【奨励賞】こわがりちゃんとサイキョーくん!【受賞】

またり鈴春

文字の大きさ
29 / 40
謎のイケメンとバナナ

しおりを挟む

「バナナ、うめぇ……!」
「……えっと。そろそろ、何があったか聞いてもいいかな?」

 わたしが家から持って来た生ぬるいバナナを、目の前で、一心不乱に食べている黒猫――もとい、ネコ化した野良千景くん。

「まさか昨日から、ずっとネコのまま?」
「そーだよ。戻らねんだよ、人間に」
「やっぱり……!」

 昨日のイヤな予想、的中!
 すると間の悪いことに、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。
 どうやら、一時間目が始まるみたい。

「行けよ、俺のことはイイから」
「千景くん……」

 ネコの姿のまま、強がりを言う千景くん。
 プイと、そっぽを向いた後ろ姿……。
 そんなの、放っておけるわけないよ。

「行かないよ。千景くんを、このまま放っておけないもん!
 どうやったら人間に戻るか、色々試してみよう!」
「例えば?」
「え? えっと……」

 期待にかがやく、千景くんの目。
 だけど、次のわたしの一言で、

「例えば、バナナを食べる……とか?」
「……」

 目のかがやきは瞬時に消え、代わりに浮かぶ「諦め」の文字。
 千景くんはため息をついた後。
 残ったバナナを、ゆっくりと食べ始めた。

 ◇

 ネコ千景くんが、バナナ完食後。
 わたしと千景くんは、校舎裏で作戦会議をしていた。

「いつも、どうやったら人間に戻るの?」
「わからねぇ。体がムズムズしてきたら、人間に戻る合図だ。
 だから、そういう時は、いつも何かに隠れてコッソリ人間に戻ってる」
「そ、そうなんだ……」


 千景くん、大変な環境下にいるんだね……。
 妖怪の呪いにかかる――
 それがどういう事なのか、改めて知る。

「千景くんが祓い屋だから、狙われたのかなぁ?」
「は?」

「妖怪は、祓い屋と一般人の見分けがつくんだね。
 それで、祓い屋である千景くんを狙って、呪いを、」
「なぁ……」
「ん?」

 ネコ千景くんが、自分の肉球を、ポムポムと私の膝に押し当てる。
 や、やわらかい……!
 突然の癒しに、頭がぽややんとなる。
 そうか、これが「脳が溶ける」って事なんだね!
 だけど、次に聞こえたのは――

「俺、祓い屋じゃねーけど?」
「へ?」

 溶けた脳が、すごい勢いで、元の形に固まっていく。
 えっと……今、なんて言った?

「千景くんは、祓い屋なんだよね?」
「だから、ちげーって。
 俺は、ただの、一般人」

 まるで自慢するように、二本足で立ち上がるネコ千景くん。
 ネコが二本足で立ってるのも衝撃だけど……。
 千景くんが祓い屋じゃない方が、何倍も衝撃的だよ!

「えぇ!?
 千景くんが祓い屋じゃない!?
 なんで今まで言ってくれなかったのー!?」
「知らねーよ! お前が勝手に勘違いしたんだろーが!」
「そうなんだけど、そうじゃなくて!」

 でも、千景くんが祓い屋じゃないなら、アレはどう説明するの!?

「あの“滅”は?“結界”は!?
 千景くんが祓い屋だから、出来るんじゃないの!?」

 だけど千景くんは、首をフルフルと振った。
 オーマイガー。どうやら違うらしい。

「呪いを受けた日から、呪ったヤツに仕返しをしようと思って、死ぬ気で練習した。
 自主勉だ。じーしゅーべーん」
「つ、つまりは呪詛じゅそ返し……!」

 呪った相手を呪い返してやる!っていうアレだ!
 一般人が「滅」や「結界」が使えるようになるって、すごすぎない!?

「なんたるド根性……!」
「ふん。全然、嬉しくねーな」

 それに――と、千景くん。

「オレは元々“視える”タイプだからな。そういう奴は、祓う素質があるんだろ。
 だからお前も――
 視えるんなら、練習次第で技が身につくと思うぞ?」
「祓う技……。わたしに必要かなぁ?」

「妖怪の気持ちに寄り添う“浄化”だけじゃ、限界がくるぜ。
 前も言ったろ――妖怪は、全部が良い奴じゃねぇ。
 力づくで抑え込まねーといけない時があるんだ」
「う……」

 実際に呪いをかけられた人の言葉は、重みがある……。
 思えばわたし、今まで「運良く」無事だっただけだもんね……。
 千景くんのように、技を覚えないといけないのかも。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)
児童書・童話
○現代を舞台にした、ふしぎ満載のドラゴン?ファンタジー!○ *本作は現在、リライトプロジェクトが進行中です* 最初の「フラップ編」から「フロン編」までの内容を見直し、 新たなシーンをくわえつつ再構成した部分もございます。 また、文体の変更やルビの追加、および文章の添削を行い、 より読みやすく、よりクオリティーの高い内容に仕上げることを目指しております! 【竜のような、犬のような……誰も知らないフシギ生物。それがドラギィ! 人間界に住む少年レンは、ある日、空から落ちてきたドラギィの「フラップ」と出会った――。 フラップの望みは、ドラギィとしての修行を果たし、いつの日か空島『スカイランド』へ帰ること。 同じく空島からやってきた、天真らんまんなドラギィのフリーナと、 知的だけどとても泣き虫なドラギィのフレディ! 三匹は大親友! 新しい仲間も続々登場! 白ネズミの天才博士しろさん、かわいいものが大好きな本田ユカに加えて、 レンの親友の市原ジュンに浜田タク、なんだか嫌味なライバル的存在の小野寺ヨシ。 さらに、ドラギィたちをつけねらう怪しげな黒猫のルドルフと、 なぜかドラギィを知っている謎めいたイケメン小説家、古杉志朗(こすぎしろう)先生―― さて、レンとドラギィたちの不思議な暮らしは、これからどうなっていくのか!?】 (毎週水・土の更新を予定しております)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

勇者と聖女の息子 アレン ランダムスキルを手に入れて愉快に冒険します!

月神世一
児童書・童話
伝説のS級冒険者である父と、聖女と謳われた母。 英雄の血を引く少年アレンは、誰もがその輝かしい未来を期待するサラブレッドだった。 しかし、13歳の彼が神から授かったユニークスキルは――【ランダムボックス】。 期待に胸を膨らませ、初めてスキルを発動した彼の手の中に現れたのは…プラスチック製のアヒルの玩具? くしゃくしゃの新聞紙? そして、切れたボタン電池…!? 「なんだこのスキルは…!?」 周りからは落胆と失笑、自身は絶望の淵に。 一見、ただのガラクタしか出さないハズレスキル。だが、そのガラクタに刻まれた「MADE IN CHINA」の文字に、英雄である父だけが気づき、一人冷や汗を流していた…。 最弱スキルと最強の血筋を持つ少年の、運命が揺らぐ波乱の冒険が、今、始まる!

処理中です...