102 / 230
8.二人きりの旅行
96.誤魔化さねえと
しおりを挟む
「……な……なんなんだろな、アレ」
野上さんが居なくなったテラスで、とりあえず言ったら、丹生田はハッとしたような目を向け、すぐ目を伏せた。
一気にアタマの血が落ちてく。サアアと血が落ちてく音が聞こえる気がして、逆に気まずさが湧き昇ってくる。
マズイ、マズイ、マズイ
とりあえずテーブル上のビールをつかみ、ぐいっとあおった。
誤魔化すのに酒って便利、な筈なんだけど、こっからどう誤魔化せば良いか分かんねえっ!
つかホモとか言われてカッとして、でも丹生田好きなわけだし~~~とかって動揺して、そんでキレちまった─────コレって認めたことになる? よな? そうだよバレた! きっと丹生田にバレた!
ああ~~俺ってバカ!! はるひがホモつったとき流せば良かったんだ『アホか』とかって。なのに逆にキレて、……いや、いやいやいや今ソコ考えんな、なんとかしなきゃなんだから。
なんとか? なんとかって、なんとかってどうやって─────!?
「……藤枝」
ハッとして目を上げる。
丹生田がこっち見てる。なんか困ったみたいな、えっと照れてる? みたいな、イヤ……やっぱ困ってる。
「アレだよ、その」
どうしよどうしよどうしたらいい?……ダメ、ダメだ分かんねえっ
けど目が離せねえ。丹生田が黙ってこっち見てて、困ったみたいなのに真剣な目で、目を逸らせねえ。
じゃじゃ、言わねえとダメだ、なんでもねえって言わねえと、ホラ言え、すぐ言え、言えよ俺っ
「なんで……もね………」
見てる。めちゃガン見されてる。つかコレ、やっぱバレてる? キモいとか……
いやいやいやバレて、そんで困ってんだろ? ダメじゃんヤバいじゃん、丹生田困らせる気なんてねえんだって! じゃじゃ言わねえと! そうじゃねえって、なんでもねえって、勘違いすんなよって、笑って─────目を上げて、ちゃんと見て、笑って言え!
「…………つか、……その」
顔見らんねえ~!!
いっつも勝手に動いちまうくちが、なんで今動かねえんだよ!? どうする? どうしたらイイ? どうするんだよ俺っ!!
気づいたらテラスから飛び出してた。
「藤枝っ」
丹生田が呼んでる。けど振り返るとか無理!
駆け抜けるラウンジで野上サンがグラスに口つけたまんま目を丸くして、ロビーでフロントのおじさんもこっち見てて、やべっ!
ナンカ分かんねえけどやべっ!!
色々見ないようにして階段駆け上がり、部屋に飛び込んでバタンッと閉めたドアに背中預け、たけど足ブルブル震えて力抜けて─────そのまんまズルズルしゃがみ込んだ。
……俺が……丹生田のこと好きだってバレちゃった。ホモって、思った……?
そそそうだよな、はるひちゃんにホモって言われて、客観的に見たらそうなんか? なんて思ったらカアッとしちまって女の子に怒鳴って─────ああもう、俺ってサイテーじゃね?
けどでもだってしょうがねえじゃん?
ずっと隠して片想いでイイって、─────だって丹生田は俺のこと大事な友達だと思ってくれてんだ。なのに好きとか、ホモとか……困るよな? うん、そりゃ困る、困るに決まってる。
だよだよ困るに決まってるんじゃん。だって困った顔してたもん。困ってたもん丹生田。どうしよ、どうしたらいい?
頭グシャグシャかき乱しながら唸ってたら、ガチャッと音がして、ドアが動いた。ハッとして手の動き止まる。
「藤枝」
少しくぐもった低い声。丹生田だ。ドアが、がたがたっと動いて背中が揺れる。
「どうした。なぜドアが開かない」
苛立ったような声が聞こえた。
「あ……」
ドアの前に座り込んでた、から……けど、けど、けど、どうしたら……
「藤枝、どうした」
ドアがドンッと大きな音立てて揺れた。
「大丈夫かっ」
ガンガン音がして、あ、コレって叩いて、イヤ蹴ってんのか、ドア壊れそうな勢いで、焦って
「だ、だいじょぶ」
なんとか答えたら、音と振動は止んだ。
「大丈夫なのか。本当か」
「う……うん」
めちゃ心配そうな声が聞こえ、拓海はヨロヨロ立ち上がる。次の瞬間、ドアがバンッと開いてコケそうになったら、腕つかまれ、コケずに済んだ。
けど
「大丈夫か、藤枝」
ち、近い、近いよ、めっちゃ近いって!
「は、離……」
「どうした」
間近で、なんか必死な目の丹生田見返してたら、ドキンとしてヤバくて「離せって!」こっちも必死で言ったのに、ぜんぜん離してくんなくて、マジやばくて
「丹生田っ!」
なんとか見上げて言ったら、そのまんま部屋に押し込まれて、ベッドの脇に立たされた。そんでめっちゃ近くでめっさ真剣に見てる。見てんだまっすぐ。目が離せねえんだ。ドキドキしちまってヤバくて、そうヤバイんだ。
ヤバいヤバいって、そんだけで、なんとか目を逸らせた。
けどすぐ近くで声が
「藤枝。大丈夫か」
大丈夫じゃねえよバカ! そんな近くでそんな声出すな!
「藤枝」
なんでンな必死な声なんだよ!
くっそ! もう、もうもうもう無理!
「だーーーーっ!!」
もう無理! ぜってー無理無理!!
「もう分かってンだろっ!?」
キレ気味に声上げると「なにをだ」と低い声が返る。
「だから!」
もうバレたんだろ?
ただの友達なんてゼンッゼン思えてねえって、ヤらしいコトとか考えちまってンのバレちまったんだろ?
顔見れねえまんま、そんな考えがダーッとアタマん中駆け巡り
「うっせーーーーーーッ!!」
─────キレた。
野上さんが居なくなったテラスで、とりあえず言ったら、丹生田はハッとしたような目を向け、すぐ目を伏せた。
一気にアタマの血が落ちてく。サアアと血が落ちてく音が聞こえる気がして、逆に気まずさが湧き昇ってくる。
マズイ、マズイ、マズイ
とりあえずテーブル上のビールをつかみ、ぐいっとあおった。
誤魔化すのに酒って便利、な筈なんだけど、こっからどう誤魔化せば良いか分かんねえっ!
つかホモとか言われてカッとして、でも丹生田好きなわけだし~~~とかって動揺して、そんでキレちまった─────コレって認めたことになる? よな? そうだよバレた! きっと丹生田にバレた!
ああ~~俺ってバカ!! はるひがホモつったとき流せば良かったんだ『アホか』とかって。なのに逆にキレて、……いや、いやいやいや今ソコ考えんな、なんとかしなきゃなんだから。
なんとか? なんとかって、なんとかってどうやって─────!?
「……藤枝」
ハッとして目を上げる。
丹生田がこっち見てる。なんか困ったみたいな、えっと照れてる? みたいな、イヤ……やっぱ困ってる。
「アレだよ、その」
どうしよどうしよどうしたらいい?……ダメ、ダメだ分かんねえっ
けど目が離せねえ。丹生田が黙ってこっち見てて、困ったみたいなのに真剣な目で、目を逸らせねえ。
じゃじゃ、言わねえとダメだ、なんでもねえって言わねえと、ホラ言え、すぐ言え、言えよ俺っ
「なんで……もね………」
見てる。めちゃガン見されてる。つかコレ、やっぱバレてる? キモいとか……
いやいやいやバレて、そんで困ってんだろ? ダメじゃんヤバいじゃん、丹生田困らせる気なんてねえんだって! じゃじゃ言わねえと! そうじゃねえって、なんでもねえって、勘違いすんなよって、笑って─────目を上げて、ちゃんと見て、笑って言え!
「…………つか、……その」
顔見らんねえ~!!
いっつも勝手に動いちまうくちが、なんで今動かねえんだよ!? どうする? どうしたらイイ? どうするんだよ俺っ!!
気づいたらテラスから飛び出してた。
「藤枝っ」
丹生田が呼んでる。けど振り返るとか無理!
駆け抜けるラウンジで野上サンがグラスに口つけたまんま目を丸くして、ロビーでフロントのおじさんもこっち見てて、やべっ!
ナンカ分かんねえけどやべっ!!
色々見ないようにして階段駆け上がり、部屋に飛び込んでバタンッと閉めたドアに背中預け、たけど足ブルブル震えて力抜けて─────そのまんまズルズルしゃがみ込んだ。
……俺が……丹生田のこと好きだってバレちゃった。ホモって、思った……?
そそそうだよな、はるひちゃんにホモって言われて、客観的に見たらそうなんか? なんて思ったらカアッとしちまって女の子に怒鳴って─────ああもう、俺ってサイテーじゃね?
けどでもだってしょうがねえじゃん?
ずっと隠して片想いでイイって、─────だって丹生田は俺のこと大事な友達だと思ってくれてんだ。なのに好きとか、ホモとか……困るよな? うん、そりゃ困る、困るに決まってる。
だよだよ困るに決まってるんじゃん。だって困った顔してたもん。困ってたもん丹生田。どうしよ、どうしたらいい?
頭グシャグシャかき乱しながら唸ってたら、ガチャッと音がして、ドアが動いた。ハッとして手の動き止まる。
「藤枝」
少しくぐもった低い声。丹生田だ。ドアが、がたがたっと動いて背中が揺れる。
「どうした。なぜドアが開かない」
苛立ったような声が聞こえた。
「あ……」
ドアの前に座り込んでた、から……けど、けど、けど、どうしたら……
「藤枝、どうした」
ドアがドンッと大きな音立てて揺れた。
「大丈夫かっ」
ガンガン音がして、あ、コレって叩いて、イヤ蹴ってんのか、ドア壊れそうな勢いで、焦って
「だ、だいじょぶ」
なんとか答えたら、音と振動は止んだ。
「大丈夫なのか。本当か」
「う……うん」
めちゃ心配そうな声が聞こえ、拓海はヨロヨロ立ち上がる。次の瞬間、ドアがバンッと開いてコケそうになったら、腕つかまれ、コケずに済んだ。
けど
「大丈夫か、藤枝」
ち、近い、近いよ、めっちゃ近いって!
「は、離……」
「どうした」
間近で、なんか必死な目の丹生田見返してたら、ドキンとしてヤバくて「離せって!」こっちも必死で言ったのに、ぜんぜん離してくんなくて、マジやばくて
「丹生田っ!」
なんとか見上げて言ったら、そのまんま部屋に押し込まれて、ベッドの脇に立たされた。そんでめっちゃ近くでめっさ真剣に見てる。見てんだまっすぐ。目が離せねえんだ。ドキドキしちまってヤバくて、そうヤバイんだ。
ヤバいヤバいって、そんだけで、なんとか目を逸らせた。
けどすぐ近くで声が
「藤枝。大丈夫か」
大丈夫じゃねえよバカ! そんな近くでそんな声出すな!
「藤枝」
なんでンな必死な声なんだよ!
くっそ! もう、もうもうもう無理!
「だーーーーっ!!」
もう無理! ぜってー無理無理!!
「もう分かってンだろっ!?」
キレ気味に声上げると「なにをだ」と低い声が返る。
「だから!」
もうバレたんだろ?
ただの友達なんてゼンッゼン思えてねえって、ヤらしいコトとか考えちまってンのバレちまったんだろ?
顔見れねえまんま、そんな考えがダーッとアタマん中駆け巡り
「うっせーーーーーーッ!!」
─────キレた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる