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プロローグ ドジな私
しおりを挟む笹岡莉緒は、一言で言えば落ちこぼれだった。
小さい頃から人見知りで怖がりな性格だった。近所の年の近い子供達にさえ上手く話しかけられず、話しかけてもらっても「あ、あの、その…」と吃ってしまい上手く言葉が出て来ない。
直ぐに返事をすることも出来ず何時も怯える子供。
そんな子供に、周りの子供がとる反応はーー。
『りおちゃんといてもつまんない』
これ一択である。
人見知りの激しい自身の娘に、両親は言った。
『大丈夫。もう少し大きくなって沢山の人と関わる様になったら、莉緒も普通に喋れる様になるよ』
両親は、小学校に入学すれば沢山の年の近い子達と出会うから娘の人見知りも完全にでは無いがある程度良くなるだろうと思っていた。
ーーしかし、それは間違いだと直ぐに気が付いた。
莉緒は、毎日学校に向かい同じ時間帯に帰って来た。最初は気にしなかった両親達だが、小学三年の時に漸く一つの疑問を抱く。
「子供とは、放課後友達と遊ぶものでは?」と。
何時も同じ様な時間帯に帰って来る娘。
よくよく考えれば、休日も家から殆ど出ない。
ーーいや、殆どでは無い全くだ。
これは少しおかしいぞ?と思った両親は娘に言った。
「偶にはお友達と遊んで帰って来てもいいんだよ」と。
莉緒は言った。
『お、お友達って、どうやって作るの?』ーーと。
両親は、娘のその言葉に衝撃を受けた。
娘の人見知りは少しも良くなっていなかった。その為、学校で虐められてはいないが1人も友達が居なかったのだ。
友達を作る為に必要な事は、コミュニケーションである。しかし、人見知りが激しい莉緒は友達作りに必須であるコミュニケーションが出来なかった。
両親は、娘の人見知りを少しでも良くして友達を作れる様にしようと莉緒を対話教室に通わせた。その対話教室の先生は、穏やかな雰囲気の優しいお爺さんであった。お年寄りの為にゆっくりと話すその先生のお陰で、莉緒は顔見知りとなら普通とは言わないが何とか話せる様になった。
そうして、莉緒は社会人になる迄には数人の友人が出来た。その事に一番喜んだのは両親達であった。社会人になっても人見知りの激しい莉緒は、地元の小さな図書館の司書に就職した。莉緒を合わせて七人しかいない殆ど両親と同年代ばかりの職場だったが、人見知りの莉緒にとってはまさに天国の様な職場であった。
そうして25歳の誕生日を迎えて数ヶ月経った頃だった。
「う~、寒いなぁ」
近頃、本格的な冬の寒さが身に染みる様になって来た頃。いつもの様に、莉緒は職場へ向かうべく歩いていた。首に巻いた白いマフラーに冷えた鼻先を埋めながら早足で歩き慣れた道を行く。
(あ、妊婦さんだ)
前方に、暖かそうなコートを着込んだお腹の大きな女性が歩いていたら。莉緒は、少し緊張しながらも妊婦の横を通り過ぎて青信号の歩道を渡る。
そうして、何気無く背後を振り向いた時だった。
ゆっくりと歩道を歩く妊婦の女性に向かって、信号無視をした車が向かって来るのが見えたのは。
「あっ、危ない…!」
人生で一番大きな声を出したんじゃ無いかと思うほどに大きな声で叫んだ莉緒は、女性の元に走り彼女を咄嗟に突き飛ばす。
「きゃっ!?」
女性は、上手い具合に尻餅をつく様な感じで倒れる。それを見届けた瞬間、莉緒の身体に激しい衝撃が走った。
(あ、死ぬ…)
そう思った瞬間、莉緒の意識は途切れたのだった。
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