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第1章

No.63

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アルフォンスが、屋敷に着く少し前。
貴族街の端にある、とある屋敷の一室で不穏な話し合いが行われていた。

部屋には、最低限の小さな明かりしか点いておらず向かい合う相手の顔がギリギリ見えるかどうかの明るさだった。
部屋には、この屋敷の主人と娘。2人の向かい側のソファーに、黒いローブを来た2人組の男が座っていた。

「ーーさて。お前達に頼みたいのは、最近とある貴族が囲っている女の始末だ」

最初に口を開いたのは、屋敷の主であるダンブレア男爵。

「方法は?」

背の高い黒いローブの男がすかさず尋ねる。
すると、ダンブレア男爵の隣に座っていたマリーが答える。

「私の所に連れて来て!そして、私の前で無様に泣き喚いて命乞いさせて!」

薄暗い中でも分かるほどに、マリーの瞳はギラギラと嫉妬の炎が燃えている。

(馬鹿な女だ)

背の高い男は、そんなマリーを見てそう思った。
今まで、色々な暗殺依頼を受けて来た。その中でも特に頭の悪そうな嫉妬に狂った馬鹿な女だ。
間違っても、あの忌々しい男はこの女だけは選ばないだろう。

(自身の何処を見てあの男に選ばれると思ってるんだ…)

あの男に本気で選ばれると思っている目の前のマリーに嗤いが込み上げる。隣の小柄な男も同じ事を考えていたらしい。小さく嗤う声が聞こえる。

「アルフォンス様は、私のものよ!あの方に近付くあの女は絶対に許さない!」
「可愛いマリー。大丈夫、直ぐに邪魔者を始末しよう」

嫉妬に狂うマリーをダンブレア男爵が宥める。

(この男も、本気でこの娘があの男に選ばれると本気で思っているのか…?)

だとしたら、親子揃って馬鹿だとしか言いようが無い。

「………では、今回の依頼を確認する。今回の依頼は、アルフォンス・サザーランド公爵が屋敷に囲っている女の誘拐。誘拐後、ご令嬢の前で命乞いをさせて殺せばいいんだな?」
「えぇ、そうよ」
「1つだけ言っておく。今回の依頼は、かなり難易度が高い。仮にもこの国の守護竜と言われる男の屋敷だ。簡単には、侵入出来ない」

そこで一旦、言葉を切る。
すると、続きを小柄な男が話す。

「だから、少し時間がかかる事になる。こっちも、それ相応の準備が必要になるからなぁ」
「はぁ!?何よそれ!あんた達の都合なんて関係ないわ!すぐにあの女を連れて来て!私は依頼主なのよ!!それが出来ないなら、あんた達じゃなくて他の奴に頼むわよ!」

そんな頭の悪い事を叫ぶマリーを2人は嘲笑う。

「………好きにすれば良い。ただ、俺たち以外にこんな以来を受ける奴がいるとは思わないがな」

この国の英雄に負けが確定している様なケンカを売る馬鹿はいない。

(それすらも分からない馬鹿な女だ…)

「マリー、落ち着きなさい。今から他を探すより、この者達に任せよう。…確実に依頼は達成するんだろうな?」
「勿論」

父親に宥められ、渋々納得するマリー。
そうして、契約は結ばれた。
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