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父とウイッグと私。

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それから私は、魔法を勉強し、メイドの目を盗み見てダンジョンへ向かったり……と、魔法の腕をどんどん上げて行った。

だいぶ面倒くさかったが、楽しいことはたくさんあったし、社畜魂の根気強さでこなしていた。

あと、公爵家の長女だから、と、教養というものを身につけさせられた。

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ー5年後ー

「お嬢様、この後はヴィクトリア公爵様がお話ししたい、と。」

「ええ、分かっているわ。」

まさかの12歳にして、まともに父と会う。

何か、話があるとかないとか……
いや、話はある。

「お召し物は、どれに致しましょうか?」

「いつものでお願い。」

「かしこまりました。」

準備が整い、とうとう父と初のご面対だ。
ここまで、娘を放置したんだ。
嫌なオジサンに違いないっ。

「どうぞ、こちらへ。」

仰々しく開けられた扉の先の書斎に、父はいた。

「ご機嫌よう、父上。」

「……ああ。」

「……どういったご用件でしょうか。」

他人行儀すぎか……?
いや、けど、他人と同じようなものだ。

こうなったのも、全部お前さんが放置したからだからなっ!

と、心で言い訳を叫び、再びオジサンに向き直る。

「ああ。……お前を茶会に出そうと思ってな。」

「……茶会…?」

「ああ。今までは、黒髪がバレんよう出さんできたが、流石に、公爵家の長女が12歳になっても茶会に出んのは不味くてな。」

なるほど……

「お言葉ですが、黒髪が露見してしまう方がリスクが高いのでは?」

「ああ。そうだ。」

ああ。が多いな。

「だからな、お前には、これをつけてもらう。」

と、いそいそと父が取り出したのはヅラだった。

たぶん、このオジサン、ヅラを私がつけるの、ワクワクしてるな……?

「えっと…ウイッグ…ですか…?」

「ああ。そうだ。」




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