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#2:邂逅~それぞれの思い
#2-1.「はじめて」がいっぱいでいっぱいいっぱい
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あれは、マルセルがオージェ姓になる少し前。
マルセルの両親が亡くなって「正式に」マリナの双子の弟と登録するために手続きが必要だとかで、父に連れられて神殿へと来ていた。
曲がりなりにも「魔王」であるオージェ家にとって魔力が合わないのだろう、白すぎるほどに白い神殿はもっとも忌み嫌う場所。
出来れば避けて通りたいところではあるけれど、どうしても行かねばならないらしい。
マリナには、初めて訪れた白く明るい神殿が、どうしても恐ろしい場所に思えてならなかった。
マルセルは何も感じないらしいので、オージェ家の血がそうなのかもしれない。
それでもマリナは「姉」としてみっともない姿は見せられないと、マルセルの手を引き父に言われた通り中庭のベンチで座って待っていた。
暫く経って漸く慣れてきた頃、じっと待っているのに飽きて庭で飛ぶチョウチョを追いかけて遊んでいたマルセルが、いつの間にかいなくなっていた。
父は神殿の奥へ行ってしまって戻ってこないし、慣れたと言ってもまだ恐怖を感じる白い空間に足が竦む。
「おまえ、こんなところでなにをしてる?」
弟を探してうろつくマリナに、彼女より少し大きい金髪の少年が話しかけてきた。
「おとうとをさがしています」
「ふーん」
「わたしぐらいのしんちょうで、ちゃいろのかみで、みどりのめをした、おとこのこです」
「へえー」
興味なさそうな顔をしつつも物珍しげに見てくる少年に、それでもマリナは身振り手振りでいなくなった弟の説明をする。
「みませんでしたか?」
「さあ?」
その子はマリナの事をじろじろ見てくるけれど話は全く聞いてないみたいで、問いかけに対する返事はすべて適当だった。
「……もういいです」
マリナは少し腹が立って他所を探そうとした。
一生懸命説明した時間が無駄だとばかりに、思いっきり「ふんっ」って言いながら。
「どうしてもと『おねがい』するならきいてやってもいい」
その場を離れたマリナを追いかけてきたその子は、前に回るとそんな事を言ってきた。
小さいくせに生意気で偉そうな態度にますます腹が立って、マリナはお望み通り『おねがい』することにした。
何も知らないクセに、そんな簡単に『おねがい』なんて言っちゃって、後悔すればいいんだと思って。
外に出る時はずっと着けている手袋を外し、その子の両手を取る。
小さいうちはコンタクトはまだ早いとのことで、誤魔化しに掛けていた眼鏡も外す。
そして正面からしっかり目を合わせた。
「わたしの『おねがい』きいて」
「……わかった」
途端、その子は少し顔を赤らめてどこか虚ろな目をして頷いた。
「おとうとをさがして」
目に力を込めて『お願い』すると、さっきまでの態度が嘘のような従順さで、何処かへ行ったと思ったら、今度は別の少年を連れてきた。
「このこがおとうとさがしてるって」
「なんでおれが……」
「めいれいだ」
「わかったよ……」
連れて来られた少年は何処かへ行き、暫くしてどうやったのかマルセルを連れて戻ってきた。
「マルセル!もうしんぱいしたのよ!」
「ごめん、まいごになってた」
こちらの心配を他所に、えへへと笑うマルセルに気が抜ける。
気が付けば、探してくれた少年二人は姿を消していた。
少しばかり態度が悪かったとは言え、ちゃんと探してくれたお礼も言いたかったし、何より使った力を『かいじょ』しなければならない。
「どこいったんだろう」
ややもして、手続きを終えた父が戻ってきてしまった。
やはり父も居心地の悪い神殿からはとっととおさらばしたいのか、両手にマリナ達の手を取りさっさと馬車に乗り込む。
姉なのに、可愛い弟を迷子にしてしまった事を知られてしまったら叱られるだろうか。
何やら後ろから大きな声が聞こえたような気がしたが、それどころではないマリナは気にも留めずマルセルの小さな手を引いて馬車へと乗り込んだ。
あっという間に小さく遠ざかる白く輝く神殿。
マリナは、『お願い』をしてしまったこと、それを『解除』出来ずにいた事を父に言えずにいた。
馬車の窓から見える二度と来たくない場所を見ながら、『お願い』をした男の子はどうなったのだろうと気になった。
「おとうさま、もしわたしが『おねがい』をして、それを『かいじょ』できなかったら、どうなりますか?」
「ん?そうだな……マリナはまだちいさいんだ、そんな『おねがい』すぐにとけるよ」
「そうですか」
「すぐに解ける」という父の言葉に一安心する。
(そうよね、あんなの、わたしがした『お願い』なんて……大丈夫よね)
チョウチョを追いかけて疲れたのか、隣に座っていたマルセルは、いつの間にかマリナに寄りかかって眠ってしまっていた。
可愛い弟の寝顔を見ながら「無事に見つかってよかった」と胸をなでおろし、マリナもいつしか深い眠りに落ちていた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
今日は王都で一泊したら、明日は街での買い物と孤児院への慰問だ。
孤児院は去年以来二度目、街へは初めて。
宿で夕食を食べたら、早く寝て明日に備えなきゃ。
だからと言っては申し訳ないが、『おねがい』をした男の子のことなんて、すっっっっっっかり忘れてしまっていたのは仕方ない……と思う。
マルセルの両親が亡くなって「正式に」マリナの双子の弟と登録するために手続きが必要だとかで、父に連れられて神殿へと来ていた。
曲がりなりにも「魔王」であるオージェ家にとって魔力が合わないのだろう、白すぎるほどに白い神殿はもっとも忌み嫌う場所。
出来れば避けて通りたいところではあるけれど、どうしても行かねばならないらしい。
マリナには、初めて訪れた白く明るい神殿が、どうしても恐ろしい場所に思えてならなかった。
マルセルは何も感じないらしいので、オージェ家の血がそうなのかもしれない。
それでもマリナは「姉」としてみっともない姿は見せられないと、マルセルの手を引き父に言われた通り中庭のベンチで座って待っていた。
暫く経って漸く慣れてきた頃、じっと待っているのに飽きて庭で飛ぶチョウチョを追いかけて遊んでいたマルセルが、いつの間にかいなくなっていた。
父は神殿の奥へ行ってしまって戻ってこないし、慣れたと言ってもまだ恐怖を感じる白い空間に足が竦む。
「おまえ、こんなところでなにをしてる?」
弟を探してうろつくマリナに、彼女より少し大きい金髪の少年が話しかけてきた。
「おとうとをさがしています」
「ふーん」
「わたしぐらいのしんちょうで、ちゃいろのかみで、みどりのめをした、おとこのこです」
「へえー」
興味なさそうな顔をしつつも物珍しげに見てくる少年に、それでもマリナは身振り手振りでいなくなった弟の説明をする。
「みませんでしたか?」
「さあ?」
その子はマリナの事をじろじろ見てくるけれど話は全く聞いてないみたいで、問いかけに対する返事はすべて適当だった。
「……もういいです」
マリナは少し腹が立って他所を探そうとした。
一生懸命説明した時間が無駄だとばかりに、思いっきり「ふんっ」って言いながら。
「どうしてもと『おねがい』するならきいてやってもいい」
その場を離れたマリナを追いかけてきたその子は、前に回るとそんな事を言ってきた。
小さいくせに生意気で偉そうな態度にますます腹が立って、マリナはお望み通り『おねがい』することにした。
何も知らないクセに、そんな簡単に『おねがい』なんて言っちゃって、後悔すればいいんだと思って。
外に出る時はずっと着けている手袋を外し、その子の両手を取る。
小さいうちはコンタクトはまだ早いとのことで、誤魔化しに掛けていた眼鏡も外す。
そして正面からしっかり目を合わせた。
「わたしの『おねがい』きいて」
「……わかった」
途端、その子は少し顔を赤らめてどこか虚ろな目をして頷いた。
「おとうとをさがして」
目に力を込めて『お願い』すると、さっきまでの態度が嘘のような従順さで、何処かへ行ったと思ったら、今度は別の少年を連れてきた。
「このこがおとうとさがしてるって」
「なんでおれが……」
「めいれいだ」
「わかったよ……」
連れて来られた少年は何処かへ行き、暫くしてどうやったのかマルセルを連れて戻ってきた。
「マルセル!もうしんぱいしたのよ!」
「ごめん、まいごになってた」
こちらの心配を他所に、えへへと笑うマルセルに気が抜ける。
気が付けば、探してくれた少年二人は姿を消していた。
少しばかり態度が悪かったとは言え、ちゃんと探してくれたお礼も言いたかったし、何より使った力を『かいじょ』しなければならない。
「どこいったんだろう」
ややもして、手続きを終えた父が戻ってきてしまった。
やはり父も居心地の悪い神殿からはとっととおさらばしたいのか、両手にマリナ達の手を取りさっさと馬車に乗り込む。
姉なのに、可愛い弟を迷子にしてしまった事を知られてしまったら叱られるだろうか。
何やら後ろから大きな声が聞こえたような気がしたが、それどころではないマリナは気にも留めずマルセルの小さな手を引いて馬車へと乗り込んだ。
あっという間に小さく遠ざかる白く輝く神殿。
マリナは、『お願い』をしてしまったこと、それを『解除』出来ずにいた事を父に言えずにいた。
馬車の窓から見える二度と来たくない場所を見ながら、『お願い』をした男の子はどうなったのだろうと気になった。
「おとうさま、もしわたしが『おねがい』をして、それを『かいじょ』できなかったら、どうなりますか?」
「ん?そうだな……マリナはまだちいさいんだ、そんな『おねがい』すぐにとけるよ」
「そうですか」
「すぐに解ける」という父の言葉に一安心する。
(そうよね、あんなの、わたしがした『お願い』なんて……大丈夫よね)
チョウチョを追いかけて疲れたのか、隣に座っていたマルセルは、いつの間にかマリナに寄りかかって眠ってしまっていた。
可愛い弟の寝顔を見ながら「無事に見つかってよかった」と胸をなでおろし、マリナもいつしか深い眠りに落ちていた。
・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・
今日は王都で一泊したら、明日は街での買い物と孤児院への慰問だ。
孤児院は去年以来二度目、街へは初めて。
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