前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます！

牙を剥く狂気

どうして

「な…んで」
「は？」

小さな呟きに反応して足の力が弱まる。

「何で…そんなにリュシル…を、彼を憎むの」

新しい人生を歩み始めたのに…。今の彼は、誰からも好かれる優しい人間なのに。

「今の人生を捨ててまでしないといけない事なの！？」

あらん限りの声を振り絞る。
すると彼は私から足を退かし、フラつきながら後ずさる。

「俺…は」

頭を抱えブツブツと何かを呟く。

「俺は復讐ないといけないんだ。そうだ、そうしないといけないんだ。やらないと…ちゃんとそうしないといけないんだ」
「ヴォーグ…さん？」

私の声に反応してゆっくりと此方に近付いてくる。

「復讐しないと、復讐しないと、復讐しないと」

無表情で同じ言葉を繰り返すその姿はとても人間とは思えなかった。

「ひっ！来ない…で」
「もうアイツが来るまで待たなくていいよね？」

そう言って取り出したのはあの時と似たようなナイフ。

「あっ…」
「レムリアの死体を見たアイツはどんな反応するかな？」

そう言って、そのナイフを私めがけて振り下ろした。