Faith

桧山 紗綺

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19 情報の単片

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 身体を休めていると鍵の開く音がした。
 入ってきたのは金髪碧眼の優男。
「申し訳ありませんね、このようなところに押し込めて」
 アーリアとジェラールをここまで連れてきた男がそう謝罪する。
 間違いなく夜会で噂になっていた男だ。
 優し気に微笑む姿はとても誘拐犯には見えない。
 ジェラールがただの貴族子弟だったら何か事情があったのだと考えてしまいそうだ。
「彼女はどうしているんだ?」
「静かにしていますよ。 もしかしたら疲れて眠っていらっしゃるかもしれませんね」
 薬で眠らせたということだろうか。男の表情からは真実が読みづらい。
 まさか情報を得たその日に狙われることになるとは、運がいいのか悪いのか。
「私たちはこれからどうなる」
 正直に答えるかどうかは相手の気分しだいだろうが聞いてみる。
 男はあっさりと答えた。
「貴方はどこか適当なところでお帰しします」
 意外な返答に演技でなく目を瞠る。
 帰す?わざわざ?
 殺すと言われるより意味の分からない返答だった。
「リーナは」
 さらりと出る偽りの名。
 ジェラールもアーリアも慣れ過ぎている。
 胸にわだかまる感情は無視した。
「彼女は私たちとともに来ていただきます」
「何故…」
「彼女を必要としている場所があるのですよ」
 諭すように穏やかに語りかける男。
 ジェラールの知る誘拐組織とはかなり様相が違う。
 普通なら殴られて終わりだが、男からは暴力的な気配はしない。
「私も共に行きたいと言ったら?」
「ご家族を悲しませるようなことは言わない方がよろしいですよ」
 至極真面に聞こえることを言う。おかしな事だ。
 その台詞には返事をせず、別のことを問う。
「これからどこに向かうんだ」
「今は申し上げられません」
 さすがに核心に迫るような情報は与えない。
「一つだけ聞かせてくれ」
 出て行こうとしていた男が振り返ってジェラールを見下ろす。
「どうぞ」
 自分が優位に立っていることをわかっているから、男は価値のないだろうジェラールの問いに答える余裕がある。
「貴方たちはレイフィールドの人間か?」
 仇敵である国の名を上げると男の表情が一変した。
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