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序章/裏切られた勇者は…
8.勇者はかつての仲間と再会しました。でも…
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『ジーくんへ 貴方のギネヴィアより』
文字通り、どこからともなくヒラヒラと降ってきたのは、昔の仲間からの手紙。
ルクと双女王もそれをマジマジと見ている。
ジークが生きている事を知っているのは、ここにいる魔王ルクレッツァ=スルトとエレンシア双女王クローディア・セレスティア、そしてドワーフの国・ダイナストの王女イヴの四人だけ。
細心の注意を払い、四人はジークの存在を隠していたのだが…四人は納得する面もある。
『この稀代の大魔導師が本気になれば自分達の匿いなど、筒抜け』
ギネヴィア=M=エレンシア…どんな系統であろうと、魔術を扱う者で彼女の名前を知らない者はいない。
エレンシアの皇女でありながら、白魔術・黒魔術の深奥を極め、ありとあらゆる『血統魔術』を解析・習得し、次代の魔王候補の一人である大魔導師。
「…まったく、ギネヴィアめ。私達の動きを監視しておったな」
「ギネヴィア様は抜け目ないですからねぇ~」
「まったく、魔王が乱立しているのに、なんで魔王になってないんだか…」
偽物の可能性をジークは考えたが、手紙に施されている封蝋に印璽で押されているのは過去にギネヴィアがジークをイメージして描いたものだ。
「…はぁ~」
ジークは一息吐いて、
「生きてて良かったぁ」
心の底から安堵の言葉を出す…そして、心を引き締める。
生きていたのはともかく、現われたのはこの『手紙』だけ。
もしかしたら…考えたくもないが、現国王であるリュート、妹であるセルフィに追われて、自分に助けを求める手紙かもしれない。
そう、何一つ油断してはならない。
あの時を繰り返さない為に…
「…開けるよ」
ジークは封蠟をゆっくりと外し、中身を取り出す。
そこには…
「魔法陣…って、うわっ!?」
一枚の紙に描かれていた魔法陣が赤く光り出す。
魔法陣が描かれた紙がジークの手を離れて、空中で飛散すると魔法陣が現れ、徐々に地面に降りる。
魔法陣はさらに赤く輝く。
強烈な輝きにジーク達が眼を閉じ、再び眼を開けた時、一人の女がいた。
艶のある美しい黒髪を持つ美女で、魔術師が好んで着用する帽子をかぶっている。
男を魅了する肉付きの言い肢体にぴったりとした黒い毛皮付きの黒いローブ纏い、手には細部まで魔導文字が施された杖を持っている。
そして、全身には持っている者に力を与えるが、見合った実力がないと逆に命を奪われるという諸刃のような雰囲気を発している金銀細工をジャラジャラ付けていた。
ジーク見つめる妖艶な瞳、魅了する唇…
女はジークに柔らかくほほ笑むと、そのまま拝跪する 。
「偉大なる大魔王様に恐れ多くも拝謁いたします」
彼女は己の杖をジークの前に差し出す。
それは、完全に服従を示す証しだった。
「我が名は『ヘラ』…分不相応にも『魔導女帝』の称号を冠しております」
『ヘラ』の体の服が透き通るように消えていく。
「此度、大魔王様に我が力、我が叡智、そして我が全てを献上したくまいりました。どうか…大魔王様の下僕に…」
「突然現れて何やってんのギネヴィア!?」
「あっらぁ、ジーくんたらノリ悪い~♪」
妖艶な雰囲気とは打って変わっておっとりとした表情を見せて、立ち上がる。
たゆんっ
揺れるふたつの果実。
「服着て!服!」
「んもう、相変わらずねぇジーくん♪私はいつでもオッケイなのに~♪ほぉら、」
たゆんたゆん
「美味しいから、い・た・だ・き・ま・す・は♬」
「やめんか、後輩!」
「きゃんっ!」
ルクの後頭部ヘッドバッドにより目に火花が飛ぶ『ヘラ』。
「久しぶりじゃの~、我が軍を焼き尽くしたり、凍てつかせたり、雷撃落としまくった憎たらしい魔女ギネヴィア。てかいつの間に『魔王』になったんじゃ!?」
「あらぁ、魔王ちゃん、久し振り…ん~、今は先輩ちゃんって呼んだほうがいい♪」
「ふん、魔王のひとりになったか…しかも、あの数百年間領主が不在だった『死者の大地』を領地としたのか」
ルクは目をパチクリさせて、
「何もあんな辺鄙な所の領主にならんでも」
「ん~、燃え盛る大地を領地にした先輩ちゃんに言われたくないの~♪」
呆れた顔のルクに柔らかく微笑みながら、ギネヴィアは今度は双女王にニッコリ笑う。
「あらぁ、先輩ちゃんもちんちくりんだけど、女王様達もちんちくりんねぇ~♪そんなんじゃ『おっぱい魔人』のジーくんは靡かないわよ♪」
「なっ!?」
「むぅっ!?」
たゆんと揺れるギネヴィアの乳房に目が鋭くなる二人。
「言っとくがな!これは魂を分けているからで実際はナイスバディーなのだぞ!」
「そうですわ!それにこの姿でも私の美しい肌は健在ですの!」
「ふふん、負け犬の遠吠えねぇ♪」
これ見よがしに寄せて上げるギネヴィア。
「ギ、ギネヴィア…」
「ん?どうしたのジーくん。顔真っ青にして?」
「ま、魔王って…?」
それを聞くとギネヴィアは今度は子供っぽくニンマリと笑って、
「そう♪私、ジーくんのお嫁さんに相応しいように、『魔王』になっちゃいました♬」
勇者はかつての仲間と再会しました。でも…その仲間も魔王になってました。
文字通り、どこからともなくヒラヒラと降ってきたのは、昔の仲間からの手紙。
ルクと双女王もそれをマジマジと見ている。
ジークが生きている事を知っているのは、ここにいる魔王ルクレッツァ=スルトとエレンシア双女王クローディア・セレスティア、そしてドワーフの国・ダイナストの王女イヴの四人だけ。
細心の注意を払い、四人はジークの存在を隠していたのだが…四人は納得する面もある。
『この稀代の大魔導師が本気になれば自分達の匿いなど、筒抜け』
ギネヴィア=M=エレンシア…どんな系統であろうと、魔術を扱う者で彼女の名前を知らない者はいない。
エレンシアの皇女でありながら、白魔術・黒魔術の深奥を極め、ありとあらゆる『血統魔術』を解析・習得し、次代の魔王候補の一人である大魔導師。
「…まったく、ギネヴィアめ。私達の動きを監視しておったな」
「ギネヴィア様は抜け目ないですからねぇ~」
「まったく、魔王が乱立しているのに、なんで魔王になってないんだか…」
偽物の可能性をジークは考えたが、手紙に施されている封蝋に印璽で押されているのは過去にギネヴィアがジークをイメージして描いたものだ。
「…はぁ~」
ジークは一息吐いて、
「生きてて良かったぁ」
心の底から安堵の言葉を出す…そして、心を引き締める。
生きていたのはともかく、現われたのはこの『手紙』だけ。
もしかしたら…考えたくもないが、現国王であるリュート、妹であるセルフィに追われて、自分に助けを求める手紙かもしれない。
そう、何一つ油断してはならない。
あの時を繰り返さない為に…
「…開けるよ」
ジークは封蠟をゆっくりと外し、中身を取り出す。
そこには…
「魔法陣…って、うわっ!?」
一枚の紙に描かれていた魔法陣が赤く光り出す。
魔法陣が描かれた紙がジークの手を離れて、空中で飛散すると魔法陣が現れ、徐々に地面に降りる。
魔法陣はさらに赤く輝く。
強烈な輝きにジーク達が眼を閉じ、再び眼を開けた時、一人の女がいた。
艶のある美しい黒髪を持つ美女で、魔術師が好んで着用する帽子をかぶっている。
男を魅了する肉付きの言い肢体にぴったりとした黒い毛皮付きの黒いローブ纏い、手には細部まで魔導文字が施された杖を持っている。
そして、全身には持っている者に力を与えるが、見合った実力がないと逆に命を奪われるという諸刃のような雰囲気を発している金銀細工をジャラジャラ付けていた。
ジーク見つめる妖艶な瞳、魅了する唇…
女はジークに柔らかくほほ笑むと、そのまま拝跪する 。
「偉大なる大魔王様に恐れ多くも拝謁いたします」
彼女は己の杖をジークの前に差し出す。
それは、完全に服従を示す証しだった。
「我が名は『ヘラ』…分不相応にも『魔導女帝』の称号を冠しております」
『ヘラ』の体の服が透き通るように消えていく。
「此度、大魔王様に我が力、我が叡智、そして我が全てを献上したくまいりました。どうか…大魔王様の下僕に…」
「突然現れて何やってんのギネヴィア!?」
「あっらぁ、ジーくんたらノリ悪い~♪」
妖艶な雰囲気とは打って変わっておっとりとした表情を見せて、立ち上がる。
たゆんっ
揺れるふたつの果実。
「服着て!服!」
「んもう、相変わらずねぇジーくん♪私はいつでもオッケイなのに~♪ほぉら、」
たゆんたゆん
「美味しいから、い・た・だ・き・ま・す・は♬」
「やめんか、後輩!」
「きゃんっ!」
ルクの後頭部ヘッドバッドにより目に火花が飛ぶ『ヘラ』。
「久しぶりじゃの~、我が軍を焼き尽くしたり、凍てつかせたり、雷撃落としまくった憎たらしい魔女ギネヴィア。てかいつの間に『魔王』になったんじゃ!?」
「あらぁ、魔王ちゃん、久し振り…ん~、今は先輩ちゃんって呼んだほうがいい♪」
「ふん、魔王のひとりになったか…しかも、あの数百年間領主が不在だった『死者の大地』を領地としたのか」
ルクは目をパチクリさせて、
「何もあんな辺鄙な所の領主にならんでも」
「ん~、燃え盛る大地を領地にした先輩ちゃんに言われたくないの~♪」
呆れた顔のルクに柔らかく微笑みながら、ギネヴィアは今度は双女王にニッコリ笑う。
「あらぁ、先輩ちゃんもちんちくりんだけど、女王様達もちんちくりんねぇ~♪そんなんじゃ『おっぱい魔人』のジーくんは靡かないわよ♪」
「なっ!?」
「むぅっ!?」
たゆんと揺れるギネヴィアの乳房に目が鋭くなる二人。
「言っとくがな!これは魂を分けているからで実際はナイスバディーなのだぞ!」
「そうですわ!それにこの姿でも私の美しい肌は健在ですの!」
「ふふん、負け犬の遠吠えねぇ♪」
これ見よがしに寄せて上げるギネヴィア。
「ギ、ギネヴィア…」
「ん?どうしたのジーくん。顔真っ青にして?」
「ま、魔王って…?」
それを聞くとギネヴィアは今度は子供っぽくニンマリと笑って、
「そう♪私、ジーくんのお嫁さんに相応しいように、『魔王』になっちゃいました♬」
勇者はかつての仲間と再会しました。でも…その仲間も魔王になってました。
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