不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺

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番外編など

そのころ子供たちは -初めてのギルド&依頼- <リオン視点>

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扉を開くと広いカウンターにいる女の人が目に入る。
少し白くなった茶色の髪を後ろでまとめて眼鏡をかけた優しそうな人。
目が合うとにこっと笑ってくれた。

「いらっしゃい。
イクス、そちらが言っていた子供たちね」

声をかけられたのでこんにちはと挨拶するとふわっと笑みが深くなる。
手招きをされたのでカウンターに近づく。

「ああ、登録を頼むよ」

私とルイスが冒険者登録に来るってもう話してあったみたい。
おかげで話がすいすい進んでいく。

「初めまして、私はカナン。
このギルドの副ギルド長を務めているわ」

「はじめまして。
俺はルイス、こっちがリオンです」

「初めまして、リオンです!
よろしくお願いします」

名乗ると目を細めて微笑んでくれる。
副ギルド長ってこのギルドで2番目に偉い人だと思うんだけど、とっても優しそう。
にこにこしてるカナンさんを見てると私もつられて笑顔になっちゃう。

「では早速登録をしましょうか」

登録! 楽しみにしてたの!
わくわくしながらカナンさんを見つめる。
ルイスも期待に目をキラキラさせながらカナンさんが取り出す物を見ていた。

「これは?」

「ギルドカードを作るのに使うのよ。
この石板に名前を書いてね」

カウンターの上に置かれたのはうちの料理長が使ってるまな板の半分くらいの大きさの板。
板の端っこを指でなぞる。石板って言ってたけど石ともまた少し違う感触がする。
石板を持ち上げたルイスも興味深そう。

「書くのは名前だけ?」

落とさないようにねと言われてカウンターに石板を戻したルイスがカナンさんに使い方を聞く。

「そうよ、魔力を読み取って個人の識別をしてるから書くのは名前だけでいいわ」

お先にどうぞ、と言われて私が先に名前を書いた。
指で石板に名前を書くと不思議なことに石板に書いた文字が浮かんで一瞬光った後消える。
光が消えた後、石板の上に小さなカードがあった。
カナンさんが手を伸ばしてカードを取る。私の名前がしるされたカードには小さな文字で他にも何かが書いてある。
なにこれ不思議! おもしろい!
ルイスもどうぞと石板を渡すとささっと書いた『ルイス』の文字が光ってカードが現れる。
おもしろーいと感動してると自分のカードを見たルイスが小さく息を吐いたのが見えた。
緊張してたのかな? ルイスにしては珍しい。
カナンさんがカードの裏面を確認して渡してくれる。
何を確認してたんだろう?
見ていた裏側を見ても何も書いてない。
ルイスと顔を見合わせて首を傾げる。

「気になる?」

とっても気になる。どんな秘密があるのかな。
角度を変えるとなんか浮かんでくるとか!?

「悪いことをしたことがあるかっていうのがカードに出るのよ。
もちろん、普通に見てもわからないけれどね」

そこはギルド機密で教えてくれないらしい。
カナンさんの眼鏡で見えるのかなと思ったけど「ハズレ」だって。
その他にどんな依頼を受けたかとかがわかる機能があって、それをもとに勧められる依頼が決まることもあるとか。
思ったよりすごいカードだった!
最初はいろんな依頼を受けた方がその後勧めてくれる依頼の種類も増えると聞いて俄然やる気が湧く。

「依頼! 今日依頼受けられる?」

せっかく来たのに登録だけなんてもったいない!
イクスを見上げるとわかってるというようにぽんぽんと頭を撫でられた。

「今日終わりそうなのをひとつやってみようか。
せっかくだから依頼を受けるところから報酬を貰うところまでやれば流れがわかるだろう?」

やったあ! 初めての依頼!!
ルイスを引っ張って依頼が貼ってあるボードの前に行く。

「これなんかいいんじゃないかな、白い鈴輪草の採取」

イクスが手に取った紙には『鈴輪草の採取 どの色でも可 1本2G ※白い鈴輪草のみ1本20G』と書いてある。
何色でもいいなら簡単そうだし、初めて依頼を受ける私とルイスでもできそう。
ルイスに聞くとちょっと考えた後、いいんじゃないと賛成してくれた。

「イクスが勧めてくるならできないってことはないだろうし、今日はこれにしよっか?」

「うん! うまくいけば初めての依頼で晩御飯食べれるかなあ?」

楽しみ!と笑ってカナンさんに依頼書を渡す。
少し間があったけどダメとは言われなかったのでやっぱり初心者向けの依頼だったみたい。
すぐ行きたかったけど、先にお昼にしようかと言われてイクスの後ろをついていく。
そういえばお腹空いたなー。何食べよっかとルイスと話しながらギルドを出る。
振り返って手を振るとカナンさんも振り替えしてくれた。
ご飯を食べたら初依頼!
がんばる!





たまたま居合わせて話を聞いていた冒険者たちは彼らの話していた内容に突っ込みたいことがたくさんあった。
まず副ギルド長自ら冒険者登録をしていたのは何故だと。
冒険者として名を馳せたイクスが連れてきたから気をつかっているのかとも思ったが、イクスはそういう気を回すのを好むような人物でもない。
昼も近いこの時間に依頼を受けてその日に終わらせるというのも初心者では難しいことだし、その選んだ依頼が鈴輪草の採取。
鈴輪草は近くの森でも取れるが慣れない者が見つけるのは少し難しい。
しかも白い鈴輪草はそう咲いているものではないため、運が試される品だ。
何故イクスはわざわざ白い鈴輪草と口にしたのか。
初依頼の報酬でご飯を食べるという微笑ましい願いを叶えるだけなら他の依頼もあるだろうに。

「意外と厳しく育てるタイプなのか?」

「ああ、最初失敗させて慢心するなって教えるあれな」

あれやこれやと想像を巡らせる冒険者たちの後ろで副ギルド長が笑みを零す。
あのイクスが育てる子がそんな一般的な範疇の新人に収まるわけがないと。
予想通り最初の依頼を無事終えて――、半日足らずで普通の冒険者が一日森を探すより多い鈴輪草を採取してきたことやその中に白い物も何本かあったのもある程度予想通り。
しかしギルド本部に報告するような大事がわずか数週間後に起こるとは全く予想の欠片すらしていなかった。


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