よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました~コマンド「にげる」はどこですか~

サノツキ

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#4:宿泊研修~準備編

#4-余談6③.25+5歳のアラサー(泣)

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 お屋敷に着いてしばらくは、まだ小さいこともあり、厨房の手伝いや年の近いメルに付いて仕事を覚えていきました。
 メルは私より3つ上で、私と同じ孤児院から引き取られたんですって。侍女見習いとしてゆくゆくはお嬢様付きの専属侍女を目指しているらしいです。

「メルすごーい、私もお嬢様付きの侍女になれるかなあ」
「駄目、お嬢様にはボクが付くから。シノは別の仕事探して」
「えー」

 むう……いくら中身が25+5歳のアラサー(泣)だとしても、現状見た目5歳なので逆らえません。
 年齢差を差し引いても、何故かメルは怖いのです。



 お屋敷に来て数日経ったので、改めて自分について考えてみようと思います。

 私は21世紀の日本に住む「備前びぜん志乃風しのぶ」という名前の日本人でした。
 よくある地方から大学進学で上京し、頑張った甲斐あって一流企業の秘書室に配属、社長付きの第二秘書として酷使される毎日を送っていました。
 上司の第一秘書がクソだったんですけど、それはまあ置いておいて。
 24時間対応を求められる秘書の仕事は目の回る忙しさでしたが、「影で支える」という仕事が向いていたのか、寝不足ながらも充実した日々を過ごしていました。

 そんな忙しい中、心の潤いは彼氏……ではなくスマホで遊べる乙女ゲーム。
 残業続きで家に寝に帰るだけの身としては、じっくり遊べる据え置きタイプのものより、手軽に隙間時間に出来るスマホゲームがプレイしやすかったんです。
 その隙間時間さえとれなくて、ログボだけ貰う日が続いていたのですけど……。

(そう言えば、なんてタイトルだっけなあ……あとちょっとでクリアしそうだったんだけど。てか、新キャラ追加のお知らせ来てたのにー)

 地方の弱小貴族出身のヒロインが、ワンコ系同級生やら俺様系生徒会長やら寡黙系副会長やらイケメン揃いのアカデミーに入って無双する王道ゲームだったような……新キャラは臨時教師と新理事就任の王子様と舞台の国の公子殿下だったでしょうか。

(それよりも!!!)

 前世を思い出したから気付きましたけど、この世界って電気もガスもないんですよ。
 だからって、水は場所によっては井戸から汲むから前時代文明かと思ったけど、厨房には水道があって蛇口を捻ればお湯も水も出るのがまあ不思議。
 電気はないけど時間になればひとりでにランプに火が灯る。大広間のシャンデリアの一つ一つにさえ。
 お風呂にはシャワーもジャグジーもあるし、トイレは当然ウォシュレット完備。
 温泉が湧く場所もあるとか。
 なにそれ、日本じゃんww

 ここって何処?海外??とは朧気ながら思ってましたけど、それにしては生活様式から何もかもがおかしいですよね???

「あなたは魔力がないからねー」

 って、侍女長に言われましたけど、そもそも魔力って!?
 もしかして、私ってただの転生じゃなくて異世界転生でもしたの???
 ここって魔法の世界!?
 違う世界から来たから私には魔力がないの???



 なるほど、それならば納得。
 私は、どこかの世界に転生した元日本人25歳OLで、現在は魔力なしの孤児、もとい魔力なしの侍女見習いに毛が生えた程度の5歳ってわけですか。
 ふむふむ、なら私に出来ることは、今の所……………………無いな!

 引き取ってくださったお嬢様のために、少しでも役に立てれば、ぐらい。
 つっても、5歳の幼児に大したことが出来るわけもなく、仕方ないので全力で5歳児として過ごすのみ!
 幸い、お嬢様と同い年でもあるし、遊び相手ぐらいはしてあげられるかなー。
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