【奨励賞】こわがりちゃんとサイキョーくん!【受賞】

またり鈴春

文字の大きさ
10 / 40
こわがり花りんと魔王サマ

10

しおりを挟む

「いつも、一人なんだし。今さら慣れっこだよ……」

 くちびるをキュッと噛み、茶色のモヤを見た。
 だけど――
 さっきまでモヤだった妖怪は、今や、少しづつ形ができてる。
 あれは……動物?

「短い耳に、尖った鼻。まるっこいフォルム……。
 そうか、タヌキだ!」

 すると茶色の妖怪は眩しく光り、モヤが晴れる。
 姿を見せたのは、やっぱりタヌキだった。
 だけど、目は赤いまま。
 普通のタヌキじゃないと、一目みただけでわかる。

『ニンゲン……、ゆるさない』
「それ……さっきも言ってたよね。
 ねぇ、聞いてもイイかな。
 あなたは、どうして妖怪になっちゃったの?」

 するとタヌキは、赤い目でジッとわたしを見る。
 この妖怪は、会話が出来るのかな?
 だったら良いんだけど……。

「わたし、小羽花りん。あなたの敵じゃないよ。
 わたしは、あなたを助けたいの!」
『! 花りん……?』

 タヌキは、わたしの名前を聞いて、ピタリと止まった。
 何だろう……?
 タヌキくんが次に何をするか分からなくて、思わず体に力が入る。
 だけど――

『う……っ、うわ~ん!』

 なんとタヌキくん。
 その場に座って、人間の子供のように、エンエンと泣き始めた。

『うわ~ん! うわ~ん!』

 目からポロポロ流れる涙が、すごく悲しそう。
 ナデナデしたら、怒るかな?

「えぇい、イチかバチかだ!」

 タヌキくんに近寄り、ヨシヨシと頭をなでる。

『花りん……?』
「泣き終わるまで、ここにいるから大丈夫。安心して。
 君は一人じゃないよ」

 ニカッと笑うと、タヌキくんの目の色が変わり始めた。
 赤色から、だんだんと――まぶしいほどの金色へ。

『ぼくは昔、この学校の子供たちに拾われたんだ』
「まちがって、山から下りてきちゃったの?」

『うん。ママとはぐれた。
 道に迷ってウロウロしていたら、学校に入っちゃったんだ。そして、子供たちに見つかった』
「……いじめられたの?」

 おそるおそる聞くと、タヌキくんは首をふった。

『ううん。とってもかわいがってくれたよ。
 ご飯も水も用意してくれて、休み時間になったら、遊びに来てくれた。
 でも……』

 すると。タヌキくんの金色の目が、にごってくる。
 キレイな金色は、影を薄めた。

『でも、子供たちは知らなかったんだ。ぼくがタヌキだってことを。
 タヌキの赤ちゃんは、よく子犬と間違われるから……』
「そっか。みんなはタヌキくんを、子犬だと思ったんだね」

 タヌキくんは、コクンと頷く。

『ぼくがタヌキだと分かった時から……ぼくは、いらない子になった。
 子供たちはご飯も水も、くれなくなった。
 それに……ぼくを、この学校から追い出したんだ』

 ――タヌキめ、あっちへ行け!
 ――きったねーな、タヌキ!
 ――よくも俺らをダマしたな!

『勝手にかんちがいしたのは、子供たちなのに。
 ニンゲンの方なのに……!』
「あ!」

 タヌキくんの目が、金色から赤色に変わって来た。
 いくら横で「タヌキくん、しっかり!」と言っても、私の声は、タヌキくんに聞こえないみたい。

『ニンゲン、許さない……!』
「タヌキくん!」

 わたしが伸ばした手もむなしく、タヌキくんにバシッと叩かれてしまう。
 すると、さっき校舎についていたようなひっかき傷が、わたしの腕に浮き上がる。
 腕から、血がジワジワにじんでる。
 少しだけ痛くて、思わず顔をしかめた。

「タヌキくん……っ」

 仲直り出来ると思ったけど、ダメなのかな?
 さっきまで、あんなに会話が出来ていたのに!

「目を覚まして、タヌキくん!」
『ギャオ―!!』

 ブンッ

 タヌキくんが、わたしに向かって鋭い爪を振り上げた。
 当たっちゃう……!!
 体を小さくして身構えた、その時だった。

「だから言ったろ、あほらしって――

 結界!!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)
児童書・童話
○現代を舞台にした、ふしぎ満載のドラゴン?ファンタジー!○ *本作は現在、リライトプロジェクトが進行中です* 最初の「フラップ編」から「フロン編」までの内容を見直し、 新たなシーンをくわえつつ再構成した部分もございます。 また、文体の変更やルビの追加、および文章の添削を行い、 より読みやすく、よりクオリティーの高い内容に仕上げることを目指しております! 【竜のような、犬のような……誰も知らないフシギ生物。それがドラギィ! 人間界に住む少年レンは、ある日、空から落ちてきたドラギィの「フラップ」と出会った――。 フラップの望みは、ドラギィとしての修行を果たし、いつの日か空島『スカイランド』へ帰ること。 同じく空島からやってきた、天真らんまんなドラギィのフリーナと、 知的だけどとても泣き虫なドラギィのフレディ! 三匹は大親友! 新しい仲間も続々登場! 白ネズミの天才博士しろさん、かわいいものが大好きな本田ユカに加えて、 レンの親友の市原ジュンに浜田タク、なんだか嫌味なライバル的存在の小野寺ヨシ。 さらに、ドラギィたちをつけねらう怪しげな黒猫のルドルフと、 なぜかドラギィを知っている謎めいたイケメン小説家、古杉志朗(こすぎしろう)先生―― さて、レンとドラギィたちの不思議な暮らしは、これからどうなっていくのか!?】 (毎週水・土の更新を予定しております)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

処理中です...