12 / 44
本編
12
しおりを挟むふと、目が覚めた。
朝倒れ込んだ状態のまま眠ってしまったらしい。目を開けても視界が暗いままで、もう既に夜になっていることに気付く。
…寝過ぎちゃったな。
「………、」
寝起きの頭でぼんやりとそう思っていると、寝台の端に誰かが腰をかけていることに気付き、驚いて身体がビクリと揺れた。
「おはよう、テオン」
「お、はようございます…父上」
あんまりにもいつも通りに声をかけられて、反射的に返してしまった。
いつのまにか掛けられていた窓掛けから零れる、月明かりしかない暗闇の中。ぼんやりと浮かび上がる黄金を見つけ、起き上がることも忘れてそれを見つめていると、不意にその黄金が逸らされ、おそらく俺の身体に視線が向けられた。
「……何もかけずに眠っていたのか?…脚が、冷えている」
するりと、指を絡めるように脚首を撫でられた。
じんわりと感じた人肌の暖かさに、うつらうつらとしていた意識がパッと霧が晴れたように覚醒する。
「……っ、父上⁉︎」
「…おっと、」
咄嗟に脚を引いたが、その前に父上に脚首を掴まれて持ち上げられた。
起こそうとした身体が反動で倒され、背中の傷が存在を訴えるように痛む。呻き声を上げながら顔を顰めると、父上は傷ましげな声をあげた。
「…あぁ、昨日の傷だな。すまない…、加減出来ずに思い切り突き飛ばしてしまった」
「……ぁ、」
ギシリ、と父上が寝台に乗り上げる音が鳴る。
掴んだままの脚首をまるであやすように撫でられて、声が漏れそうになって唇を噛み締めた。そんな俺を、ふっと笑ったような気配がしたが確かめようもなく、続けざまに反対の手で逆の脚の内腿を摩られて悲鳴を上げそうになった。
「……っ、」
ーーおかしい。変だ。だって昨日、俺はこの人に拒絶されたはずなのに。なのにどうしてこんなことになっているんだ。
今までの頭を撫でるような無邪気な触れ合いとは違う。まるで身体の奥から熱を呼び起こそうとしているような、そんな触り方を、どうして俺に…。
「…処置をするように指示を出したが…まだ痛むか、本当にすまない…」
「……ぅ、…ぁ、ちち、うえ…もう、大丈夫…だいじょぶだから………っだから、身体さわらな……っ」
「ーー何故だ?」
やっと目が慣れてきた暗闇の中で、曖昧な輪郭で浮かび上がる父上の煌めく黄金が瞬いた。
「もう我慢する必要はないだろう?昨日は…あのままだとお前を激情のまま壊してしまうかもしれないと思い、応えられなくてすまなかった。あのあと執務室に篭って3、4日程の仕事を片してきたんだ。余程の緊急事項でない限りはここに邪魔は入らない。ゆっくり、たっぷりお前を可愛がってやれる…」
「ひぁっ!」
恍惚の色を灯し俺を見下ろす黄金から目を逸せずにいると、掴まれたままだった脚首の腓骨を甘噛みされた。
もう意味が分からなくなって燻り出した身体の熱に泣きそうになっていると、父上は「あぁ、そうだ。まだ言っていなかったな。気持ちが先走りすぎてしまった」と思い出したように声を上げ。
「俺も愛しているよ、テオン」
熱を孕んだ言葉を告げて、俺の唇を塞いだ。
326
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる