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最初の試験編

虹の煙が示すもの

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「角なしの星の形!!」

奏がそう言いながら放った星の造形をした灰色の弾丸は勢いよく恐竜の身体に当たるが
相変わらず表示されるのは「0ダメージ」という文字だけだった。

「この形でもだめなんて、それなら次はこれで!」

奏はそう言いながら一筆書きで書かれた星の形を撃ちこむがこれも成果は出ず。
(やっぱり星の形ばかり撃ってるんじゃ埒が明かないんじゃ)
奏がそう少しでも思うたびに腕の鎖は強く巻き付き始め、周囲にある大量のディスプレイには
「私たちは重大な何かを見落としている」と表示され続ける。
奏はチラっと視線を理夜に向ける。
かれこれ理夜は色んな造形をした灰色の弾丸を500発ぐらい恐竜に撃ちこんでいた。
恐竜にダメージを与える法則が仮に何らかの形に起因する場合、これほどまでに様々な形を撃ちこんでいるのに恐竜が何も反応しないのは異常事態である。

やはり奏と理夜は何かを見落としている。
奏にとっては悔しいが、今はあの煩わしいマインドディスプレイに書いてあることが正しいと受け入れざるを得なかった。

(でも一体何を見落としてるんだろう、残り時間はもう10分切ろうとしてるし……。何かこの状況を打開する方法を早く探さないと)

奏の脳内でそんな考えがよぎった瞬間、隣から聞こえていた銃声がピタッとやんだ。

「理夜さん、どうして手を止めて……」
「あなた、もしかしてやせ我慢してますわね!」

理夜は奏の言葉を遮り、目の前の恐竜に向かってそんなことを言い出した。

「えぇっと……つまりどういうことなの理夜さん」
「きっとことの顛末はこうですわ、あなたは奏さんに自分の弱点を見つけられたかわたくしの攻撃ですでにダメージを受けている……でもそれを見せたくないから0ダメージって表示してましたわね!!」

理夜はそう言って自信満々の顔でびしっと指を恐竜に突き立てている。

「いや、多分それはないんじゃない……」

奏はそこまで言いかけて理夜の異変に気付いた。
理夜の身体から虹色の煙が噴き出している。

(確か最初に会った時も理夜さんはこんな煙を出してた気がする……もしかして、これが理夜さんのマインド!?)

奏は理夜から出ている虹色の煙が自分に巻き付いている鎖やディスプレイと同じマインドであることに
瞬時に気づく。
「あなたの化けの皮を私がきれいさっぱりはがしてやりますわ!!」

理夜がそう言った瞬間、彼女を中心に爆発するように虹色の煙が噴出する。

「うわぁ?!」

奏はとっさにその煙が届かないところに移動する。

「さあ行きますわよ!!」

気が付けば理夜は銃を乱射していた。
さっきまでは正確に恐竜に灰色の弾丸を当てていた彼女が今は手あたり次第あらゆる方向に発砲している。
虹色の煙にすっかり包まれた理夜の姿は、自分の世界に見入ってしまい周りの状況が見えなくなってしまっている今の彼女の心理的状態をあらわしているようだった。


                   試験終了まで残り10分
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