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第1章

No.55

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『ねぇねぇ』

「ん?」
「どうしました?」

いきなり読んでいた本から顔を上げた私に、ルイザさんが声をかけてきた。

「いえ…。誰かに声をかけられた様な気がして」
「誰かにですか…?」

そう言って、ルイザさんは図書館を見渡す。
図書館には、私達の他に司書の眼鏡をかけた女性とお年寄りの男性しかいない。
だが、どちらも私達から離れた場所にいて小さな声は聞こえない。

「すいません。気の所為だったみたいです」

(疲れてるのかなぁ)

図書館にこもって既に3時間は経っている。
1度も休まずに、ずっと様々な本を読んでいた為に身体が固まって動かすと痛い。

「そろそろ休憩しましょう。リディア様からサンドイッチと果物を預かってます」

そう言って、ルイザさんはバスケットを持ち上げる。

「わぁ!嬉しいです!」
「今日は天気がいいので、近くのカフェでランチにしましょう」


***


「ん~!美味しい!」
「えぇ、本当ですね。私は、この暴れ牛のステーキ肉が挟んであるサンドイッチが好きです」
「私は、このモモンのサンドイッチが好きです!」

私とルイザさんは、カフェの外に面した場所でリディアさんの用意してくれた昼食を食べていた。

(こういうのってホッとするなぁ~)

爽やかな風から短い髪を揺らす。
横を向くと、何人かの子供達が噴水の近くで笑いながら水遊びをしている。その他にも、お客を呼び込む商人の声や、何人かで集まり井戸端会議をする奥様方。

こういう光景は、世界が違えど変わらないんだと思った。

「………皆んな、どうしてるかな」

(お父さん、お母さん、紗希、晃、圭太、圭子、由香…)

今まで意識して家族の事を思い出さない様にしていた。家族の事を想うと、とても悲しくなるからだ。

絶対に帰ると誓っている。

だが、中々帰る方法が見つからず時間だけが過ぎて行く。家族を想うと、私の中で燻り続ける焦燥感が大きくなるのがわかる。

ーー私は、本当に帰れるの?

家族の元に帰りたい気持ちと、本当に帰れるか不安な気持ち。
普段、抑さえ込んでる気持ちが溢れ出す。

(っ!駄目駄目!何弱気になってるの!しっかりしろ!絶対に帰るんでしょ?)

アルフォンスさんも、私の為に遅くまで帰る方法を探してくれているのだ。それなのに、私自身が不安になってどうするのだ。

(アルフォンスさんに失礼だ…)

「よしっ!」

残っていたサンドイッチを食べ終えて、気合いを入れ直す。

「ルイザさん。もう少し、私に付き合って下さい!」
「勿論です。私は、マコ様の護衛ですから」

にっこりと微笑むルイザさん。
軍服姿の彼女は、とてもカッコいい。

「では、戻りましょうか」
「はい!」

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