【奨励賞】こわがりちゃんとサイキョーくん!【受賞】

またり鈴春

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優しいカラスとクラスメイト

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「あー! 何してくれてんだ!」
「こっちのセリフだよ!
 いったい、何回”やめて”って言ったと思ってるの!?」
「う……っ」

 ガンッと強く言うと、千景くんは気まずそうに黙った。
 よし……、勝ったぞ。
 妖怪より妖怪っぽい人に!
 さあ、千景くんが黙った、今がチャンス!
 わたしは、横たわるカラスに、ゆっくり近寄った。
 羽の先が、少しだけこげてる。もう飛べないのかな……。

「さっきはゴメンね。お話しできる?
 良ければ、君のことを聞きたいな」

 するとカラスは、一度だけムクリと頭をあげた。
 かと思えば、また地面に横たわる。

「しんどいんだね。いいよ、このままで」
『……すみません。助けていただき、ありがとうございます』

「ううん、君からは悪い“気”を感じないから……。
 ねぇ、聞いていい? どうして妖怪になったの?」
『……あれは、忘れもしない。つい最近の事です』

 カラスは、穏やかな声で話し始めた。
 さすがに「カラスの話を中断する」つもりはないのか、千景くんは、耳だけこちらに寄せている。

『私は致命的な怪我をして、道路の橋に、こんな風に横たわっていました。
 そこへ小学生たちがやって来ました。
 遠目から見ると、私は“かわいそうな鳥”に見えたのでしょうが、近くで見ると、ただのカラス』

 ――なんだぁ、カラスかぁ
 ――カラスって、ゴミを食べるから汚いんだって
 ――じゃあ、ほっとこーよ
 ――さんせー。いこいこ

『だけど、そこの女の子だけは違いました』

 カラスがチラリと、休田静ちゃんを見る。

『小学生たちの中に、そこの女の子もいた。
 皆が私を放っていく中――
 その子だけは、一人で、私のところに戻って来てくれたのです。
 そして雨に打たれる私の体に、ハンカチをかけてくれた』

 ――何もしてあげられなくて、ごめんなさい

『嬉しかった……。
 こんな私に優しくしてくれる人間がいる――その事が、どうしても嬉しかったのです』
「カラスさん……。人間に、怒ってないの?」
『怒っていません。
 あの子の優しさに触れたおかげで、私は悔いなく死ぬ事が出来た』

 だから――と、カラスさんはバサリと羽ばたく。
 羽が焦げていても、飛ぶことは出来るみたい。
 キレイな飛行で、まだ気絶している休田静ちゃんの隣へ降り立った。

『だから私は、妖怪になった。
 どうしても、この子にお礼が言いたくて。
 この子にお礼を言うまでは、この世から消えてなるものかと。
 そんな事を思っていたら、妖怪になっていました。
 だけど、私の願いは叶った』
「え?」
『さっきは、大きな声を出してすみません。
 この子に、お礼を言ったのです』

 ――カあぁぁぁぁぁ!!

 あぁ、さっきの!
 そっか、アレはお礼だったんだ。
 ちゃんと言えたんだね、よかった。
 すると、わたしの後ろから、千景くんがカラスさんに尋ねる。

「で、これから、お前はどうしたいんだ。カラス。
 お礼をしたって事は、祓っていいんだよな?
 どんな理由があるにしろ、妖怪は人間に害なす存在だ。
 見過ごすわけにはいかない」
「ま、待ってよ! 千景くん!」

 だけど私を止めたのは――カラスさん、本人だった。

『いいんです。その男の子の言う通りだ。
 妖怪は、この世に居てはならない。
 どんな理由であろうともね。
 それに――
 その男の子は、妖怪に呪いをかけられて、苦労しているみたいだ。
 私を嫌うのは、無理もない話です』
「え……?」

 千景くんを見ると、千景くんは奥歯をギリッと噛んだ。
 悔しい、憎いって……顔に書いてある。
 そうか、千景くんからしたら――
 自分に呪いをかけた妖怪という存在を全て憎むのは、当たり前なんだ。
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