【完結】俺が一目惚れをした人は、血の繋がった父親でした。

モカ

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ふと、目が覚めた。


朝倒れ込んだ状態のまま眠ってしまったらしい。目を開けても視界が暗いままで、もう既に夜になっていることに気付く。

…寝過ぎちゃったな。


「………、」


寝起きの頭でぼんやりとそう思っていると、寝台の端に誰かが腰をかけていることに気付き、驚いて身体がビクリと揺れた。


「おはよう、テオン」

「お、はようございます…父上」


あんまりにもいつも通りに声をかけられて、反射的に返してしまった。

いつのまにか掛けられていた窓掛けから零れる、月明かりしかない暗闇の中。ぼんやりと浮かび上がる黄金を見つけ、起き上がることも忘れてそれを見つめていると、不意にその黄金が逸らされ、おそらく俺の身体に視線が向けられた。


「……何もかけずに眠っていたのか?…脚が、冷えている」


するりと、指を絡めるように脚首を撫でられた。

じんわりと感じた人肌の暖かさに、うつらうつらとしていた意識がパッと霧が晴れたように覚醒する。


「……っ、父上⁉︎」

「…おっと、」


咄嗟に脚を引いたが、その前に父上に脚首を掴まれて持ち上げられた。

起こそうとした身体が反動で倒され、背中の傷が存在を訴えるように痛む。呻き声を上げながら顔を顰めると、父上は傷ましげな声をあげた。


「…あぁ、昨日の傷だな。すまない…、加減出来ずに思い切り突き飛ばしてしまった」

「……ぁ、」


ギシリ、と父上が寝台に乗り上げる音が鳴る。

掴んだままの脚首をまるであやすように撫でられて、声が漏れそうになって唇を噛み締めた。そんな俺を、ふっと笑ったような気配がしたが確かめようもなく、続けざまに反対の手で逆の脚の内腿を摩られて悲鳴を上げそうになった。


「……っ、」


ーーおかしい。変だ。だって昨日、俺はこの人に拒絶されたはずなのに。なのにどうしてこんなことになっているんだ。

今までの頭を撫でるような無邪気な触れ合いとは違う。まるで身体の奥から熱を呼び起こそうとしているような、そんな触り方を、どうして俺に…。


「…処置をするように指示を出したが…まだ痛むか、本当にすまない…」

「……ぅ、…ぁ、ちち、うえ…もう、大丈夫…だいじょぶだから………っだから、身体さわらな……っ」


「ーー何故だ?」


やっと目が慣れてきた暗闇の中で、曖昧な輪郭で浮かび上がる父上の煌めく黄金が瞬いた。


「もう我慢する必要はないだろう?昨日は…あのままだとお前を激情のまま壊してしまうかもしれないと思い、応えられなくてすまなかった。あのあと執務室に篭って3、4日程の仕事を片してきたんだ。余程の緊急事項でない限りはここに邪魔は入らない。ゆっくり、たっぷりお前を可愛がってやれる…」

「ひぁっ!」


恍惚の色を灯し俺を見下ろす黄金から目を逸せずにいると、掴まれたままだった脚首の腓骨を甘噛みされた。

もう意味が分からなくなって燻り出した身体の熱に泣きそうになっていると、父上は「あぁ、そうだ。まだ言っていなかったな。気持ちが先走りすぎてしまった」と思い出したように声を上げ。



「俺も愛しているよ、テオン」



熱を孕んだ言葉を告げて、俺の唇を塞いだ。








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