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脅威

閑話 困りました

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~移動要塞内~


 私の名はルリ。

 世界を救う勇者パーティーの聖女-------------存在。

 ある儀式で命を落とし、の持つ技術によって生き返った。

 だが、生き返った当初、私には記憶が無かった。

 いや、という表現が正しいのかもしれない。

 あの元凶、アルダートとかいう人型ゴーレムに寄生していたアルシェーラなる人物が倒されてから、私の記憶が少しずつ鮮明に思い出されて来た。

 恐らく、私を蘇生した際に、何かしらの方法で記憶を奪っていたのだろう。

 彼の力からしても、もう常識外れも良いところな訳なのだから、何が起きても可笑しくはない。

「……………………」

 今、私の手元には、とある端末が握られている。

 彼が言うには、スマホ?

 とかいう、情報記録が詰まった魔道具らしい。

 その魔道具の画面には、要塞のとある区画を示す点滅が光っていた。

 これが意味する事は一つ。

 その場所へと向かえ、という事-------------

 その区画の前まで、差し掛かると、意を決して私は、その部屋へと足を踏み入れた。

『待っていたわよ!』

 室内に入ると、聖戦の元凶たる人物の一人-------------ミハエルさんが、再稼働したばかりのシスターズを引き連れ、待ち構えていた。

 思わず、身構える私に、大丈夫だよ、と優しい笑顔をミハエルさんが向けて来る。

『その様子だと、もう彼は話したみたいだね。

 とりあえず、ついて来てね?』

「……………………」

 私は警戒を緩める事なく、彼女の後を付いて行った。

 彼女の様子からしても、私が記憶を取り戻していた事は、どうやら筒抜けだったようだ。

 恐らく、私が極秘裏に情報を集めていた事さえも-------------

 それを知った上で、彼らは私に何をさせるつもりなのか。

 けれど、ここで大人しく従わなければ、待っているのは-------------死、のみ。

 せめて、エレノア達に少なからず、聖戦に関する情報を送らなければいけない。

 今、私を支えているのは、そんな使命感のみだった。

 だが、ミハエルさんに私が付いて行って、数分が経った時、とんでもないものが、私の前に姿を表した。

「っ!?

 これは…………」

『どう?

 驚いたでしょ?』

 何故か、自慢げに無い胸を張るミハエルさん。

 その後に、続く言葉を聞き、私は驚きを隠せなかった。

『これ、君にあげる事になったから、後は好きに使いなね』

「ええええええっ!?」

 驚きのあまり、飛び上がる私。

 これを私に…………いやいや、これどう見ても、簡単に渡しちゃいけないものでしょ!?

 そう講義したかったが、言う前にいつの間にか、ミハエルさんやシスターズの皆さんが姿を消していた。

 こんなものを頂いて、私にどうしろと言うのかしら…………。

 そう困り果てていた矢先、要塞に非常事態を知らせるアラームが鳴り響いたのだった。
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