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第1章

スカウトです①

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此処は、バルクから少し離れた場所にある小さな丘の上。何時も、マリオンが一人になりたい時に居る場所だ。現在、マリオンは王太子殿下であるアレックスと共に隣り合って座っていた。

暫く無言が続いていた。
最初に口を開いたのは、アレックスだった。

「ーーさて。マリオン、漸く二人っきりになれたな」

その言葉に、マリオンはビクッと肩を揺らす。真っ直ぐ前を見ながら、姿勢を正す。

「そそそ、そうですね」
「では、先程の『呪い』の話の続きを話してもらおう」
「な、何のことでーー」
「惚けたり誤魔化したりした瞬間に、お前を王太子暗殺容疑で捕らえる」
「わかりました!全てお話しします!」

何とか惚けて知らないフリをしようとした瞬間、アレックスが透かさず脅しをかけて来る。その為、マリオンは真実を話すしかなくなった。

「信じてもらえないかも知れませんが、実はーー」

そう前置きをしてからマリオンは話し出す。

昔から、他の人には"見えないモノ"が見える事。今回、来客としてやって来たアレックスの側に黒いモヤの様なモノが纏わり付いていた事。それが、力ある魔女による呪いだと気が付いた事を話した。

(ガンダル神が黒いモヤの呪いを一時的に断ち切った事、呪いの事を教えてくれた事は伏せておこう…)

「ーー成る程」

マリオンの話を聞き終えたアレックスは、顎に手を当てジッと何かを考え始める。

「今、その黒いモヤはどうなっているんだ?」
「今は、何処にも見えません」
「見えない?」
「はい。孤児院の前で、いきなり弾けて消えました」
「そうか。ーーまさか、ガス殿の力か?」

(院長先生……?)

アレックスの言葉に、マリオンはある事を思い出した。

(そういえば、孤児院には院長先生の結界が張ってあるんだよな…?)

孤児院には、ガスの張った結界があるとガンダルは言っていた。それなのに、何故あの黒いモヤは孤児院の敷地内に入って来れたのだろう…?

「マリ………、……で……か?」

(ガンダルは、院長先生より力が強いと結界は何の意味もないって言ってたよな…)

そうすると、アレックスにあの黒いモヤの呪いをかけた魔女は、ガスより強い力を持っていると言う事になる。

(院長先生が、どれくらいの強さか分からないから判断し難いな…)

「………い。お…」

(でも、今までガンダル以外のモノ達は入ってきた事は無かった。それなら、院長先生って結構強いんじゃ…)

「ーーおい、マリオン!!」
「ひゃいっ!?」

その時、いきなり耳元で大声で自身の名を呼ばれる。驚いたマリオンの口からは、妙な返事が出る。

「ーー全く。王太子である私を無視した人間など、お前が初めてだ」

そう言って、アレックスは呆れた様にマリオンを見る。どうやら、考え事に夢中になっている間に何度も呼ばれていた様だ。

「す、すみません!考え事をしていて…!」
「ああ、知ってるさ。ずっと横から見ていたからな」

慌ててマリオンは謝るが、どうやらそこまで怒ってはいないらしい。

「ーーで?先程の私の話を聞いていたか?」
「………いえ」
「だろうな。では、もう一度言う。ーーマリオン、私の元で働かないか?」
「へっ…?」

その言葉に、本日何度目かの間抜けな声が出た。
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