よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました～コマンド「にげる」はどこですか～

＃４：宿泊研修～準備編

＃４－余談６⑤．あ、私はヒロインポジじゃありませんから

　かくして私も無事、「ロープレ学院」の門をくぐることになったのですけれど。
　あ、もちろん変装してしっかりモブとして溶け込んでますよ。
　ちゃんとお嬢様方と同じクラスですから、絶対にバレないよう念には念を入れて。

　通りの影からマリネッテお嬢様とマルセイラお坊ちゃまが無事入学式に向かわれたのを見届け、私も集団に紛れて入学式へと向かいます。
　魔力が無いと門さえくぐれないと聞いておりますので、そこはネックレスやら腕輪やらそこかしこに魔石タリスマンを装備して(させられて)万全の体制です。

（まさかこの歳でまた学校に通うようになるとは）

　見た目は同い年の１６歳でも、中身は立派なアラフォーの私。
　生徒会長のご立派な挨拶を聞いたとて「二十歳ハタチ前の若造が」なんて思ってしまいます。

　しかし、見事な金髪ですね。
　自身が白髪なのは見慣れたからいいとして、お嬢様の黒髪も日本人としては珍しいものではありませんが、この世界じゃとんでもなく珍しいお色だそうで。
　お屋敷の人たちも茶色い髪の人が多く、たまに街へ出ると赤い髪や青い髪の人を見かけても、前世で住んでいた街が渋谷という国内屈指の繁華街に近かったこともあり見慣れたものでした。

　だからいっそ、黒髪を脱色して染めたとしてもあそこまで綺麗な金髪にはならないよねーと壇上の生徒会長を見て思います。
　さらさらの金髪を耳の上で切りそろえ、遠目にもわかる蒼い瞳は光を反射して煌めいていらっしゃる。
　なんとも見事な王子様スタイルです。

（なんて乙女ゲームみたいな……って、え？なんて言った？会長の名前、ユーリウス？）

　慌てながらも階段を降りてくる会長をしっかりと目で追い、その容姿を確認しつつ、そっと周りを見渡します。
　そう言えば、アカデミーの制服を着た今朝の坊っちゃん、サラサラの薄茶の髪に新緑を思わせる翠の瞳って、同級生ワンコのマルセイラじゃないですか！？
　そしてさっき壇上で挨拶してた俺様生徒会長のユーリウス……あれ、もしかしてゲネルって新キャラの立ち絵だけ発表されてた臨時教師のキャラに似ているような？



　え？え？えええ？？？
　多分、前世の記憶を取り戻してから一番驚いたような気がします。
　まさか、自分が転生した場所が、前世でプレイしていた乙女ゲームの世界だなんて。
　ふと顔を上げると、ふわふわとした綿菓子のようなピンク色が目の端に映りました。

（あれは……ヒロインちゃん！）

　間違いない、ここは…………あー生まれ変わって随分時間が経ったからタイトル思い出せない！けど、あの乙女ゲームの世界。
　これから私は、あのヒロインちゃんが次々とイケメンたちを攻略していくのを見ることが出来るのでしょうか。
　いやいや、私は陰ながらお嬢様とお坊ちゃまをお支えするのが役目。
　私利私欲でリアル乙女ゲームを楽しもうだなんて、そんなそんな……。

　・‥…‥・◇・‥…‥・◇・‥…‥・

　それから数日経って。

　えっと……ヒロインって、確かあのピンク色のコですよね？
　ウチのお嬢様でじゃないですよね？？？

　入学初日に攻略対象者筆頭のユーリが、同じく攻略対象者のケントとドールを従えてお嬢様を迎えに来たり、ユーゴとお嬢様が揉め事を起こしてユーリに連れて行かれたり、ドールとマシューに連れられて生徒会室に入っていったり……それって丸っきりヒロインポジなのでは？？？
　あ、ヒロインちゃんが悔しそうに物陰からお嬢様を睨んでます……ガクブル。

　どーなってるの！？！？！？

　…………もう少し静かに見守ろうと思います。





　もちろん、お嬢様の健康安全幸福第一ですよ♪(向かってくる敵はサイレントに滅します。サ・滅・は通常運転です)
　あー執事長から「はよ報告せーや」との連絡が入りましたので、これにてｗｗ

　ふふっ、明日からの宿泊研修はイベント盛りだくさんで楽しみなのですよ。



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＜＃４終わり＞