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番外編

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「父上にされて嫌なことなんて、ありません」


本来なら叶うどころか、想いを告げることすら許されないこの、気持ちを。

父上は受け入れてくれた。

息子としてだけでなく、恋人としても愛してくれた。それがどれだけ奇跡的なことなのか、俺は分かっているつもりだ。

それに父上はこの関係を隠したり、終わらせることより、継続することを第一に考えてくれて、その為に色々と尽力してくれている。


ーーそんな貴方にされて嫌なことなんて、なにもない。


そう改めて思うと、先程とは違う熱が身体の中で燃え上がるのが分かった。


「………分かっていないだろう」


きっぱりと言い切った俺を見下ろして、父上は顔を顰めた。いつもは感情を読めない黄金に、呆れを滲ませて。


「俺は…、もしお前が逃げ出そうとしたなら、足の腱を躊躇なく切り、その上でお前を誑かした奴も嬲り殺す」


空いている方の掌が内腿から脚首まで、じっくりとまるで掌で味わうかのように撫でた。

行き着いた先の脚首をくるくると摩られて、初めて身体を重ねた日のことを思い出して頬が熱くなる。

やたらと踵の上の部分を摩るのは、足の腱を探しているのだろうか。父上が望むのなら、なんだって構わないけれど。


「…仮に今後、俺の持てる全てを使ってもどうしようもならない事態になったら、お前を殺して俺も死ぬ。
お前だけでも生き延びてほしいなんて殊勝なことは思えないし、我慢ならない」


そして、脅すように両手が俺の首に添えられる。




「…こんな男は、恐ろしいだろう?」




欠片も力の入っていないその掌も、昏く澱んだ黄金を不安げに揺らす父上も、全く怖くなかった。

むしろ、俺の身体の中で燃え上がる感情が湧き上がってくるばかりだった。


「ーーいいえ、テオドール様」


拘束を解かれた両手を伸ばし、あの夜のように引き寄せて軽く触れるだけの口付けをした。

そのときと同じく目を見開いて固まる父上に、俺は笑いかけた。


「確かに、俺はテオドール様の愛情の大きさを理解できていませんでした。…ですが、それはテオドール様も同じです」


「…俺、も?」


思ってもいないことを言われたと瞬く父上は、どこか可愛らしく見えて思わずふふ、と笑いが溢れた。

父上を引き寄せたときに素早く首から外された手を取って、俺の心臓の上に置く。


「聞こえますか?」

「…あ、あぁ…………早いな」


どくどくといつもよりも早く脈打つ心臓に、父上は驚いたようにそう言う。…俺の言いたいこと、分かっていないな。


「テオドール様、俺たち…想いが通じたことに浮かれて、大事なことを話し合っていませんでしたね。

……だから、まずは俺の話を聞いてくださいますか?」



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