下町育ちの侯爵令嬢

ユキ団長

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10、ペナルティ。

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  下町に居たはずなのに、わたしは寮の自分の部屋で目を覚ました。
  あれ、何があったんだっけ?

  居酒屋でお昼ごはんを食べてビールを飲んだ。何だか楽しくなってきて踊りたいと騒いだ。そしたら顔見知りのお客さんが店の奥からギターを持ってきて弾いてくれたんだ。その曲がすごい良かった。激しい恋の歌だ。

  この曲、サラ姐さんが踊るとすっごくカッコイイんだよ。男の人に脚を絡めて背筋を反らせてフィニッシュ。最後に男の人の首に手を回してキスするとみんなサラ姐さんに夢中になった。
  わたしにはあんな色気は無いけど、手の動きや視線の流し方なんかを思い出しながら踊ったらすごい盛り上がった。
  将来侯爵家から追い出されたら、ダンサーになろうかな。
  そう、それで何曲も踊っていたら、エドガー様に見つかってしまったんだ。

  あっ、荷物はどうしたんだろう。わたしの駄菓子の入ったリュックサック。よく見るとわたしの枕元に置いてあった。
  中身が無事か確認しているとサーシャが部屋へ入ってきた。

 「ユインティーナ様、今回ばかりはさすがにアタシも呆れました。居酒屋で酒を飲むために学園を抜け出すなんて。」
 「えっ、違うよ。駄菓子を買うために抜け出したんだって。ほら。」
  わたしはリュックいっぱいに入っている駄菓子をサーシャに見せた。
 「じゃあ何故お酒なんか飲んだんです?」
 「好奇心かな。」
 「好奇心が猫をも殺すって言うんですよ。アンベール様が見つけてくださって本当に良かった。」
 「わたし、どうやって帰って来たの?エドガー様とあった辺りから記憶が飛んでるんだけど。」
  わたしはアンベール兄弟のリレーによって寮の部屋に返されたらしい。
 「ギルバート様にも御礼を言ってくださいね。眠りこけてるユインティーナ様を抱きかかえて運んでくださったんですよ。」
  時間を見るともう夜中だった。わたしは慌てて身仕度を整えるとサーシャに謝って眠りについた。

  翌日、ギルバートに会うとすごい怒っていた。
 「お前は何考えてんだよ。お前に何かあったら護衛のおれの責任にもなるんだぞ。」
 「ごめんなさい。そこまで考えてなかった。」
 「何か罰が必要だな。そうだな、二週間後の期末試験までの間、毎日5時間は勉強しろ。」
 「えぇ~。そんなに勉強したことないよ。」
 「課題はおれが毎日与えてやる。試験でひとつでも赤点を取ったら、お前の両親に今回のことを報告するからな。」
 「でも高位貴族の子息は赤点でも卒業出来るって、」
 「おれは努力しない奴がキライなんだよ。一度必死になって頑張ってみろ。」
  それから二週間、わたしはサーシャとギルバートに見張られて勉強漬けの毎日を送ることになった。
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