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第一章:ギルド加入編
#17.台風の中の山登りで
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豪雨と暴風……いや、台風の中山へ向かっていく僕達は今にも吹っ飛ばされそうだった。
なにせ、さっきよりも勢いが増してるから。
これ、メリクリ草……だっけ?無事なんだろうか?
今更だけど、この台風の中、草一つを山で見つけるのってかなり骨じゃないかな?
そういえば、メリクリ草の見た目ってどんなのか聞いてなかったな。
「ねぇ!メリクリ草ってどんなの!?」
雨と風の音でかき消されそうだったから、とりあえず大声で聞いてみた。
「草っていうより花っぽい!花の部分が星の形になってんだ!」
なるほど、たしかにメリクリって名前にピッタリかもしれない。
ていうか、さすがファンタジー世界だね。星の形をした花なんて、前世じゃ見たことも聞いたこともないよ。さらに、こんな豪雨の中を山登りどころか歩いたこともないわ!
なんとか山のふもとまで辿り着き、危険な台風山登りを始めた。
山頂付近にあるらしいけど、雨で土がぬかるんで滑りやすくなってるし土砂崩れの可能性だってある。
かなり慎重にいかないといけないな。
でも、ゆっくりしすぎると日が暮れてさらに困難になってしまう。
これは思ってたより結構大変だな。
……あだ!
うぅ、ぬかるみで滑って転んじゃった……でも、ぬかるみがクッションになってダメージがあまりないや。
……と思ったけど、昨日の戦いで傷ついた足の包帯に血が染み込んでる。きっと、今こけたせいで傷が開いたんだ。これは急いだほうがいいかな?
あ、これはさらに難易度が上がったかも。
さ、早く行かないと……ってあれ!?一瞬目を離したらヴァンを完全に見失った!!
でも行先は山頂の方だし、進めば会えるよね。立ち止まってたら追いつけない気がする。いろいろと。
と、いうわけで再び登り始める。
また一段と台風の威力が強まった気がするけど、とにかく前へ進んでいく。
やがて看板を見つけ、超薄目で見てみると、『この先山頂』と書いてあるのがわかった。
しかし、看板に記されてる矢印がケモノ道と言わんばかりの方へ指している。
しかも、道の左側に立てかけてあって、反対の右の方へ指していて、さらには下りだ。
……きっと雨風でズレたんだよね。でも、こんなキッチリと?なんか、気になるけども……今は気にしないでおこう。
看板を過ぎて少し進むと、先の方で爆発が起こった。え、何が起こったの?もしかして何かと戦ってる?この台風の中で!?
走り出して山頂に着くと同時に、何かが吹っ飛んできて僕にぶつかった。
風の勢いも加わってか、結構下まで吹っ飛ばされてしまった。いったいな、もう!!
起き上がってみると、ぶつかってきた正体はヴァンだった。
「わ、わりぃ……」
「何があったのさ?」
「ウォーターワイバーンだ。山頂にウォーターワイバーンが居やがったんだ!」
ウォーターワイバーン?それってなんぞ?
「ウォーターワイバーンは水属に特化したワイバーンだ。スキルも水関係が多い……」
「そんなのが……コボルトは!?」
「チッ」
ダッシュでヴァンが戻っていく。
きっと、まだ戦場に取り残されてるんだ。
おそらく、山頂にすでにウォーターワイバーンとやらがいて、ヴァンが辿り着いた瞬間に戦いが始まったのだろう。だとすると、コボルトは逃げてるか隠れてるか……はたまた、現在進行形で襲われてるか。
そう思った瞬間、僕は同じくダッシュで再び登っていく。
足の痛みも雨によるぬかるみも気にせず、僕はコボルトの安否が気になって走り登る。ヴァンは……とりあえず大丈夫でしょ。
山頂に辿り着くと、ヴァンが剣で応戦していた。コボルトは、気の木陰で涙目になって震えている。
とりあえず、コボルトに何があったのか聞こう。
ヴァンの加勢を後にして、コボルトに駆け寄る。
「ねぇ、なにがあったの?」
「それが……って、なんでそんなにドロドロなんだワン?」
「いや、ちょっと吹っ飛んできたヴァンとぶつかってね……で、一体何が?」
「それが、山頂に着いたらアイツがいたんだワン。そして、僕達を見つけたと同時に襲ってきたんだワン」
うん、予想通り! ヴァンの戦いを見ると、この台風の中だからか苦戦している。見えづらいけど、陰でなんとなくわかる。僕も加勢に行かないと。
「ヴァン!加勢するよ!」
「おう!」
剣を鞘から抜いて構えると、ウォーターワイバーンが僕を見た瞬間に動きを止め、地面に着地して僕をジッと見る。
え、え?なになに? 僕とヴァンが構えたまま顔を見合わせると、数歩僕に近づいてきて、なぜか跪いてきた。
思わずビクッとしたけど……え、なにがどうなってるの!?なんで跪いてるの!?
わけがわからない……わけがわからないけど、とりあえずは敵意が感じられないから、剣を鞘に戻した。
これ、どうしたらいいのかな……?
このままじゃラチがあかないし、何か言ってみるかな?
「えっと……僕達、メリクリ草を探してるんだけど……どこにあるか知らない?」
パッとウォーターワイバーンが顔を上げると、立ち上がって先にある崖から飛び降りた。
気になって僕達が見に行くと、雨で見えずらいけど、何かを引っこ抜いてるのが見える。
再び僕達の前に飛んでくると、星型の差し出してきた。これって……
ヴァンを見ると、コクッと頷いた。
「間違いねぇ、メリクリ草だ!」
これを取ってきてくれたの?僕の頼みを聞いて?
悪い魔物じゃないってことなのか?
メリクリ草をそっと受け取り、駆け寄ってきたコボルトに渡すと、凄く嬉しそうに笑顔になった。かわいいなぁ。
しかし、崖に薬草とは……なんというか、お約束だね。
さって、急いで山を降りないと。
「これで助かるワン……ありがとうだワン!」
「ここまで来たんだ。向こうまで送ってってやるよ」
やさしいね、ヴァン。
しかし、この足でこの台風の中を山を降りて道を走り、また山を登るのか……まぁ、このクエストは僕が言い出したことだし、もうひと頑張りするか。かわいいコボルトのためだしね。
ウォーターワイバーンにお礼を言い、山を降りようとしたらウォーターワイバーンが一鳴きしだした。
見てみると、しゃがんで背をこっちに向けていた。
乗れって……ことなのか?
「乗って……いいの?」
コクンと頷くウォーターワイバーン。
メリクリ草を取ってきてくれるだけじゃなく、背に乗せてくれるなんて……これは驚いた。
ヴァンを見ると、かなり驚いてる顔をしている。
そりゃ、モンスターのワイバーンが僕達を乗せてあげようとしてるんだ。驚かない方がおかしいってものだ。
僕達は話し合い、とりあえず時間が短縮できるってことで、乗せてもらうことにした。
全員乗ると、一鳴きすると、空へ羽ばたきだした。おお、すっごい! 一度飛行機に乗ったことあるけど、ドラゴンに乗って飛ぶのは、また別の凄さがある。ただ、これが青空だったらなぁ。
「ウォーターワイバーン、あの山までお願い」
目的地の山を言うと、また一鳴きして山に向かって飛び出した。
うわ、風がすっごい!!雨の衝撃で少し痛いし、目も開けてられないし!!
ほんとに、晴れてたら最高だったのに!
しかし、ウォーターワイバーンのスピードはかなりのものだった。結構離れてたはずなのに、あっという間に着いたんだから。
山頂で降ろしてもらってお礼を再び言うと、一鳴きして飛び去ってしまった。
見送った後、僕達は急いで山を降りていく。
コボルトの里は山の中間地点にあるらしいからだ。
もう少しで……もう少しでこの忌々しい雨が止むんだ!そう思うと、かなり嬉しかった。
コボルトのために今回は動いたけど、もう二度とこの台風の中を歩きたくはないものだ。
そして、僕達はコボルトの案内で中間地点にある洞窟に入っていった。
いったん服を脱いで絞って着ると、若干だけど身体が軽くなった気がした。
毛皮は拭けないけど、ブルブルと身体を震わして水気を飛ばす。こういうのは結構便利だ。
うぅ……にしても身体が完全に冷えちゃったよ……あっついシャワーを浴びて風呂に入りたい。そして、牛乳……じゃなくて羊乳だっけ?をキューっとね!
なにせ、さっきよりも勢いが増してるから。
これ、メリクリ草……だっけ?無事なんだろうか?
今更だけど、この台風の中、草一つを山で見つけるのってかなり骨じゃないかな?
そういえば、メリクリ草の見た目ってどんなのか聞いてなかったな。
「ねぇ!メリクリ草ってどんなの!?」
雨と風の音でかき消されそうだったから、とりあえず大声で聞いてみた。
「草っていうより花っぽい!花の部分が星の形になってんだ!」
なるほど、たしかにメリクリって名前にピッタリかもしれない。
ていうか、さすがファンタジー世界だね。星の形をした花なんて、前世じゃ見たことも聞いたこともないよ。さらに、こんな豪雨の中を山登りどころか歩いたこともないわ!
なんとか山のふもとまで辿り着き、危険な台風山登りを始めた。
山頂付近にあるらしいけど、雨で土がぬかるんで滑りやすくなってるし土砂崩れの可能性だってある。
かなり慎重にいかないといけないな。
でも、ゆっくりしすぎると日が暮れてさらに困難になってしまう。
これは思ってたより結構大変だな。
……あだ!
うぅ、ぬかるみで滑って転んじゃった……でも、ぬかるみがクッションになってダメージがあまりないや。
……と思ったけど、昨日の戦いで傷ついた足の包帯に血が染み込んでる。きっと、今こけたせいで傷が開いたんだ。これは急いだほうがいいかな?
あ、これはさらに難易度が上がったかも。
さ、早く行かないと……ってあれ!?一瞬目を離したらヴァンを完全に見失った!!
でも行先は山頂の方だし、進めば会えるよね。立ち止まってたら追いつけない気がする。いろいろと。
と、いうわけで再び登り始める。
また一段と台風の威力が強まった気がするけど、とにかく前へ進んでいく。
やがて看板を見つけ、超薄目で見てみると、『この先山頂』と書いてあるのがわかった。
しかし、看板に記されてる矢印がケモノ道と言わんばかりの方へ指している。
しかも、道の左側に立てかけてあって、反対の右の方へ指していて、さらには下りだ。
……きっと雨風でズレたんだよね。でも、こんなキッチリと?なんか、気になるけども……今は気にしないでおこう。
看板を過ぎて少し進むと、先の方で爆発が起こった。え、何が起こったの?もしかして何かと戦ってる?この台風の中で!?
走り出して山頂に着くと同時に、何かが吹っ飛んできて僕にぶつかった。
風の勢いも加わってか、結構下まで吹っ飛ばされてしまった。いったいな、もう!!
起き上がってみると、ぶつかってきた正体はヴァンだった。
「わ、わりぃ……」
「何があったのさ?」
「ウォーターワイバーンだ。山頂にウォーターワイバーンが居やがったんだ!」
ウォーターワイバーン?それってなんぞ?
「ウォーターワイバーンは水属に特化したワイバーンだ。スキルも水関係が多い……」
「そんなのが……コボルトは!?」
「チッ」
ダッシュでヴァンが戻っていく。
きっと、まだ戦場に取り残されてるんだ。
おそらく、山頂にすでにウォーターワイバーンとやらがいて、ヴァンが辿り着いた瞬間に戦いが始まったのだろう。だとすると、コボルトは逃げてるか隠れてるか……はたまた、現在進行形で襲われてるか。
そう思った瞬間、僕は同じくダッシュで再び登っていく。
足の痛みも雨によるぬかるみも気にせず、僕はコボルトの安否が気になって走り登る。ヴァンは……とりあえず大丈夫でしょ。
山頂に辿り着くと、ヴァンが剣で応戦していた。コボルトは、気の木陰で涙目になって震えている。
とりあえず、コボルトに何があったのか聞こう。
ヴァンの加勢を後にして、コボルトに駆け寄る。
「ねぇ、なにがあったの?」
「それが……って、なんでそんなにドロドロなんだワン?」
「いや、ちょっと吹っ飛んできたヴァンとぶつかってね……で、一体何が?」
「それが、山頂に着いたらアイツがいたんだワン。そして、僕達を見つけたと同時に襲ってきたんだワン」
うん、予想通り! ヴァンの戦いを見ると、この台風の中だからか苦戦している。見えづらいけど、陰でなんとなくわかる。僕も加勢に行かないと。
「ヴァン!加勢するよ!」
「おう!」
剣を鞘から抜いて構えると、ウォーターワイバーンが僕を見た瞬間に動きを止め、地面に着地して僕をジッと見る。
え、え?なになに? 僕とヴァンが構えたまま顔を見合わせると、数歩僕に近づいてきて、なぜか跪いてきた。
思わずビクッとしたけど……え、なにがどうなってるの!?なんで跪いてるの!?
わけがわからない……わけがわからないけど、とりあえずは敵意が感じられないから、剣を鞘に戻した。
これ、どうしたらいいのかな……?
このままじゃラチがあかないし、何か言ってみるかな?
「えっと……僕達、メリクリ草を探してるんだけど……どこにあるか知らない?」
パッとウォーターワイバーンが顔を上げると、立ち上がって先にある崖から飛び降りた。
気になって僕達が見に行くと、雨で見えずらいけど、何かを引っこ抜いてるのが見える。
再び僕達の前に飛んでくると、星型の差し出してきた。これって……
ヴァンを見ると、コクッと頷いた。
「間違いねぇ、メリクリ草だ!」
これを取ってきてくれたの?僕の頼みを聞いて?
悪い魔物じゃないってことなのか?
メリクリ草をそっと受け取り、駆け寄ってきたコボルトに渡すと、凄く嬉しそうに笑顔になった。かわいいなぁ。
しかし、崖に薬草とは……なんというか、お約束だね。
さって、急いで山を降りないと。
「これで助かるワン……ありがとうだワン!」
「ここまで来たんだ。向こうまで送ってってやるよ」
やさしいね、ヴァン。
しかし、この足でこの台風の中を山を降りて道を走り、また山を登るのか……まぁ、このクエストは僕が言い出したことだし、もうひと頑張りするか。かわいいコボルトのためだしね。
ウォーターワイバーンにお礼を言い、山を降りようとしたらウォーターワイバーンが一鳴きしだした。
見てみると、しゃがんで背をこっちに向けていた。
乗れって……ことなのか?
「乗って……いいの?」
コクンと頷くウォーターワイバーン。
メリクリ草を取ってきてくれるだけじゃなく、背に乗せてくれるなんて……これは驚いた。
ヴァンを見ると、かなり驚いてる顔をしている。
そりゃ、モンスターのワイバーンが僕達を乗せてあげようとしてるんだ。驚かない方がおかしいってものだ。
僕達は話し合い、とりあえず時間が短縮できるってことで、乗せてもらうことにした。
全員乗ると、一鳴きすると、空へ羽ばたきだした。おお、すっごい! 一度飛行機に乗ったことあるけど、ドラゴンに乗って飛ぶのは、また別の凄さがある。ただ、これが青空だったらなぁ。
「ウォーターワイバーン、あの山までお願い」
目的地の山を言うと、また一鳴きして山に向かって飛び出した。
うわ、風がすっごい!!雨の衝撃で少し痛いし、目も開けてられないし!!
ほんとに、晴れてたら最高だったのに!
しかし、ウォーターワイバーンのスピードはかなりのものだった。結構離れてたはずなのに、あっという間に着いたんだから。
山頂で降ろしてもらってお礼を再び言うと、一鳴きして飛び去ってしまった。
見送った後、僕達は急いで山を降りていく。
コボルトの里は山の中間地点にあるらしいからだ。
もう少しで……もう少しでこの忌々しい雨が止むんだ!そう思うと、かなり嬉しかった。
コボルトのために今回は動いたけど、もう二度とこの台風の中を歩きたくはないものだ。
そして、僕達はコボルトの案内で中間地点にある洞窟に入っていった。
いったん服を脱いで絞って着ると、若干だけど身体が軽くなった気がした。
毛皮は拭けないけど、ブルブルと身体を震わして水気を飛ばす。こういうのは結構便利だ。
うぅ……にしても身体が完全に冷えちゃったよ……あっついシャワーを浴びて風呂に入りたい。そして、牛乳……じゃなくて羊乳だっけ?をキューっとね!
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