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『祭』当日

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私は深呼吸をしてから話した。
みんなからの視線が痛い。私は話すことによってどんな野次が飛んでくるかわからない。いいことを言うものもいれば悪いことを言うものもいる。

私は勇気を振り絞って喋った。

「皆様、今日は開催していただきありがとうございます。今回この『祭』を開こうと思った経緯は私の昔にした行いを償うためです。昔にしたことを私は覚えていません。私は最近記憶喪失にあい昔のことは覚えていません。そこは本当に申し訳ございません。」

私は一区切り言い終わると、会場はざわついた。そして、私は国民に対して頭を下げた。第一王女が頭を下げるなど普通はないだろうが、私はする。なんて言われても。私は一息吸ってから再び言った。

「ですが、皆さんの反応を見る限り私の昔したことはとても悪いことをしたことだけはわかります。そこで、今日は皆さんとの信頼度を回復したいがためにこの『祭』を開きました。私も楽しみます。ですが、一番に楽しんで欲しいのは国民の皆様です。私は、一人一人に挨拶などはできませんが……私は一人一人に寄り添いたいと思っています。私の話は以上です」

私の話が終わり、椅子に戻る。司会者が進行をしてくれない。私は少し戸惑い隠せずにいると、隣にいるお父さんが言った。

「アリフィア……お前いいのか?あんなこと言って」
「いいのですよ……私はありのままのことを言っただけです」

「ならいいが……みんな号泣してるぞ?」
「え?」

私は改めて、周りを見渡す。すると、みんな涙を流していた。私はどうしていいかわからずにいると、会場にいた誰かが拍手を始めた。

その後に続けて拍手は続き全体が拍手を始めた。
ここで私は思った。

ー許されたのか?ーと。

そんな甘ったるい考えをしてはダメだ!と心の中で繰り返し繰り返しているとやっと司会者の人がぐしゃぐしゃな声で言った。

「……ありがとうございました……では……祭スタートです……アリフィア様……スタートの合図を……」

突然振られたアドリブに困惑しながらも私はお父さんに背中を押されてマイクを持って言った。

「『祭』スタート!!!」

「「「「「うぉー!!!!!!」」」」」」

会場にいた人たちの大体の人が私の後に続けて盛り上げてくれた。私は少しほっとした。すると、お父さんは言った。

「行ってこい」
「え?」

私は素っ頓狂な声を出しながらお父さんに背中を押されて台座から降りた。
台座から降りて真っ先に来てのは前の女の子だった。

「アリフィア様~!」

可愛らしい声で近づいてくる。私は笑顔で手を振りながら言った。
「あら、お久しぶりね」

「お久しぶりです!」

可愛らしい女の子は言った。
「そうだ!私の名前教えるね!私の名前はフラン!」
「フランって言うのね……可愛らしい」

私がつい本音を言葉にこぼしていると、遠くの方でフランの名前を呼ぶ者がいた。
「フラン?読んでる人いるよ?」

すると、フランは元気いっぱいに言った。
「お母さん!」

お母さんらしき人は私の目の前まできて言った。

「フラン!ダメでしょ!アリフィア様に馴れ馴れしくしたら……」

そんなことを言う母親に私は言った。

「フランちゃんのお母さんですか?」
「えぇ……申し訳ございません。不快に感じましたか?」

「いいえ、私は逆に可愛らしいと思いました。こんな子を産んでよかったですね」

「そうですね……」

母親の返答は少し遅かった。なんだか迷いのある言い方で私は少し気になったが、フランが私の服を引っ張って言った。

「ねぇ、アリフィア様!一緒に回ろう?」

「コラ!フランそんなことを許されないわよ」

少し厳しく言うフランの母親に私は優しく言った。
「私はかまいませんよ。フランちゃんがいると楽しいですから」

「ですか……」

謙虚気味に言うお母さんを無視してフランは私の腕を引っ張り近くに屋台に行こうとしている。
私は去り際母親に言った。

「フランちゃんは私が守りますから……!!」

フランの母親の目を見ると、そこには楽しそうではなかった。逆に苦しそうであった。
私は少し気になり、後で調査をしてもらおうと思ったのだった。


私はフランに連れらてていくがまま色々なところを回った。
その際に色々な人に挨拶もした。みんな、私の最初の言葉を聞いて私に対しての評価が変わったらしい。

私の不安は自身に変わった。
そして、フランとの楽しい時間が終わり台座の上に戻るとお父さんは下の方で楽しそうに談笑していた。

私はそんな姿を見て微笑んだ。
そして空を見上げると満天の星空。

いつも間にか昼頃から始めた『祭』は夕方になっていた。
こんなに楽しいことは人生でなかったなと少しばかり思ってしまった。

すると、どこから知らない声が聞こえてくる。

ーアリフィア……ー

ーアリフィア……お前を殺す……ー

どこかからか殺意を送られているみたいであった。私は少し恐怖を抱きながらも周りを見渡した。
だが、周りに誰もそんな人はいなかった。

すると、私の肩ポンと叩きお父さんは言った。

「帰ろう」

お父さんの顔はどこか真剣な目つきだった。
さっきの声がお父さんにも聞こえたのだろうか……と不思議に思いながらも馬車に乗る。

馬車に乗ると、みんながお見送りをしてくれ私はみんなに笑顔で手を振った。
そして、馬車の中は沈黙に包まれた。

お父さんは……俯きながら言った。

「まずい……かもな」と。
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