生贄姫巫女と土地神

えりー

文字の大きさ
3 / 12

しおりを挟む
(戯れに拾ったわけじゃない)
自分と似ていて放っておけなかった。
ただそれだけだった。
だが、紬は美濃に惹かれている自分に戸惑っていた。
生気を分けてもらうのと家事をしてもらう代わりに金を払う。
初めはそれだけの関係で良いと思った。
しかし、紬は美濃のことを知れば知るほど放っておけなくなってきた。
特別な感情が生まれているし、彼女は”孤独”の意味さえ理解していなかった。
そんな彼女に同情したのかもしれない。
もっとたくさんの事を彼女に教えてあげたいという思いが強くなった。

「美濃!」
「紬?どうしたんですか?」
「いいか?絶対にこの小屋から出るんじゃないぞ?」
真剣に言われ美濃は頷いた。
紬はふわりと宙に浮かびどこかへ行こうとしている。
「どこかへ行かれるんですか?」
「俺は何も食わなくても平気だがお前には食料が必要だろう?」
どうやら紬は食糧を調達しに行ってくれるようだ。
そう言うともの凄い速さで飛んで行ってしまった。
1人残された美濃は呆然とその姿を見送った。
「私の為に・・・何だか申し訳ないな・・・」
(本当にこれで良かったのかな)
でも他に方法は無かった・・・。
(こんなに紬に迷惑がかかるなんて思っていなかった)
「考えても仕方ない!!よし!洗濯しよう!!」
幸い今日は天気がいい。
美濃は幼い頃母に習った方法で洗濯を始めた。
もう母の記憶は薄れていて顔も覚えていない。
胸のあたりが痛んだ。
「?」
だが、美濃はその痛みが意味するものが何なのかもわからない。
母は美濃を引き渡すのを拒み、村から追放されたと聞いた。
生きていればいずれ会えるのだろうか・・・。
そんな考えが美濃の中に生まれたが村を追放された者の末路は死だ。
何処へ行っても厄介者扱いを受ける。
きっと生きてはいないだろう。
そう思うと涙が込み上げてきた。
もう何も考えたくないと思い頭を左右に振り考えるのをやめた。
日が高くなった頃紬が大きな荷物を持って戻ってきた。
「美濃、今帰ったぞ」
「お帰りなさい、紬」
紬は上機嫌で持ち帰った荷物を美濃に見せた。
剣や宝石、米、野菜や干し肉が荷物に入っていた。
「これで当分は大丈夫だろう?」
「あまりの量に驚いています・・・」
素直にそう言うと満足そうな表情を紬は浮かべて笑った。
その笑みは本当に嬉しそうなものだった。
「神様なのに剣を使うのですか?」
「これは護身用だ。人間がもし来た時に使う」
(そうか・・・追手が来るかもしれない・・・)
美濃の表情は固いものになった。
すると紬は美濃を抱きしめた。
「美濃の事は俺が絶対守るから安心していろ」
「はい」
その言葉を聞き美濃は安心した。
「あの・・・紬」
「何だ?」
「いつまでこうしているんですか?」
紬はずっと美濃を抱きしめたままだった。
「俺の気が済むまでだ。嫌なのか?」
「・・・嫌じゃないです。何だか安心します」
「そうか」
(美濃は人の温もりに飢えているのだろうか?男に抱きしめられていたら普通は危機感を抱くだろう)
紬は美濃を無意識に憐れんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

義兄様と庭の秘密

結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...