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序章/裏切られた勇者は…
3.勇者は復讐をそそのかされました。でも…
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魔王の脅威が襲い、人々の平和を脅かしていたある日、エクセリア皇国から正義の女神・アテネス様の加護を受けた六人の勇者と一人の従者が旅立ちました。
皇国の白百合・姫騎士セルフィリス。
皇国の黒薔薇・魔術姫ギネヴィア
白銀の聖騎士・聖剣の勇者リュート。
鋼の拳を持つ格闘王・拳王グラム。
美しき女傭兵・戦乙女エルス。
神技の弓手・弓聖リッカ。
そして…従者・ジークが共に旅立ちました。
六勇者と従者は共に苦難を乗り越え、魔王城に辿り着き、魔王を打倒しました。
しかし、魔王を倒した直後、六勇者に更なる魔の手が!
なんと従者が六勇者を恐ろしい闇の力で襲いかかったのです。
六勇者は驚愕しました。
自分達に優しかった従者・ジークの正体は魔王すらも支配する、恐怖と絶望の象徴である、『大魔王』だったのです。
『大魔王』は今までに何度も六勇者達の道中をばれないように困難に陥れ、魔王との戦いで疲弊した六勇者にトドメを刺そうという卑劣な手段を用いました。
魔王との戦いで疲弊した六勇者に容赦無く暴虐の限りを尽くす『大魔王』。
女神アテネスの加護を受けた聖ナイフが輝き、『大魔王』を弱らせ、勇者リュートの聖剣の一刀が『大魔王』を倒しました。
こうして世界の平和を取り戻した六勇者はそれぞれの故郷に帰り、幸せに暮らしました。
☆
「幸せに暮らしました♪」
「………」
神妙にして微妙な顔をしながら無言で『絵本:六勇者の魔王退治』を読んでいるジークをニマニマしながら見て、自身も朗読する魔王。
「いやぁ、ちょっとでも罪悪感ってものがあるなら、せめて勇者として私と相打ちってことにするのに、これはないわー、ニンゲン怖いわー」
読み終わったジークは巻末を見ると『エクセリア皇国発行 監修:リュート=ブレイブハート』と書いてある。
双女王はハラハラしてジークの様子を窺っている。
「もう、死んだと思ってるモノだからヤリタイ放題よね。自分達じゃ到底敵わない魔王を相手させて、相打ち狙ってたのに勇者ちゃんが勝っちゃうものだから疲労で弱ってる勇者ちゃんをグサッ…と、まあ、あの『クッコロ』が似合いそうなお姫様ったら名役者よねぇ」
さらに追い打ちをかける魔王。
「落ち着けジーク。人生そんなに悪い事ばかりではないぞ」
「そ、そうですの。これからのあなた様次第ですの」
慰めようとする双女王の言葉を聞いて、ジークは少しの間目を瞑って、
「……もう驚かないし、沈まないよ。まったく、リュートの奴、徹底してるね」
ジークは絵本を再び読み返して考える。
「聖剣の勇者が……リュート?」
確かにエクセリアが待ち望んだ聖剣の勇者はリュートだった。
しかし、建国の聖剣『カレトヴルッフ』が選んだのは山奥で厳しい『母親』と共に修行していたジークだった。
魔王討伐の為に、城で封印を解かれた『建国の聖剣』をリュートが授かろうとした瞬間、カレトヴルッフは光り輝き、流星のように自分の元に向かった。
それを使って僕は魔王軍の幹部の一人を薙ぎ払った事が、冒険の始まりだった。
その時、『建国の聖剣』を追ってきたセルフィとリュートに僕は出会った。
(よく考えなかったけど、リュートはどんな気持ちだったんだろう。出会ったあの時から…始まっていたのかもな)
「ふふっ、モノは考えようよ、勇者ちゃん……いえっ」
突然、小さな魔王はその姿に似合わない真剣な顔をして、勇者の前に頭を垂れる。
「我を屠った、最も強き力を持つ、偉大なる勇者」
「………」
真剣な瞳で魔王を見るジーク。
すると二頭身だった魔王が少しずつ大きくなり、いつの間にか戦った時の姿に戻っている。
「人間共に裏切られ、しかも真名と誇りを貶められ、あなたは人間にとって最大の『悪』となった。今こそ、卑劣なる人間共に裁きの鉄槌を下す時です」
魔王はジークの瞳を真っ直ぐ見つめ、両掌を上げると、魔王の手に一本の剣が現れる。
「この魔王『黒炎の皇女』、真名『ルクレッツァ=スルト』。勇者ジーク様…いえ、『伝説の邪竜』から全てを受け継ぎし、大魔王『ジークフリート=ファフニール』様」
魔王はにっこりと笑い、
「今この時より、我は大魔王様の忠実な僕となり、お仕えいたします。さあ、我が魔剣『獄炎の庭園をお受け取り下さい。そして、大魔王様の覇道の第一歩として、人間共への復讐をいたしましょう」
魔王の言葉に双女王は顔を歪ませる。
事前に三人の中にはある程度の話し合いがあった。
魔王があからさまにジークを闇に堕とそうとしているのは双女王は反対しているが、『人間共への復讐』に関しては大いに賛成している。
古からの『呪縛』により、誰も助けてくれなかった自分達の運命を、己の命を賭してまで救ってくれた誰よりも優しく、そして愛しい勇者を人間共は利用するだけ利用して殺そうとした。
この15年、何食わぬ顔で国交を求める裏切り者共の罪を責めたかった双女王にとって、ジークの今後は彼の意志一つだ。
いや、彼は復讐するだろう。
彼を自分に置き換えて考えると、己は怨嗟の想い抱き、全てを灰燼に帰すまで…根を絶やすまで恨みを持つだろう。
それをわかっていて、魔王はジークの声を待っている。
そして、それは双女王も…
しかし、当人のジークはキョトンとして、
「えっ?復讐なんて別にしないよ」
『へっ?』
勇者は復讐をそそのかされました。でも断りました。
皇国の白百合・姫騎士セルフィリス。
皇国の黒薔薇・魔術姫ギネヴィア
白銀の聖騎士・聖剣の勇者リュート。
鋼の拳を持つ格闘王・拳王グラム。
美しき女傭兵・戦乙女エルス。
神技の弓手・弓聖リッカ。
そして…従者・ジークが共に旅立ちました。
六勇者と従者は共に苦難を乗り越え、魔王城に辿り着き、魔王を打倒しました。
しかし、魔王を倒した直後、六勇者に更なる魔の手が!
なんと従者が六勇者を恐ろしい闇の力で襲いかかったのです。
六勇者は驚愕しました。
自分達に優しかった従者・ジークの正体は魔王すらも支配する、恐怖と絶望の象徴である、『大魔王』だったのです。
『大魔王』は今までに何度も六勇者達の道中をばれないように困難に陥れ、魔王との戦いで疲弊した六勇者にトドメを刺そうという卑劣な手段を用いました。
魔王との戦いで疲弊した六勇者に容赦無く暴虐の限りを尽くす『大魔王』。
女神アテネスの加護を受けた聖ナイフが輝き、『大魔王』を弱らせ、勇者リュートの聖剣の一刀が『大魔王』を倒しました。
こうして世界の平和を取り戻した六勇者はそれぞれの故郷に帰り、幸せに暮らしました。
☆
「幸せに暮らしました♪」
「………」
神妙にして微妙な顔をしながら無言で『絵本:六勇者の魔王退治』を読んでいるジークをニマニマしながら見て、自身も朗読する魔王。
「いやぁ、ちょっとでも罪悪感ってものがあるなら、せめて勇者として私と相打ちってことにするのに、これはないわー、ニンゲン怖いわー」
読み終わったジークは巻末を見ると『エクセリア皇国発行 監修:リュート=ブレイブハート』と書いてある。
双女王はハラハラしてジークの様子を窺っている。
「もう、死んだと思ってるモノだからヤリタイ放題よね。自分達じゃ到底敵わない魔王を相手させて、相打ち狙ってたのに勇者ちゃんが勝っちゃうものだから疲労で弱ってる勇者ちゃんをグサッ…と、まあ、あの『クッコロ』が似合いそうなお姫様ったら名役者よねぇ」
さらに追い打ちをかける魔王。
「落ち着けジーク。人生そんなに悪い事ばかりではないぞ」
「そ、そうですの。これからのあなた様次第ですの」
慰めようとする双女王の言葉を聞いて、ジークは少しの間目を瞑って、
「……もう驚かないし、沈まないよ。まったく、リュートの奴、徹底してるね」
ジークは絵本を再び読み返して考える。
「聖剣の勇者が……リュート?」
確かにエクセリアが待ち望んだ聖剣の勇者はリュートだった。
しかし、建国の聖剣『カレトヴルッフ』が選んだのは山奥で厳しい『母親』と共に修行していたジークだった。
魔王討伐の為に、城で封印を解かれた『建国の聖剣』をリュートが授かろうとした瞬間、カレトヴルッフは光り輝き、流星のように自分の元に向かった。
それを使って僕は魔王軍の幹部の一人を薙ぎ払った事が、冒険の始まりだった。
その時、『建国の聖剣』を追ってきたセルフィとリュートに僕は出会った。
(よく考えなかったけど、リュートはどんな気持ちだったんだろう。出会ったあの時から…始まっていたのかもな)
「ふふっ、モノは考えようよ、勇者ちゃん……いえっ」
突然、小さな魔王はその姿に似合わない真剣な顔をして、勇者の前に頭を垂れる。
「我を屠った、最も強き力を持つ、偉大なる勇者」
「………」
真剣な瞳で魔王を見るジーク。
すると二頭身だった魔王が少しずつ大きくなり、いつの間にか戦った時の姿に戻っている。
「人間共に裏切られ、しかも真名と誇りを貶められ、あなたは人間にとって最大の『悪』となった。今こそ、卑劣なる人間共に裁きの鉄槌を下す時です」
魔王はジークの瞳を真っ直ぐ見つめ、両掌を上げると、魔王の手に一本の剣が現れる。
「この魔王『黒炎の皇女』、真名『ルクレッツァ=スルト』。勇者ジーク様…いえ、『伝説の邪竜』から全てを受け継ぎし、大魔王『ジークフリート=ファフニール』様」
魔王はにっこりと笑い、
「今この時より、我は大魔王様の忠実な僕となり、お仕えいたします。さあ、我が魔剣『獄炎の庭園をお受け取り下さい。そして、大魔王様の覇道の第一歩として、人間共への復讐をいたしましょう」
魔王の言葉に双女王は顔を歪ませる。
事前に三人の中にはある程度の話し合いがあった。
魔王があからさまにジークを闇に堕とそうとしているのは双女王は反対しているが、『人間共への復讐』に関しては大いに賛成している。
古からの『呪縛』により、誰も助けてくれなかった自分達の運命を、己の命を賭してまで救ってくれた誰よりも優しく、そして愛しい勇者を人間共は利用するだけ利用して殺そうとした。
この15年、何食わぬ顔で国交を求める裏切り者共の罪を責めたかった双女王にとって、ジークの今後は彼の意志一つだ。
いや、彼は復讐するだろう。
彼を自分に置き換えて考えると、己は怨嗟の想い抱き、全てを灰燼に帰すまで…根を絶やすまで恨みを持つだろう。
それをわかっていて、魔王はジークの声を待っている。
そして、それは双女王も…
しかし、当人のジークはキョトンとして、
「えっ?復讐なんて別にしないよ」
『へっ?』
勇者は復讐をそそのかされました。でも断りました。
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