないと食べられないモノを作られても困るよ」
その男性が僕に対して、強めのトーンでそう言ってきた。
「でも、この世界の食べ物は、火を通すといろいろ美味しくなりますよ……」
一応言ってみたけども、もはやこの状況じゃ僕のほうが自信ナシ。
大勢の人たちが「火を通すなんて」と言いながら、ガヤガヤしている。
そんな時、一人の女性がこんなことを言った。
「でも、火を通す食べ物も食べてみたいです!」
その女性は、僕に昨日”調理の家”を教えてくれたお姉さんだった。
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「火を通すと、保存性も良くなりますし、お米という美味しい主食を作って食べることもできます! どうか火を通す文化をこの村にも入れて下さい!」
「でも火は危ないんだ。扱えない」
あの男性がそう言ったが、僕は続ける。
「確かにそうかもしれませんが、使うことによって飛躍的に便利になります。それに、それこそ調理の家を村の外れに何ヶ所か作って、そこでしか調理できないようにすればいいと思います!」
「安全な調理の家というモノが作れるのならばいいけどなぁ」
安全な調理の家、僕が最初に住んでいた街はIHヒーターで安全な調理ができていたけども、ここでそれは難しそうだ。
でも、きっと師匠なら”安全な調理の家”が作れるはずだ。
「じゃあ作ったモノを見て下さい! それで決めて下さい!」
そう言うと、大勢の人たちも納得してくれた。
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「私も、お願いをしに行きたいです」
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その時に少し昨日のことを会話した。
「昨日、急にどこかへ行ってしまいましたが、どうしたんですかっ?」
「あっ、案内したからいいかなと思って帰ってしまいました……」
「それなら帰るって言ってほしかったですっ」
「すみません、人と会話することはあまり慣れていなくて……気を付けます」
そうか、慣れていなかっただけか。
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