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序章/裏切られた勇者は…
2.勇者は一命を取り留めました。でも…
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「みんなー、ごはんだよー」
ジークがフライパンを叩きながら皆を呼ぶ。
「おっ、今日の晩飯は何だ」
「いい匂いだな」
「腹減らした甲斐があるぜ」
スパーリングしてたグラムとエリスが真っ先に来る。
「今日はリッカが仕留めた猪で猪鍋と猪肉ステーキだよー」
「お肉たくさんありますからね」
僕と一緒に食事の準備をするリッカ。
「ジーくん~、ごはん~」
戦闘以外、空飛ぶ絨毯で魔術書を読んでいるギネヴィア。
「姉上!またぐうたらして!我ら皇族が率先して働かぬと民は動きませぬぞ!」
「いいも~ん、ジーくんに養ってもらうも~ん」
危なげにお茶の入ったボトルとカップをお盆で運ぶセルフィ。
「流石でございますセルフィリス様!しかし、ここはこのリュートにお任せを」
リュートはどこからか高級チックな座布団を2組用意して
「ささ、姫様方どうぞこちらに。ところでジーク。姫様方や皆に何かあってはいけない。ここは私が御毒味しよう。その一番大きな肉なんて怪しくないか?」
意外と食い意地の汚いリュートの発言でグラムとの取り合いが始まり、賑やかな旅の夕食は始まる。
そう、本当に楽しかった…
★
「………」
涙が出るくらい楽しい夢から覚めると、ジークは清潔な部屋にいた。
部屋の調度品は簡素だが、掃除が行き届いている。
自分が寝ているベットもフカフカでシーツも真っ白だ。
窓からカーテン越しに刺す光も心地よい。
そして、目覚めた自分は素っ裸だった。
何が起きているのか解からず取りあえず右手を額に当てると
「つめた…」
人間の肌とは違う感触を感じた右手を見ると、金と銀の輝く土台に美しい花の細飾で彩られた金属製だった。
「………」
試しに動かすと、感覚が妙だが問題無く稼働し、複雑な動きにも不自由がない。
強いて問題を上げろというなら不思議な感覚と指鳴らしをすると『カキンッ』と金属音が鳴るくらいだ。
「ふむ…」
ジークは首を傾げて考えるが…
「なんじゃこりゃ?」
ジークは目覚めたばかりの頭を動かし始める。
(確か僕は、魔王を倒した後、セルフィに刺されて…)
そこで『ずーん』と泣きたくなるくらい気持ちが沈み、地面に膝を付き、両手を地面に付けて瞳を潤ませるが、なんとか思いだす努力をし続ける。
(裏切られて、グスッ…その後、『こりゃだめだ』と思って、好き勝手言ったんだっけ…よく思い出せないな。叩き落とされたのは憶えてる。そういえば…)
ジークは自分の胸板を見る。
見ると『蟲毒のナイフ』に刺された個所である左胸と腹部に大きな傷痕があり、また胸の中心部には緑色の綺麗な宝石のようなものが自分の身体に埋め込まれている。
触っていると、ちょっとぷにぷにしているので、鉱石では無いみたいだ。
「うーん…」
いったい自分に何が起こったのか?とジークは身体を動かしながら考える。
『蟲毒のナイフ』を胸に刺された後、信じられないくらいの激痛でのたうちまわりたいのに身体が動かないという地獄のような苦しみの中、右腕に『ザクッ、サクッ、ブチッ』っといった感じの感触があったのを思い出す。
(あれは右腕を斬り落とされた感触だったのか?)
金属の右腕と生身の左腕をブンブン回す。
異常無し。
可動部もしっかり動いている。
(確かリッカが解体ナイフ持ってたような…でもなんで斬り落としたんだ?)
足を曲げ、伸ばし、振り子のように振る。
異常無し。
(それに僕は魔王城にいたはず…誰がこんなところに…)
最後に体幹や全身の状態を確認する為に、腰を振る。
ある部分が∞を描くが、これは大事な身体の確認なので振り続ける。
「うん…わからないことだらけ…」
ガチャ…
部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。
入ってきたのは妖精のような二人の女で互いに目が合う。
しばらく沈黙の均衡を保っていたが、
「おはよう」
「まあっ…」
「ひぃっ!」
人間をデフォルメしたような妙に可愛らしい2頭身の2人は顔を真っ赤にしている。
(しかしこの黄金のような髪と雪のような肌の妖精と絹のような黒髪と褐色の艶かしい肌は何処か見憶えが…)
「いつまで…」
「ん?」
「いつまで振っておるんじゃぁ!?このぽややんがぁ!」
「はぎゅっ」
話しながらずっと振っていた下半身…股間から走る強烈な痛みが一瞬でジークの意識を奪う。
薄れゆく意識の中、
「穢れてしもうた~!」
「お姉様も困るのよ~」
2人の騒ぎ声だけが響いていた。
☆
「ま、まさかセレスティア様とクローディア様とは…」
意識を取り戻して用意された服を着たジークは2人の正体を聞き、庶民根性丸出しで正座する。
「ジーク様…やっと起きてくれましたの」
「まったく…起きぬけから相も変わらずぽややんじゃの、ぽややん」
「しかし、どうしたんですかその御姿?」
おっとりとしたセレスティアとプリプリ怒ってるクローディアの以前見たムチプリボディからは想像できない2頭身姿を見てジークは質問する。
「ふん、これは誇り高きエルフの108魔法一つ!『分け身の法』!」
「自分の生命力と魔力を切り離して分身を創るんですの。私達の本体はエレンシアで政務に励んでますわ」
「ちゃんと意識は本体と伝わっているから問題ないぞ」
「なるほど、便利ですね」
ふたりのセクシーダイナマイトを思い出しながら真逆の可愛らしい姿も『これはこれで』と肯く。
「ところで…」
ジークは様々な事を思い浮かべながら、
「お二人が僕を助けてくれたんですか?」
取りあえず一番確認したい事を尋ねる。
「むっ、まあ、な」
「『命を助けた』のと『黄金の腕』、それにこの『家』はそうですわね」
妙に歯切れの悪い言葉が返ってくる。
「ただ、ここに連れてきてくれたのは…」
「私よ、勇者ちゃん」
再び扉が開き、同じような2頭身の女が入ってきた。
「あっ…」
ドヤ顔で小さいくせに踏ん反り返っている黒いドレスに鮮やかな朱色の長髪とそこからは得ている妙に立派な角…
「…『魔王』?」
「ふふん、流石は勇者ちゃん。一度見た豊満ボディは忘れないっていう固有スキルは健在ね」
(2頭身のつるぺたで何を抜かすか寸胴ボディ…)
と、元は細身だが出る所は出ていた身体の持ち主をみながらジークはグッと堪えて、
「どうして生きている?」
「ふふん、これぞ魔王の秘義『魂の分裂』!魂を分裂させ…」
がしっ…!
「…ど、どうしたのかしら勇者ちゃん」
説明の最中に角を掴まれて、持ち上げられる魔王はあたふたしながら勇者の顔を見る。
…まさに『鬼』の顔だった。
「僕の『涙』を返せ」
魔王は汗をダクダク掻きながら明後日の方を向く。
「実は隠れ生きてのんびり勇者様の転落人生を肴に笑い転げ、最後の寸前に優しく声をかけて闇堕ちさせようかと思ったのに、いきなりクライマックスってあんた。いや~、人間ってパネェすわ」
一片の偽りなき本心を聞き、今度は逆さ吊りにされて、もがく魔王。
「…どうやって僕は助かったんですか?」
「やめろー、陵辱魔ー、ぶっとばすぞー」
逆さ吊りであたふたしている魔王を無視して、
「…ジーク様がエレンシアを旅立つ時に渡した御守ですの」
「あれはエルフの最秘宝の一つ、『ユグドラシルの種』だ」
ユグドラシルの種…世界に数は少ないが現存する『蘇生アイテム』の一つ。
持ち主の『死の気配』を察知して、発芽する。
一瞬である程度育ち、そのまま自身に取り込み、蘇生させる。
「お主、そのチンチクリン魔王に聞いた所によると、伝説級武具の『蟲毒のナイフ』で刺されたのじゃろ。突き刺せば大地すら穢してゆく毒…少し時間はかかったが、瑣末な時間だ」
「それでも、時を一日千秋の想いで待ちました…助かってよかったですの」
双子のエルフは喜びに満ちた顔をジークに向ける。
(ああ、ふたりとも自分の事を本当に心配してくれたんだな)
少し心が温かくなるジーク。
「セレスティア様、クローディア様…本当にありがとうございました」
心からの感謝にふたりは頬を染めて、
「ジーク様のご恩に比べれば大した事ないですのよ。私達、双女王の御世の間、エルフの寵愛はジーク様のもとに」
「か、勘違いするなよ。まあ、元老院の長老共がはしゃいでいるだけとはいえ、ほんの砂粒ほど可能性だが私達の夫となる男だからな」
「ところで、僕はどれぐらい寝てたんですか?」
『………』
「………」
沈黙。
「ゆ、ゆーきゅーのたいむをびゅちほーにいきる、われら、えるふにとっては、もう、まっはですの」
「た、卵から孵ったサラマンドラガンべロが火を吐けるようになるくらいだ」
「あのう、僕一応は人間族なんですけど」
『………』
「………」
再び沈黙。
「ジークさま、そろそろおなかがぺこちゃんじゃありませんの」
「そ、そうだ。サラマンドラガンべロの一番美味いトコの尻尾ステーキがあるぞ」
必死で話題を逸らそうとするふたりだが…
「15年よ」
「えっ?」
逆さ吊りの魔王の言葉に、ふたりの女王が両手を両頬に当て、口を開けて、丸く落ちくぼんだ目になった。(イメージ:ムンクの叫び)
「あなたは15年眠りこけて、その間にあなた達、勇者一向の『絵本』もできた。もっとも…」
思考が停止しかかっている勇者にトドメとばかりに、
「もっとも、あなたは『大魔王』に転職してるけどね」
ジークはそのまま力をなくし、魔王を落とした。
「いたっ!」
落下した魔王は頭を『ゴチンっ』と打ち、悶絶する。
女王達は大慌てで騒ぎだした。
――勇者は一命を取り留めました。でも…15年の月日が経ち、『大魔王』になりました。
ジークがフライパンを叩きながら皆を呼ぶ。
「おっ、今日の晩飯は何だ」
「いい匂いだな」
「腹減らした甲斐があるぜ」
スパーリングしてたグラムとエリスが真っ先に来る。
「今日はリッカが仕留めた猪で猪鍋と猪肉ステーキだよー」
「お肉たくさんありますからね」
僕と一緒に食事の準備をするリッカ。
「ジーくん~、ごはん~」
戦闘以外、空飛ぶ絨毯で魔術書を読んでいるギネヴィア。
「姉上!またぐうたらして!我ら皇族が率先して働かぬと民は動きませぬぞ!」
「いいも~ん、ジーくんに養ってもらうも~ん」
危なげにお茶の入ったボトルとカップをお盆で運ぶセルフィ。
「流石でございますセルフィリス様!しかし、ここはこのリュートにお任せを」
リュートはどこからか高級チックな座布団を2組用意して
「ささ、姫様方どうぞこちらに。ところでジーク。姫様方や皆に何かあってはいけない。ここは私が御毒味しよう。その一番大きな肉なんて怪しくないか?」
意外と食い意地の汚いリュートの発言でグラムとの取り合いが始まり、賑やかな旅の夕食は始まる。
そう、本当に楽しかった…
★
「………」
涙が出るくらい楽しい夢から覚めると、ジークは清潔な部屋にいた。
部屋の調度品は簡素だが、掃除が行き届いている。
自分が寝ているベットもフカフカでシーツも真っ白だ。
窓からカーテン越しに刺す光も心地よい。
そして、目覚めた自分は素っ裸だった。
何が起きているのか解からず取りあえず右手を額に当てると
「つめた…」
人間の肌とは違う感触を感じた右手を見ると、金と銀の輝く土台に美しい花の細飾で彩られた金属製だった。
「………」
試しに動かすと、感覚が妙だが問題無く稼働し、複雑な動きにも不自由がない。
強いて問題を上げろというなら不思議な感覚と指鳴らしをすると『カキンッ』と金属音が鳴るくらいだ。
「ふむ…」
ジークは首を傾げて考えるが…
「なんじゃこりゃ?」
ジークは目覚めたばかりの頭を動かし始める。
(確か僕は、魔王を倒した後、セルフィに刺されて…)
そこで『ずーん』と泣きたくなるくらい気持ちが沈み、地面に膝を付き、両手を地面に付けて瞳を潤ませるが、なんとか思いだす努力をし続ける。
(裏切られて、グスッ…その後、『こりゃだめだ』と思って、好き勝手言ったんだっけ…よく思い出せないな。叩き落とされたのは憶えてる。そういえば…)
ジークは自分の胸板を見る。
見ると『蟲毒のナイフ』に刺された個所である左胸と腹部に大きな傷痕があり、また胸の中心部には緑色の綺麗な宝石のようなものが自分の身体に埋め込まれている。
触っていると、ちょっとぷにぷにしているので、鉱石では無いみたいだ。
「うーん…」
いったい自分に何が起こったのか?とジークは身体を動かしながら考える。
『蟲毒のナイフ』を胸に刺された後、信じられないくらいの激痛でのたうちまわりたいのに身体が動かないという地獄のような苦しみの中、右腕に『ザクッ、サクッ、ブチッ』っといった感じの感触があったのを思い出す。
(あれは右腕を斬り落とされた感触だったのか?)
金属の右腕と生身の左腕をブンブン回す。
異常無し。
可動部もしっかり動いている。
(確かリッカが解体ナイフ持ってたような…でもなんで斬り落としたんだ?)
足を曲げ、伸ばし、振り子のように振る。
異常無し。
(それに僕は魔王城にいたはず…誰がこんなところに…)
最後に体幹や全身の状態を確認する為に、腰を振る。
ある部分が∞を描くが、これは大事な身体の確認なので振り続ける。
「うん…わからないことだらけ…」
ガチャ…
部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。
入ってきたのは妖精のような二人の女で互いに目が合う。
しばらく沈黙の均衡を保っていたが、
「おはよう」
「まあっ…」
「ひぃっ!」
人間をデフォルメしたような妙に可愛らしい2頭身の2人は顔を真っ赤にしている。
(しかしこの黄金のような髪と雪のような肌の妖精と絹のような黒髪と褐色の艶かしい肌は何処か見憶えが…)
「いつまで…」
「ん?」
「いつまで振っておるんじゃぁ!?このぽややんがぁ!」
「はぎゅっ」
話しながらずっと振っていた下半身…股間から走る強烈な痛みが一瞬でジークの意識を奪う。
薄れゆく意識の中、
「穢れてしもうた~!」
「お姉様も困るのよ~」
2人の騒ぎ声だけが響いていた。
☆
「ま、まさかセレスティア様とクローディア様とは…」
意識を取り戻して用意された服を着たジークは2人の正体を聞き、庶民根性丸出しで正座する。
「ジーク様…やっと起きてくれましたの」
「まったく…起きぬけから相も変わらずぽややんじゃの、ぽややん」
「しかし、どうしたんですかその御姿?」
おっとりとしたセレスティアとプリプリ怒ってるクローディアの以前見たムチプリボディからは想像できない2頭身姿を見てジークは質問する。
「ふん、これは誇り高きエルフの108魔法一つ!『分け身の法』!」
「自分の生命力と魔力を切り離して分身を創るんですの。私達の本体はエレンシアで政務に励んでますわ」
「ちゃんと意識は本体と伝わっているから問題ないぞ」
「なるほど、便利ですね」
ふたりのセクシーダイナマイトを思い出しながら真逆の可愛らしい姿も『これはこれで』と肯く。
「ところで…」
ジークは様々な事を思い浮かべながら、
「お二人が僕を助けてくれたんですか?」
取りあえず一番確認したい事を尋ねる。
「むっ、まあ、な」
「『命を助けた』のと『黄金の腕』、それにこの『家』はそうですわね」
妙に歯切れの悪い言葉が返ってくる。
「ただ、ここに連れてきてくれたのは…」
「私よ、勇者ちゃん」
再び扉が開き、同じような2頭身の女が入ってきた。
「あっ…」
ドヤ顔で小さいくせに踏ん反り返っている黒いドレスに鮮やかな朱色の長髪とそこからは得ている妙に立派な角…
「…『魔王』?」
「ふふん、流石は勇者ちゃん。一度見た豊満ボディは忘れないっていう固有スキルは健在ね」
(2頭身のつるぺたで何を抜かすか寸胴ボディ…)
と、元は細身だが出る所は出ていた身体の持ち主をみながらジークはグッと堪えて、
「どうして生きている?」
「ふふん、これぞ魔王の秘義『魂の分裂』!魂を分裂させ…」
がしっ…!
「…ど、どうしたのかしら勇者ちゃん」
説明の最中に角を掴まれて、持ち上げられる魔王はあたふたしながら勇者の顔を見る。
…まさに『鬼』の顔だった。
「僕の『涙』を返せ」
魔王は汗をダクダク掻きながら明後日の方を向く。
「実は隠れ生きてのんびり勇者様の転落人生を肴に笑い転げ、最後の寸前に優しく声をかけて闇堕ちさせようかと思ったのに、いきなりクライマックスってあんた。いや~、人間ってパネェすわ」
一片の偽りなき本心を聞き、今度は逆さ吊りにされて、もがく魔王。
「…どうやって僕は助かったんですか?」
「やめろー、陵辱魔ー、ぶっとばすぞー」
逆さ吊りであたふたしている魔王を無視して、
「…ジーク様がエレンシアを旅立つ時に渡した御守ですの」
「あれはエルフの最秘宝の一つ、『ユグドラシルの種』だ」
ユグドラシルの種…世界に数は少ないが現存する『蘇生アイテム』の一つ。
持ち主の『死の気配』を察知して、発芽する。
一瞬である程度育ち、そのまま自身に取り込み、蘇生させる。
「お主、そのチンチクリン魔王に聞いた所によると、伝説級武具の『蟲毒のナイフ』で刺されたのじゃろ。突き刺せば大地すら穢してゆく毒…少し時間はかかったが、瑣末な時間だ」
「それでも、時を一日千秋の想いで待ちました…助かってよかったですの」
双子のエルフは喜びに満ちた顔をジークに向ける。
(ああ、ふたりとも自分の事を本当に心配してくれたんだな)
少し心が温かくなるジーク。
「セレスティア様、クローディア様…本当にありがとうございました」
心からの感謝にふたりは頬を染めて、
「ジーク様のご恩に比べれば大した事ないですのよ。私達、双女王の御世の間、エルフの寵愛はジーク様のもとに」
「か、勘違いするなよ。まあ、元老院の長老共がはしゃいでいるだけとはいえ、ほんの砂粒ほど可能性だが私達の夫となる男だからな」
「ところで、僕はどれぐらい寝てたんですか?」
『………』
「………」
沈黙。
「ゆ、ゆーきゅーのたいむをびゅちほーにいきる、われら、えるふにとっては、もう、まっはですの」
「た、卵から孵ったサラマンドラガンべロが火を吐けるようになるくらいだ」
「あのう、僕一応は人間族なんですけど」
『………』
「………」
再び沈黙。
「ジークさま、そろそろおなかがぺこちゃんじゃありませんの」
「そ、そうだ。サラマンドラガンべロの一番美味いトコの尻尾ステーキがあるぞ」
必死で話題を逸らそうとするふたりだが…
「15年よ」
「えっ?」
逆さ吊りの魔王の言葉に、ふたりの女王が両手を両頬に当て、口を開けて、丸く落ちくぼんだ目になった。(イメージ:ムンクの叫び)
「あなたは15年眠りこけて、その間にあなた達、勇者一向の『絵本』もできた。もっとも…」
思考が停止しかかっている勇者にトドメとばかりに、
「もっとも、あなたは『大魔王』に転職してるけどね」
ジークはそのまま力をなくし、魔王を落とした。
「いたっ!」
落下した魔王は頭を『ゴチンっ』と打ち、悶絶する。
女王達は大慌てで騒ぎだした。
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