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第1章
No.10
しおりを挟むーーあぁ、もう少し。
あれから丸一日、空を飛び続けている。
己の翼を動かすたびに、少しずつ番に近付いているのが分かる。
ーーもっと、もっとはやく
これ以上無いくらいのスピードで飛んでいるが、気が急いで遅く感じる。
空が明るくなり、太陽が昇り始める。
ーーもうすぐだ。もうすぐ会える
赤い竜は、陽の光を反射しキラキラと輝きながら空を飛んで行く。
***
「…んっ」
ポツリと頬に冷たい感触がして目を覚ます。
どうやら、木の葉に付いた朝露が頬に落ちて来たようだ。
「っ!イタタ…。同じ体勢で寝てたから身体が痛い」
ゆっくりと、痛みに耐えて手足を伸ばす。
「さて…。まずは、太陽が昇りきる前に水を確保しないと」
私は、手近にあった木の葉をむしり取る。
丁度その葉は、笹の葉の様な縦長の形をしていた。なので、その葉を縦横と交互に編んでいく。隙間無くキッチリと編んだそれに、朝露を集めて行く。
「これくらいで大丈夫かな」
本当は直ぐに飲みたかったが我慢し、ある程度溜まった水を一口舐める。
(舌に痺れは無し。味も…大丈夫)
それから暫く待っていたが、特に体調に変化はなかった。それでようやく、待ちに待った水を飲む。
「ゴクッ、ゴクッ!…っはぁ~。生き返ったぁ~」
カラカラだった身体に水分が染み渡っていくのが分かる。
「よし!!次は食料を見つけないと」
だが私のいる場所からは、食べられそうな果物や木の実は見当たらない。となれば、降りて地上から探さないといけなくなる。
「でも、また昨日の熊擬きに会ったら…」
確実に私は死ぬだろう。
あんな巨大な生き物に素手で勝てる人間はいない。私なんて、昨日見たあの強烈な張り手の一撃でお陀仏だ。
「でも、降りないと何も食べられないしなぁ」
暫く考え、降りる事を決意する。
(どのみち、ここから動かないと何も変わら無いし)
下に何も居ない事を確認して降りる。
久し振りの地面の感触にホッとする。
(まず、この木を中心に辺りを調べてみよう)
この1番大きな木なら、遠くからでも見えるので迷子の心配は無い。
「よし、行くか!」
パンパンと頬を2度叩き、気合を入れて歩き出した。
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