13 / 78
#1:入学前夜~出会い
#1-9.髪に魔力は宿るもの……らしいです
しおりを挟む
「…………だ、誰?」
長いストレートの黒髪がサラリと流れマリナの顔にかかる。
覗き込んでくる切れ長の瞳はマリナと同じ薄紫で、こうやって隣に座っていても背が高く脚が長い……極めつけは胡散臭そうなこの笑顔……。
「もしかして……お兄様?」
「ピンポーン、大当たりぃ~さすが我が妹マリナ!!久しぶりっ☆」
(「久しぶりっ☆」じゃないのよ、何年ぶりなの?)
いきなり現れたのは、12歳で予定より一年早く家を出て隣国のアカデミーに留学していた兄だった。
家を出てから本当に今の今まで、たったの一度も帰ってこなかったのだ。
いくら「便りの無いのは良い便り」と言えど、「本当にお兄様は生きてるの?」と何度心配した事か。
実に、こうして顔を見るのは……何と6年ぶりになる。
「あんなに可愛かったマリナは美人になったな~。まあオレの妹なんだから当然なんだけど」
「ちょ、ちょっとヤメてよ!」
せっかく昨日ゲネルに綺麗にしてもらった髪がぐしゃぐしゃになってしまう。
家を出た時は、自分より少し大きかったぐらいの身長も随分伸び、少年っぽかった丸みを帯びた頬もすっきりシャープになって、すっかり大人の男性……って、その笑顔だけは昔のままのようだ。
「お兄様までなんでアカデミーに?」
「いやー超優秀なオレは飛び級で卒業出来たんだけどさ、驚かそうと屋敷に戻ったらお前もマルセルもアカデミー入ったって聞いてさあ……来ちゃった☆」
今まで何年も音沙汰なしだったのに何も言わずに帰って来て、妹弟を追ってここまで来るって、どんだけ勝手なのか。
つくづく他人のことは考えない人だ。
「『来ちゃった☆』って……」
「えーマリナに会いたくて飛んできたのに……喜んでくれないんだ……」
「そんなことないわよ。だからってアカデミーにまで来なくったって」
「だって、屋敷で待ってたってマリナは戻ってこないし寂しくて……」
いつもの胡散臭い笑顔を引っ込めて、悲しそうに眉を寄せるお兄様。
そうよね、ずっと離れて隣国にいたんだもん。
6年見ない間に身体は大きく大人になったが、マリナが寂しかったように兄もきっと寂しかったのだろう。
そう絆されてしまう自分は甘いのだろうか、とマリナは諦めの眼差しで大きくなった兄を見た。
「『寂しい』っていくつなんですかアナタ。そんな大きい形して」
あ、兄に突き飛ばされて吹っ飛んでいたゲネルが復活した。
この二人、なぜか昔から相性が悪いというか、顔を合わすと言い合いやら取っ組み合いを始める。
年はゲネルのほうが一つ上なのに、主従関係というかゲネルが一方的にお兄様にヤラれてるっぽいけど。
6年経ってもこれは変わらないのだから、そこは成長してないのかもしれない。お互いに。
「ああ、お前いたの。もういいよ、マリナの面倒はオレが見るから」
「そんなの承服できるわけないでしょう。そもそもここは男子禁制ですよ」
「いいじゃん、兄妹だし。ってか、じゃあお前なに?オレがダメなら当然お前もダメだろ」
「ちょっと……お兄様もゲネルも……」
ヒートアップする舌戦に待ったをかけるも、どちらもマリナの話なんて聞いちゃくれない。
ああ、相変わらずああ言えばこう言う展開。
ホント、なんでこんなに仲悪いんだろう。
「私はいいんですよ、教師なんだから」
「はんっ、ヘタクソな言い訳だな」
「お兄様、ゲネルが先生っていうのは本当らしいですよ」
「…………マジか……お前、どんな手使ったんだよ」
目を見開いてマリナとゲネルを交互に凝視するお兄様と、ドヤ顔のゲネル。
こんな顔をするお兄様は珍しい。
「そう言うわけで、『教師として』いくら兄妹と言えど同室は許可できません。早々に退室願えますか」
「お前……」
「生徒の父兄として、面会するなら正当な手続きをとってどうぞ。保護者ならアカデミーの教師の言うことは聞いていただかないと、ねえ?」
いつもなんだかんだと言い負かされてるゲネルが珍しく押している。
完全に外野となり二人のやり取りを眺めていると、部屋のドアがまたバタンと開く。
「なにやってるの、姉さんの部屋で!」
はあはあと息を切らせて飛び込んできたのはマルセルだ。
「マルセル!どうしたの」
「姉さんとゲネルが通るのが見えて……そしたら兄さんも……」
マリナの部屋は寮の中でも広めの最上階、しかも奥の方にあって寮の入り口からはなかなかの距離だ。
この階層には特別なキーでエレベーターを使わないと上ってこれない。
マルセルが女子寮のキーを持ってるわけもなく、エレベーターが使えないと外階段を上がることになる。
それを全速力で走ってきたならなかなかの運動量となるに違いない。
ぽたぽたと汗を垂らすマルセルをソファに座らせ、タオルを持ってきて拭いてあげる。
開いた首元から見える汗を拭い、くすぐったそうにされるがままのマルセルが可愛い。
こんなに汗をかいてもいい匂いのする弟はいつだって可愛いのだが。
「もう一度聞くけど、なんで二人が姉さんの部屋にいるの?」
兄とゲネルの仲が悪いのはもともとだから仕方ないとして、マルセルに頭が上がらないこの二人もなかなかに可笑しい。
どうなってるんだろう、この3人の力関係は。
「ゲネルはアカデミー卒業して屋敷で執事見習いするんじゃなかったの?」
「それは……お嬢らが今年からアカデミー入るって言うから……」
「兄さんも、折角飛び級で卒業して戻ってくるって言ってたのに、なんでここにいるの?」
「屋敷に帰ったらマリナもお前もいないからさあ……」
はああ……と額に手を当てて大仰に溜息を吐くマルセル。
なんだかこの中で一番しっかりした年上に見えるのは気のせいだろうか。
「とにかく、ソレ持ってるからって姉さんの部屋は出入り自由じゃないから。ちゃんと許可は取って、節度も守って」
「「はい……」」
マルセルに叱られてしゅんとする兄とゲネルがちょっとだけ可愛くて可哀想だ。
(って、え?さらっと聞き流しそうになったけど、わたしが許可すればこれからもこの二人はやってくるってこと?)
いや、それは兄とゲネルだからいいとして、そもそも「男子禁制」のこの寮のシステムはどうなってるのか。
「ああ、それならコレ」
マルセルが見せた左手小指には、小さな黒いオニキスが嵌った細い金のリングがあった。
「これね、視認撹乱魔道具なんだよ。これでシステムと大雑把な人目は素通りってわけ」
「へ、へえー」
(便利なものがあるんだね……って法に触れたりしない……よね?)
「なに言ってんだマリナ、ウチじゃ必須道具じゃねーか。オレも持ってるし、コイツも当然」
「……持ってますよ」
兄もゲネルも当然のように見せてきた指にも、マルセルと同じ金のリングが嵌っている。
さっきマルセルが言った「ソレ」ってこれか!
へ、へえー……え?お兄様、さも当然とばかりに言いましたけど、そんなの知りませんが!?
「姉さんもしてるでしょ、似たようなの」
「でもこれは……」
左手の小指に嵌っている、小さな紫水晶がいくつか並んだ細い金のリング。
普段は手袋の下に隠れて見えない『下僕化』の能力を調整する魔道具。
「確りとした目視や気配探られたら隠せねえけど、システムや衆人の誤魔化しぐらいは余裕だな」
「そ、それって犯罪では……」
「今更なんだよ、ウチ魔お……」
「お兄様、何を言ってるのかしら???」
ウチの事情を何も知らないマルセルの前で何言い出すのか!
まさかとは思うが、ウチが「魔王」だなんて言おうとしてないわよね!?と、慌ててマリナは兄の口を手のひらで塞ぐ。
「大丈夫ですよ、お嬢。これは金を出せば買える『商品』ですので合法です」
と言いながら、とんでもなく高いですけどね、と付け加えるゲネル。
「そうだよ姉さん。嫌ならシステムを改修すればいいんだから」
マルセルがにっこりと微笑みながらそう言うんだから、大丈夫なんだろうと一安心する。
ん?マルセルも知ってる?
ちなみに、システムの開発もオージェ家でしてるらしい。
(これって『盾』と『矛』なんじゃ……)
マリナ如きが事業に口を出せるはずもないので、気付かなかったことにして黙っておく。
それにしても、こんなものを合法に……あくまでも合法に、開発してるオージェ家って、もしかしてスゴい?
「とりあえず、お腹すいたから食堂行こうよ」
はああ……と大きく溜息を吐いたマルセルが、お腹を押さえてそう言った。
そうだわ、成長期のマルセルのお腹を空かせる訳にはいかない!
マリナは、可愛い弟を立派な王宮騎士にさせるべく十分な栄養を与えねば!と意気込む。
「そうね、お兄様もゲネルも、それでいいでしょう?」
食堂なら一緒にテーブルで食事を摂ることができる。
ゲネルやマルセルはいざ知らず、兄も父兄だからギリOKだろう。
この組み合わせをどう思われるかは知らないが。
「じゃあ、わたしは着替えるからみんな出て行って」
「お嬢、着替えなら私が手伝……」
「結構です!」
最後まで渋るゲネルともども3人を部屋から追い出し、バタンと扉を閉める。
遠ざかる足音が聞こえなくなったことを確認して、マリナは一旦ソファに座り込む。
なんでどうしてこうなった?
今日一日が目まぐるしすぎて思考が追いつかない。
ゲネルが昨晩突然現れたのに驚いた。
これは一晩経って落ち着いたのでいいとして、6年ぶりに兄が現れた。
まあ、理由はアレだけど、身内だしこれは別にいいだろう。
問題は……会長にシルシを知られた……。
ゲネルがいてくれて助かった。
あのままシルシを弄られてたら……。
その時の快感を思い出しそうになってふるりと体が震える。
「シャワー浴びよう……」
本当はゆっくりとお風呂に入りたいけれど、待たせるとまた部屋まで襲来されそうで気が抜けない。
ゆっくり浸かるのは夜にしよう。
(ああ、メルに会いたい)
それから、「部屋の鍵を増やす」と心のリマインダーにしっかりと刻みつけるのも忘れなかった。
長いストレートの黒髪がサラリと流れマリナの顔にかかる。
覗き込んでくる切れ長の瞳はマリナと同じ薄紫で、こうやって隣に座っていても背が高く脚が長い……極めつけは胡散臭そうなこの笑顔……。
「もしかして……お兄様?」
「ピンポーン、大当たりぃ~さすが我が妹マリナ!!久しぶりっ☆」
(「久しぶりっ☆」じゃないのよ、何年ぶりなの?)
いきなり現れたのは、12歳で予定より一年早く家を出て隣国のアカデミーに留学していた兄だった。
家を出てから本当に今の今まで、たったの一度も帰ってこなかったのだ。
いくら「便りの無いのは良い便り」と言えど、「本当にお兄様は生きてるの?」と何度心配した事か。
実に、こうして顔を見るのは……何と6年ぶりになる。
「あんなに可愛かったマリナは美人になったな~。まあオレの妹なんだから当然なんだけど」
「ちょ、ちょっとヤメてよ!」
せっかく昨日ゲネルに綺麗にしてもらった髪がぐしゃぐしゃになってしまう。
家を出た時は、自分より少し大きかったぐらいの身長も随分伸び、少年っぽかった丸みを帯びた頬もすっきりシャープになって、すっかり大人の男性……って、その笑顔だけは昔のままのようだ。
「お兄様までなんでアカデミーに?」
「いやー超優秀なオレは飛び級で卒業出来たんだけどさ、驚かそうと屋敷に戻ったらお前もマルセルもアカデミー入ったって聞いてさあ……来ちゃった☆」
今まで何年も音沙汰なしだったのに何も言わずに帰って来て、妹弟を追ってここまで来るって、どんだけ勝手なのか。
つくづく他人のことは考えない人だ。
「『来ちゃった☆』って……」
「えーマリナに会いたくて飛んできたのに……喜んでくれないんだ……」
「そんなことないわよ。だからってアカデミーにまで来なくったって」
「だって、屋敷で待ってたってマリナは戻ってこないし寂しくて……」
いつもの胡散臭い笑顔を引っ込めて、悲しそうに眉を寄せるお兄様。
そうよね、ずっと離れて隣国にいたんだもん。
6年見ない間に身体は大きく大人になったが、マリナが寂しかったように兄もきっと寂しかったのだろう。
そう絆されてしまう自分は甘いのだろうか、とマリナは諦めの眼差しで大きくなった兄を見た。
「『寂しい』っていくつなんですかアナタ。そんな大きい形して」
あ、兄に突き飛ばされて吹っ飛んでいたゲネルが復活した。
この二人、なぜか昔から相性が悪いというか、顔を合わすと言い合いやら取っ組み合いを始める。
年はゲネルのほうが一つ上なのに、主従関係というかゲネルが一方的にお兄様にヤラれてるっぽいけど。
6年経ってもこれは変わらないのだから、そこは成長してないのかもしれない。お互いに。
「ああ、お前いたの。もういいよ、マリナの面倒はオレが見るから」
「そんなの承服できるわけないでしょう。そもそもここは男子禁制ですよ」
「いいじゃん、兄妹だし。ってか、じゃあお前なに?オレがダメなら当然お前もダメだろ」
「ちょっと……お兄様もゲネルも……」
ヒートアップする舌戦に待ったをかけるも、どちらもマリナの話なんて聞いちゃくれない。
ああ、相変わらずああ言えばこう言う展開。
ホント、なんでこんなに仲悪いんだろう。
「私はいいんですよ、教師なんだから」
「はんっ、ヘタクソな言い訳だな」
「お兄様、ゲネルが先生っていうのは本当らしいですよ」
「…………マジか……お前、どんな手使ったんだよ」
目を見開いてマリナとゲネルを交互に凝視するお兄様と、ドヤ顔のゲネル。
こんな顔をするお兄様は珍しい。
「そう言うわけで、『教師として』いくら兄妹と言えど同室は許可できません。早々に退室願えますか」
「お前……」
「生徒の父兄として、面会するなら正当な手続きをとってどうぞ。保護者ならアカデミーの教師の言うことは聞いていただかないと、ねえ?」
いつもなんだかんだと言い負かされてるゲネルが珍しく押している。
完全に外野となり二人のやり取りを眺めていると、部屋のドアがまたバタンと開く。
「なにやってるの、姉さんの部屋で!」
はあはあと息を切らせて飛び込んできたのはマルセルだ。
「マルセル!どうしたの」
「姉さんとゲネルが通るのが見えて……そしたら兄さんも……」
マリナの部屋は寮の中でも広めの最上階、しかも奥の方にあって寮の入り口からはなかなかの距離だ。
この階層には特別なキーでエレベーターを使わないと上ってこれない。
マルセルが女子寮のキーを持ってるわけもなく、エレベーターが使えないと外階段を上がることになる。
それを全速力で走ってきたならなかなかの運動量となるに違いない。
ぽたぽたと汗を垂らすマルセルをソファに座らせ、タオルを持ってきて拭いてあげる。
開いた首元から見える汗を拭い、くすぐったそうにされるがままのマルセルが可愛い。
こんなに汗をかいてもいい匂いのする弟はいつだって可愛いのだが。
「もう一度聞くけど、なんで二人が姉さんの部屋にいるの?」
兄とゲネルの仲が悪いのはもともとだから仕方ないとして、マルセルに頭が上がらないこの二人もなかなかに可笑しい。
どうなってるんだろう、この3人の力関係は。
「ゲネルはアカデミー卒業して屋敷で執事見習いするんじゃなかったの?」
「それは……お嬢らが今年からアカデミー入るって言うから……」
「兄さんも、折角飛び級で卒業して戻ってくるって言ってたのに、なんでここにいるの?」
「屋敷に帰ったらマリナもお前もいないからさあ……」
はああ……と額に手を当てて大仰に溜息を吐くマルセル。
なんだかこの中で一番しっかりした年上に見えるのは気のせいだろうか。
「とにかく、ソレ持ってるからって姉さんの部屋は出入り自由じゃないから。ちゃんと許可は取って、節度も守って」
「「はい……」」
マルセルに叱られてしゅんとする兄とゲネルがちょっとだけ可愛くて可哀想だ。
(って、え?さらっと聞き流しそうになったけど、わたしが許可すればこれからもこの二人はやってくるってこと?)
いや、それは兄とゲネルだからいいとして、そもそも「男子禁制」のこの寮のシステムはどうなってるのか。
「ああ、それならコレ」
マルセルが見せた左手小指には、小さな黒いオニキスが嵌った細い金のリングがあった。
「これね、視認撹乱魔道具なんだよ。これでシステムと大雑把な人目は素通りってわけ」
「へ、へえー」
(便利なものがあるんだね……って法に触れたりしない……よね?)
「なに言ってんだマリナ、ウチじゃ必須道具じゃねーか。オレも持ってるし、コイツも当然」
「……持ってますよ」
兄もゲネルも当然のように見せてきた指にも、マルセルと同じ金のリングが嵌っている。
さっきマルセルが言った「ソレ」ってこれか!
へ、へえー……え?お兄様、さも当然とばかりに言いましたけど、そんなの知りませんが!?
「姉さんもしてるでしょ、似たようなの」
「でもこれは……」
左手の小指に嵌っている、小さな紫水晶がいくつか並んだ細い金のリング。
普段は手袋の下に隠れて見えない『下僕化』の能力を調整する魔道具。
「確りとした目視や気配探られたら隠せねえけど、システムや衆人の誤魔化しぐらいは余裕だな」
「そ、それって犯罪では……」
「今更なんだよ、ウチ魔お……」
「お兄様、何を言ってるのかしら???」
ウチの事情を何も知らないマルセルの前で何言い出すのか!
まさかとは思うが、ウチが「魔王」だなんて言おうとしてないわよね!?と、慌ててマリナは兄の口を手のひらで塞ぐ。
「大丈夫ですよ、お嬢。これは金を出せば買える『商品』ですので合法です」
と言いながら、とんでもなく高いですけどね、と付け加えるゲネル。
「そうだよ姉さん。嫌ならシステムを改修すればいいんだから」
マルセルがにっこりと微笑みながらそう言うんだから、大丈夫なんだろうと一安心する。
ん?マルセルも知ってる?
ちなみに、システムの開発もオージェ家でしてるらしい。
(これって『盾』と『矛』なんじゃ……)
マリナ如きが事業に口を出せるはずもないので、気付かなかったことにして黙っておく。
それにしても、こんなものを合法に……あくまでも合法に、開発してるオージェ家って、もしかしてスゴい?
「とりあえず、お腹すいたから食堂行こうよ」
はああ……と大きく溜息を吐いたマルセルが、お腹を押さえてそう言った。
そうだわ、成長期のマルセルのお腹を空かせる訳にはいかない!
マリナは、可愛い弟を立派な王宮騎士にさせるべく十分な栄養を与えねば!と意気込む。
「そうね、お兄様もゲネルも、それでいいでしょう?」
食堂なら一緒にテーブルで食事を摂ることができる。
ゲネルやマルセルはいざ知らず、兄も父兄だからギリOKだろう。
この組み合わせをどう思われるかは知らないが。
「じゃあ、わたしは着替えるからみんな出て行って」
「お嬢、着替えなら私が手伝……」
「結構です!」
最後まで渋るゲネルともども3人を部屋から追い出し、バタンと扉を閉める。
遠ざかる足音が聞こえなくなったことを確認して、マリナは一旦ソファに座り込む。
なんでどうしてこうなった?
今日一日が目まぐるしすぎて思考が追いつかない。
ゲネルが昨晩突然現れたのに驚いた。
これは一晩経って落ち着いたのでいいとして、6年ぶりに兄が現れた。
まあ、理由はアレだけど、身内だしこれは別にいいだろう。
問題は……会長にシルシを知られた……。
ゲネルがいてくれて助かった。
あのままシルシを弄られてたら……。
その時の快感を思い出しそうになってふるりと体が震える。
「シャワー浴びよう……」
本当はゆっくりとお風呂に入りたいけれど、待たせるとまた部屋まで襲来されそうで気が抜けない。
ゆっくり浸かるのは夜にしよう。
(ああ、メルに会いたい)
それから、「部屋の鍵を増やす」と心のリマインダーにしっかりと刻みつけるのも忘れなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のない、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる