いつの間にか魔王の花嫁にされてしまいました

えりー

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まゆとジオン

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ジオンは見かけは立派な青年だが中身は幼いとまゆは感じていた。
すぐ感情的になり好戦的だ。
分かりやすくて良いのだがそれが自分に向けられたらたまったものじゃない。

まゆの家は冷えきっていた。
とても温かな家庭ではなかった。
仕事で家に帰ってこない父。
いつもイライラとしている母。
「まゆ、零さず食べて頂戴」
まゆの座っている前にドンと鈍く響くようにシチューが置かれた。
「はい、お母さん」
まゆは自分はいらない子供なのではないかと薄々感じていた。
母とも父とも遊んだ記憶がない。
ジオンは姿を消してまゆの隣の椅子に腰かけている。
「これがお前の母親か?」
まゆは母に気付かれない様に頷いた。
「冷たい女だな」
第三者から見てもそう見えるらしい。
シチューは正直美味しくも不味くもない。
ただ生きるために体内に取り込むように食べる。
「美味いのかそれ」
そういいジオンは台所に行き味見した。
「・・・そんなに美味いもんじゃねぇな」
その素直な感想に心がじんわり熱くなった。
何故そんな感情になったのか分からなかったまゆは戸惑った。
自分にない素直さを持ち合わせているジオンが羨ましかった。
(私もあんな風に素直だったらもっと両親にかまってもらえたのかな)
「ああ、もう!早く食べて!」
「ごめんなさい」
また母のヒステリーが始まった。
「本当にどうしてそんなに食べるのが遅いのかしら」
「・・・」
黙って急いでまゆはシチューを食べ終えた。
「本当にとろい子」
「ごめんなさい」
ジオンは苛立ち始めていた。
零さず慎重に食べさせていたことを棚に上げて、今度は食べるのが遅いとまゆを責め立てたからだ。
「お前の母親じゃなかったら殺していたところだ」
ジオンが物騒な事を口にした。
階段を上がりながら無言で戸を閉めた。
「・・・お前いつもああなのか?」
まゆはその質問の意味が分からなかった。
「ああとは?」
「母親の言いなりなのか?反発しないのか?」
まゆは顔を伏せた。
「父から母を怒らせるなと言われているから・・・」
「よく我慢できるな」
まゆは無表情のまま言った。
「もう慣れてるから」
(そう、慣れていくしかなかった。彼女に母を求めてはいけない)
そんなまゆをジオンは無意識に抱きしめていた。
「お前の願いは必ず叶えてやる」
まゆは抱きしめられた記憶がなかったのでこの行為がこんなにも温かなものだと知らなかった。
ジオンの温かな腕の中で涙ぐみながら頷いた。
しかし自分の望みがいまだに分からない。
早くジオンを魔界に帰さなければならない。
そのためには早く望みを叶えてもらう必要があった。
「まゆ!お風呂に入りなさい!!」
一階から母が叫んでいる。
「ジオン、お風呂行ってくるね」
「ああ。さすがにそこまで付いて行かない」
ジオンは一応空気が読めるらしい。
魔族は食事をとらなくても生きて行けるそうだ。
お風呂も魔術で身を清めることが出来るそうだ。
唯一の問題は睡眠だけは必要らしい。
しかし、ベッドは1つしかない。
(もしかして一緒に眠るのかな・・・)
そんな事を考えながら素早くお風呂から上がった。
ジオンが既にベッドで待っていた。
「お、早かったな」
「まさか一緒に寝る気なの?」
髪の毛を拭きながらまゆはジオンに訊ねた。
するとジオンは言った。
「王である俺に床で寝ろと?」
「・・・前言撤回」
「うん?何かまずいのか?」
(歳は離れているとはいえ男女が同じ布団で寝ることはまずいと思う)
「早く布団に入れ、体が冷える」
「きゃ・・・」
そう言いまゆの手を引き、自分の方に抱き寄せた。
まゆは初めは抵抗したがビクともしないので途中で別々に眠ることを諦めた。
「ジオンはこうやって眠るの嫌じゃないの?」
「何故?」
(何故って・・・)
ジオンは更に力強くまゆを抱きしめた。
暫くするとジオンから寝息が聞こえてきた。
その寝息を聞いているとまゆも眠くなってきた。
ジオンは後ろからまゆを抱きしめている。
ジオンの方に向き直りまゆは眠っているジオンの髪に触れ、頬に触れた。
(この人は温もりを教えてくれた・・・)
今まで感じた事のない感情が芽生えようとしていた。
胸がじんわり温かくなる。
まゆは勇気を出してジオンの背に手を回してみた。
「う・・・うん・・・」
(あ、起こしちゃう!!)
そう思い急いで背に回した手を引っ込めた。
まゆはジオンの体温に体を預け眠ることにした。
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