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1、プロローグ
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わたし、ユインティーナ・コーサイス13歳。一年前から貴族の御令嬢を始めました。なんかね、わたし、拐われて行方不明になっていた侯爵家の御令嬢だったらしい。
最初にコーサイス侯爵家の使いの人に話を聞いたときは、コイツ馬鹿なんじゃないの、と思った。そんな少女小説みたいな話、ある訳ないじゃない。
「お前、そんなこと言ってユインを連れ去って娼館にでも売るつもりか!」
カイン兄さんが言ったのを聞いて怖くなった。わたしは下町ではそこそこ有名な美少女だったからね。
母さんも次兄のトール兄さんも信じなかった。侯爵家の使いの人が帰ったとき、みんなで玄関に塩をまいた。
それから三日後のこと、今度は王国騎士団の団長と副団長がやって来た。騎士団長のことは知らないけど、アンべール副団長のことは良く知っている。
カイン兄さんとトール兄さんとわたしは三人で組んで冒険者の仕事をしている。アンベール副団長は貴族なのに冒険者にも親切だと有名だった。
わたし達にも森に採取の仕事に出掛けたときに「今日は北の方に危険な魔獣が出ているぞ。」と教えてくれたりしていた。
そのアンベール副団長がわたしはコーサイス侯爵家の御令嬢なのだと言う。それに最初に気付いたのもアンベール副団長だったらしい。
きっかけは半月前、わたし達はキーレンの森で狐ぐま討伐の仕事をしていた。狐ぐまは小型の魔獣で強くはないけどすばしこく、討伐目標の10頭狩るのに思ったより時間がかかった。気がつけば夕暮れ時、夜になると強い魔獣が出てくるので、わたし達は慌てて帰路についた。そのとき、森の一角が急に騒がしくなった。
見ると王国騎士団が隊列を組んで帰路を急いでいる。わたし達は少し距離をとってそれを見送ることにした。
余程強い魔獣と戦ったのか怪我人が沢山いる。担架で運ばれている人もいて、その中にアンベール副団長がいた。
「石化の解呪が出来る者と連絡は付いたのか?」
「それが王都から離れているらしくて王都に戻るのに二日はかかると・・・。」
「それではアンベールが死んでしまうではないか!」
わたしはハッとして副団長を見た。右腕が棒でも入れたようにピンと突っ張っていた。石化しているのだ。石化が臓器にまでまわると死んでしまう。
「わたしが解呪出来ます。」
わたしは思わず名乗り出ていた。回復魔法が使えるのは希少だから隠しておいた方が安全だ、そう教えてくれたのもアンベール副団長だった。
「石化の解呪が出来るだと。嘘を吐くな!」
わたしはそう言った男に腕をひねり上げられた。
「マルク、待て。その娘は回復魔法が使える。本当に解呪出来るのかもしれない。」
副団長が体を起こして男を止めた。
「石化を解呪したことがあるのか?」
わたしは首を横に振った。石化を使ってくる魔獣など滅多にいない。石化した人を見るのも初めてだった。
「ステータスに石化の解呪とあるので解呪出来ると思います。」
「やってみてくれ。」
副団長が石化した腕を差し出した。わたしは石化を解呪した。それがコーサイス侯爵家だけに伝わる血族魔法だとも知らないで。
最初にコーサイス侯爵家の使いの人に話を聞いたときは、コイツ馬鹿なんじゃないの、と思った。そんな少女小説みたいな話、ある訳ないじゃない。
「お前、そんなこと言ってユインを連れ去って娼館にでも売るつもりか!」
カイン兄さんが言ったのを聞いて怖くなった。わたしは下町ではそこそこ有名な美少女だったからね。
母さんも次兄のトール兄さんも信じなかった。侯爵家の使いの人が帰ったとき、みんなで玄関に塩をまいた。
それから三日後のこと、今度は王国騎士団の団長と副団長がやって来た。騎士団長のことは知らないけど、アンべール副団長のことは良く知っている。
カイン兄さんとトール兄さんとわたしは三人で組んで冒険者の仕事をしている。アンベール副団長は貴族なのに冒険者にも親切だと有名だった。
わたし達にも森に採取の仕事に出掛けたときに「今日は北の方に危険な魔獣が出ているぞ。」と教えてくれたりしていた。
そのアンベール副団長がわたしはコーサイス侯爵家の御令嬢なのだと言う。それに最初に気付いたのもアンベール副団長だったらしい。
きっかけは半月前、わたし達はキーレンの森で狐ぐま討伐の仕事をしていた。狐ぐまは小型の魔獣で強くはないけどすばしこく、討伐目標の10頭狩るのに思ったより時間がかかった。気がつけば夕暮れ時、夜になると強い魔獣が出てくるので、わたし達は慌てて帰路についた。そのとき、森の一角が急に騒がしくなった。
見ると王国騎士団が隊列を組んで帰路を急いでいる。わたし達は少し距離をとってそれを見送ることにした。
余程強い魔獣と戦ったのか怪我人が沢山いる。担架で運ばれている人もいて、その中にアンベール副団長がいた。
「石化の解呪が出来る者と連絡は付いたのか?」
「それが王都から離れているらしくて王都に戻るのに二日はかかると・・・。」
「それではアンベールが死んでしまうではないか!」
わたしはハッとして副団長を見た。右腕が棒でも入れたようにピンと突っ張っていた。石化しているのだ。石化が臓器にまでまわると死んでしまう。
「わたしが解呪出来ます。」
わたしは思わず名乗り出ていた。回復魔法が使えるのは希少だから隠しておいた方が安全だ、そう教えてくれたのもアンベール副団長だった。
「石化の解呪が出来るだと。嘘を吐くな!」
わたしはそう言った男に腕をひねり上げられた。
「マルク、待て。その娘は回復魔法が使える。本当に解呪出来るのかもしれない。」
副団長が体を起こして男を止めた。
「石化を解呪したことがあるのか?」
わたしは首を横に振った。石化を使ってくる魔獣など滅多にいない。石化した人を見るのも初めてだった。
「ステータスに石化の解呪とあるので解呪出来ると思います。」
「やってみてくれ。」
副団長が石化した腕を差し出した。わたしは石化を解呪した。それがコーサイス侯爵家だけに伝わる血族魔法だとも知らないで。
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