転生王女は現代知識で無双する

紫苑

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定番になりつつある異世界転生【学校編】ー2年目ー

31話 出逢っちゃいました。sideニコラ

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私はラナという少数民族の族長の娘としてこの世に生まれた。

私達は3歳になると胸の真ん中に花の入れ墨を入れる。
そして、毎年その入れ墨が手足に向かって伸びていく。

成人するとそれは大樹と大輪の花となって身体中を飾る。

私は母の入れ墨がとても好きだった。

男性の父とは違うその繊細で緻密な入れ墨がとても綺麗で素敵だった。

私は綺麗な物が大好きだ。
母の入れ墨、そして…妖精達。

私の肩に妖精が止まる。
彼ら?彼女らは煌めいていて昼夜関係なく光輝いている。

夜に他の光を必要としない程輝いていて、その光景も言葉に表せない位とても綺麗だ。

沢山掟はあるけどみんなで、綺麗な妖精達と仲良く生活出来て幸せだ。

優しい兄も大好きだ。
厳しいけど優しい父が大好きだ。
綺麗で優しい母が大好きだ。
綺麗な妖精達が大好きだ。

広場に集まり外の世界の勉強をする。

私達ラナは外の世界の人とは全然違う生活をしているらしい。

まず、言葉が違うらしい。

そして、妖精達がいないし存在も知らないそうだ。

こんなに綺麗な子達を知らないなんて
なんて勿体ないんだろうと思う。

外の世界の勉強はとっても大切で外の言葉も喋れる様に勉強する。

広場で勉強しながら大樹を見上げる。

みんな大樹と妖精王オベロンに毎日祈りを捧げる。
これも外の人達はしないそうだ。

何故ラナだけ外と違う文化、言葉がある事もとっても大切な事で外の言葉よりも先に教わる。

そして、小さい頃は眠る前に母が兄さんと私に子守唄として聞かせてくれた。

むかし~むかし~から始まるその物語はとても悲しい話で小さい頃は話を聞くと泣いてしまった。

そんな私を兄さんがいつも優しく抱き締めてくれた。

「むかし~むかし~、飢えと争いの絶えない時代にラナという自然と人を深く愛する少女が居ました。
ラナは毎日森に家族の為、村の人の為に食べ物を探しに行っていました。
ある日大樹の根元に光り輝く人と小さな輝く光を見つけました。
その人達は言葉を話さず歌を歌っていました。
ラナも素敵な歌に思わずつられて歌いだすとその輝く人はとても不思議な力でラナに沢山の食べ物と食べ物を育てる力を与えました。

ラナはそれから毎日その人に逢いに行きました。
食べ物の為ではなくその人に逢いにいく為に…。
言葉を交わせる様になると耀く人は、妖精王オベロンと光る輝きは妖精達だと分かりました。
妖精王オベロンがいる森は豊かに育ちとても豊かになりました。
飢えずに済む様になりみんなが妖精王オベロンに感謝しました。
妖精王オベロンはラナに沢山の妖精と変わらず歌い、笑い、愛していって欲しいと言い残して森を去り姿を見せなくなりました。
みんな妖精と森の恵みに感謝しながら幸せに暮らしていました。
しかし、それを知ったある国の王様がその力と森を奪おうと攻めてきました。
妖精王の森守ろうとみんなが戦いました。森を守る事は出来ましたが沢山の人が亡くなりラナは涙しました。
そして、欲深い人間達が妖精を捕まえ様としている事もラナは知りました。
ラナは妖精王オベロンから貰った力を全て使って妖精王の森の中に姿を隠す事にしました。
そして、外の世界の人に妖精王と妖精の事をもう誰にも知られない様に知恵を絞り隠したのです。」

そうして、ラナとその家族、戦って生き残った人達がこの場所に住む事になったのが私達ラナの起源だそうだ。

ラナは外の世界にここが良くない場所で、厳しい掟と外に出ない民族としての立場を確立した。

厳しく住みにくく悪い印象を植え付ける事に全力を注いだそうだ。
最初は呪われているとも言ったそうだ。

いい場所、凄い物があると人は奪いに来るが、いい物もなく住みづらい辺境の少数民族に誰も興味も関心もなくなるまで必死に隠してきたそうだ。

外の人からすると私達はとっても印象が悪いらしい。

でもそれがとっても大切だと教わった。

妖精と一緒にいる為なら少し不自由なのも全然平気だと思っていた……。

あの時までは…。

大人になり兄さんの親友のタロスと恋をして結婚し子供が産まれた。

子供はイヴと名付けた。
とっても幸せな生活。毎日笑っていた。

しかし、その日常が壊れるのは突然だった。
1人の村人が熱が出て風邪だと思ったら次々に倒れて次々亡くなっていった。

外部と限られた接触しかしない私達の中で病が流行る事は滅多に無かったが、一度流行ると大変な事になる事は先人達が教えてくれていた。

妖精は色んな力をくれるのに、病などを治す力は与えてくれなかった。

沢山の村の人が亡くなった。
愛しいタロスも母も…友達も…。

そして、その悲しみにみんなが涙してる時に大きな問題が起きた。
今度はイヴの手が変化したのだ。

みんなでどうすればいいのか考えたが分からなかった。
族長である父も導き手として答えを出せずにいると…その変化は全身に広がった。

外の治療を受けない限りどうしようもないと思った。
村ではその知識を誰も持っていない事は明確だ。

閉鎖しているが外の情報には詳しい。
外の方が治る可能性がある。

しかし、外に私達の真実が知られる事も掟を破る事も私達には耐えられなかった。

みんなが苦しんでいる事が分かった。
イヴを治す行為、そしてそれを許す事はラナとしては出来ない事だった。

3歳の初めての入れ墨を入れる事はラナの心の根底に根付いていて、大樹と共に生きていく事を己に刻む大切な儀式だ。
それが出来ない事は私達とってとても大きな問題だった。

そして、入れ墨の問題以前にこのままならイヴは死んでしまう。
呼吸をする事も苦しそうだ。

イヴまで居なくなったら私は絶えられない。様々な恐怖で震えが止まらない。

父に外に内緒で治療に行って治ったら入れ墨を入れられるからそれまで待ってくれないかと懇願した。
掟を破るが絶対迷惑をかけない様にするからと懇願した。

兄さんも毎日悩んでいた。
時期族長の役割である制裁者は掟を守らない人には罰を与える役だ。

掟を破って良いなど口が裂けても言えないだろう。
そして、このまま何もせず亡き親友と妹の子であるイヴが死んでしまうのも耐えられないだろう。
私達の子じゃなくても兄さんは耐えられないだろうが…

私自身も悩み続けていた。
どんなに我が子を助けたくても大切な掟を破りたくないし、外の人に関わりたくない。

でも苦しむイヴを見ていると助けたい気持ちがどんどん勝っていく。

私は姿を隠せる加護を妖精に貰っている。
いたずら好きな妖精は姿を隠す事は大好きだ。
それに風の加護で早く移動出来る。

でも、最後の一歩を踏み出せないでいた。

悩んでいると族長である父がイヴを呪いを受けた異端の子として殺すとみんなに宣言した。

心優しいみんなもイヴの普通とは違う姿に恐怖していたし、全身に変化が広がってからは誰も触れられなくなっていた。

掟の事以前にその姿自体に恐怖を感じているのも分かっていた。
病で沢山の人が亡くなったのもイヴの所為なのでは?っと思う人まで出始めた。

村の人がみんな恐怖していた。
そんな事は初めてだった。
先人達の知識にもない。
掟にも書いてない事だった。

兄さんと何人かの人ははそんな事ない!っと否定してくれた。
ただその人達も他の解決策を持っている訳ではなかった。

私はその日、夜陰に紛れて村を抜け出した。

掟を破ると自覚した瞬間、訳も分からず全身が酷く傷んだ。
恐怖しか感じれない中、ただイヴを救う事だけを考えて震える手で抱き締めながら空を走った。

それ以外を考えた瞬間、立ち止まってしまうのが分かっていた。

すぐに近くの国にたどり着いた。
言葉もお金を払ったりする一般的な常識についても知っている。
お金は持っていなかったが装飾品の宝石がその代わりになると知っていたので持ってきていた。

外の人に話しかける時も身体が痛んだがイヴの事だけを考えた。
医者の元に辿り着くとすぐに帰ってくれと追い出された。

その顔には恐怖が刻まれていた。

外の人の方がイヴを見た時の恐怖心は顕著だった。

医者という病を治すはずの人が、イヴを見て恐怖するその様子に焦燥感と絶望が私を支配した。

ちゃんと医者に診せたら治してくれる人が何処かにいる筈と希望を抱いていた。

医者は色んな病を治してくれる人と教わったのにそれは間違っていたと言う事なのだろうか…。

諦められず他の国の医者の元へと向かう。

向かいながら震え続ける身体で兄さんは制裁者だが、きっと私達を追って来ないと思った。

他の人が来るにしても父がなかなか追っ手を向かわせないだろう。

でも、最も侵してはならない掟である外に勝手に出た私の事を処分しない訳にはいかない。

きっとここまできたらイヴが治るまである程度の時間をくれると私は確信していた。

優しい兄さんと父の気持ちを利用する自分に吐き気がした。

でもそこまで考えて、呪いの子として他のラナの人達の恐怖心の為にもイヴも殺されるかもしれないと考えた。

ラナの子の証の入れ墨がないし今イヴは異端の子である事は事実だ。

結局どうなるのか考えても私には分からない。

余計な事を考えては駄目だ。
立ち止まってしまう。

イヴを治す。それだけの事を考えよう。

何ヵ国渡り歩いても誰もイヴを治せなかった。
治療自体してくれない人が殆どだった。

感染るかもしれないと私を殴り怒る人もいた。

診てくれる人もいたがこんな病い聞いた事も、見た事もないと言って謝ってくれた。

絶望と恐怖でもう足が止まりそうだった。

涙する私を励ましてその医者は教えてくれた。

クリスタ国ではもしかしたら治るかもしれないと…今クリスタ国は医術の為の教育機関で様々な病気を治す為に革新的な事に取り組んでいるっと…。

辺境のラナから遠く離れた大陸の反対側に来て初めて入ってきた情報だった。

教育機関をクリスタ国が作った事は知っていたが…。

私はクリスタ国を目指した。

もうこれで駄目なら時間ももうないだろう。
あれから何日経ったか分からないが…
イヴの体力も限界の様だ。

今迄は寝たきりだったのにずっと移動しているのだ。

私の所為でイヴが死んでしまう。
涙が枯れる事なく溢れた続ける。

私の身体にこんな量の涙が入ってるなんて信じられない。

ただ苦しむ我が子を抱き締めて声をかける事しか出来ない。

クリスタ国の王都はとても賑わっていた。

路地についてマントを巻き直す。
入れ墨を絶対見られる訳にはいかない。

誰も居ない事を確認して姿を表す。

路地から出て人の良さそうな女性に声をかけて医術を教えている教育機関の場所を聞いた。

教育機関は2つあるが1つの方が進んでいて凄い人が居るからまだ病院も出来てないがそっちの方に行くのが良いと言って女性は優しく連れて行ってくれた。

この国の格好でもなく怪しく汚く泣く私に女性は優しく道案内してくれた。

この国は他の国と違うなっと思った。
道ゆく人が生き生きしている。
どの国より路地裏が綺麗だ。

女性にお礼を言って門番に話しかける。

どうしてもここで診てもらい病人がいると言った。

門番の男性は丁寧にまだ病院が出来ていなくて申し訳ないがと近くの医者の住所を教えてくれた。

それでは治らない。

ここで見てもらいと懇願する。

ここが最後の望みだ。

この子を助けたい。

何でもするから助けて欲しいと懇願した。涙は溢れたままだ。

もう足に力が入らない。
膝をつきながら叫ぶ様に懇願した。

門番が近づいてきて私の抱えるイヴを見た瞬間、恐怖の表情をして後ずさった。

それでもここが最後の希望だ。
頭を下げて懇願する。

「どうかしましたか?」

急に別の声がした。
その声がした方へと視線を向ける。

そこには金髪の長い髪と白い服が輝いている様な綺麗な小さな女の子立っていた。

私の目の前の門番がとても驚いている。

私も同じ様に驚く。
その妖精の様に光り輝いて見える女の子は私にゆっくり近づいてくる。

腕の中のイヴを見るとそのまま私とイヴをとても優しく抱き締めた。

こんなに優しく抱き締められたのは何時ぶりだろうか。

抱き締められていると私の無様に震えている身体の震えが少し落ち着いた様に感じた。

質問に動かない頭を必死に動かして答える。

この女の子が何者なのか分からないが、その様子から先程案内してくれた女性が言っていた凄い人とはこの人だと思った。

その女の子はイヴを診てくれると言って中に連れていってくれる様だった。

門番に毅然と答えて私の前を歩く。

イヴを抱き締めながら何が起こっているのか冷静に考えようと、泣きながら必死に息を整えた。

部屋に通されて椅子を薦められる。

女の子は簡単な自己紹介をして私にいくつかの質問と説明をしてくれた。

レイチェル様は外で出会った他の誰とも違う表情で私の瞳を真っ直ぐ見つめて〝治せる〟と言った。

信じられなくて思わず聞き返す。

治して欲しいと渇望していたのに、いつの間にか無理だと思っていた様だ。

その一言が聞きたくて、聞きたくて自分の中の全てを捨ててここにいるのにその一言が信じられなかった。

掟を破って抜け出して、外の人に話かけて嘘を答えて…
もう自分自身も限界だった。

自分の全部をかけてもイヴを失ってしまうと思っていた私にレイチェル様は答えてくれた。

〝治せる〟っと。

思わず全身の力が抜け落ちてその場で崩れ落ちた。
腕の中のイヴも今までどんなに苦しくても泣いた事なんてなかったのに涙を流している。

その涙を見て私は呼吸が出来ない程泣いてしまった。

ベットに案内される。

他の人に触れられたとしてもイヴが治るなら全ての罪は私の責任だ。

イヴの身体を色々触られてるのを見て恐怖した。
私は助けたい為に何て罪を侵しているだろう。
でも助ける事が1番なんだっと自分に必死に言いきせた。

イヴをずっと抱き締めいた。
死んでしまう恐怖と、違う恐怖も私の中で渦巻く。

少しでもイヴと離れたら私はもう動けない。

部屋を移動してレイチェル様に引き渡した瞬間もう力が入らなくて扉の近くで膝をついた。

もう自分の中が訳のわからない状態になっていて上手く呼吸出来ない。

でも次の瞬間には驚きのあまり息が止まった。
レイチェル様はイヴのお腹に手をあてるとその輝きをました。

そして、レイチェル様の輝きがイヴを包んでイヴの皮膚が普通の皮膚に戻っていく。
頭皮からは無くなっていた髪の毛が生えている。
息も忘れて泣きながら唖然としてるとレイチェル様は私を見て優しく笑った。

次の瞬間レイチェル様の身体が力なく崩れた。
傍にいた銀髪の青年がその身体を優しく受け止めた。

私は息を吸って床を這いながらイヴに近づいた。

そこには私の黒の瞳とタロスの紫の瞳を宿したイヴが唖然とこちらを見ていた。

力の限り抱き締める。

抱き締めながらレイチェル様の様子を伺う。
青年が抱き上げて別の部屋へと連れていく所だった。

伝えたい気持ちが溢れて口から出たのはレイチェル様への心からの感謝の言葉だった。

イヴが元気な顔で私を見つめ返している。普通に呼吸をしている。

そのまま案内されて医者の元へと移動した。

移動中もレイチェル様の心配とイヴが元気な姿への感謝が溢れた。
先程までとは違う意味で涙が止まらなかった。

優しく握り返してくれるその小さな手は
確かに生きて暖かった。

ラナの子供はたまに妖精の加護が強いと小さい頃は言葉を話さない子が生まれたりする。

私の兄さんもそうだった。
今までは話したくても話せなかったから気づかなかったが、元気な姿でも言葉をを発しようとしていない様子からイヴも兄さんと一緒だと思った。

外の人は元気になったばかりだから話せないだけだと心配しないでと励ましてくれた。

みんなが優しく接してくれる。
暖かいご飯も用意されてそれを食べて驚いた。

今まで見た事も食べた事ない料理はとても美味しかった。

イヴは今まで自分でご飯を食べれていなかったからか、自分で食べてとても喜んですぐさま眠ってしまった。

寝顔を見ながら今までの事を思い返してその奇跡に感謝した。

レイチェル様が居なければイヴは助からなかっただろう。

そのレイチェル様も倒れるまで力を使ってくれたのだ。
何て迷惑をかけたのだろう。
もうこれ以上は私の事で迷惑はかけないと心に誓った。

イヴを優しく撫でていると扉がノックされてレイチェル様の兄だと名乗るカイル様が部屋に入ってきた。

レイチェル様とよく似ている姿をしているがカイル様は輝いていなかったしずっと優しく微笑んだ表情で怒っている様だった。

いくつか質問をされた後に唐突に鋭い視線を感じると。

「少数民族ラナの方ですよね?」

その言葉に心臓が強く跳ねるのを感じた。 

ラナと分かりそうな装飾品を一つ以外していないし、入れ墨も見えない様にしているのになぜ気づいたのかと驚愕したが、私は平伏をして顔を見られない様にした。

「いえ、違いますが…」

「あれ?嘘はつく事は禁止されてるんじゃないですか?」

それから何故ここにいるのかなど聞かれたが、ただイヴを助けたかっただけだと言ってラナである事は必死に否定した。

嘘をつく度に胸が痛くなった。

「ラナとか本当はどうでも良いんですが…レイチェルにその所為で危害が加わる事などあったら貴方は生きてられませんから。」

この人もレイチェル様が心配な兄なんだと思うと心から申し訳なかった。

大事なレイチェル様が私の所為で倒れたのだ…。怒るのも無理はない。

必死に謝っているとレイチェル様が現れた。

申し訳なくて目も合わせられなかったが心からの感謝を伝えた。

言葉では言い合わらせない気持ちだった。
思わず歌い出しそうになったがここでそれは駄目だと必死に止めた。

レイチェル様が膝をついて私の手を握った。

その空色の瞳が私に呼びかけている。
頑張ったと労ってくれている。

2人が居なくなった後イヴの様子を眺めて手を握っていると、ここ何日も寝ていなかったからか急に睡魔に襲われる。

今の状況でそんな事許されないと贖うが私の意思に反して瞼が下がった。

イヴの上半身を預けて眠りに落ちる。
その直後に誰かが病室に入ってくる気配がしたが起き上がる事は出来なかった。

次に目を開けた時はレイチェル様が目の前に居た。

驚きつつ質問に答える。

レイチェル様にはもう嘘をつきたくなかった。
必死に質問に答える。

でも制裁者の事やラナが悪く見られてる話は否定しなかった。

それには心が痛んだが、私の事はどうなっても良いがラナに迷惑がかかる事は絶対に嫌だった。

力の事もレイチェル様の昨日の力を見た限り私の姿を見えなくさせる力など何でもないだろうと素直に話した。

レイチェル様の質問に私とイヴの事に関しては偽りなく話す。

もう十分だ。
後は私が責任をとって死ねば…持っている装飾品を全てレイチェル様に渡して急いで部族に帰ろう。

久しぶりに寝たお陰で頭の中が昨日より混乱してないみたいだ。

レイチェル様が昨日の様に私の瞳を真っ直ぐ覗いてくる。

死ぬつもりだと言い当てられた。
否定した。
死ぬつもりなんじゃない死ぬしかないんだ。

イヴだけは絶対助かる様にしなければ…レイチェル様が助けてくれた大切な命を無駄にしたりなんかしない。

でももう自分が生きていける気が全くしなかった。

今回の事で私の中の信じていた太い芯をぐちゃぐちゃに曲げてしまった。

その信念が曲がった事に絶望してもう生きていたくない。
イヴはラナの人達、兄さんが見てくれる筈だ。
兄さんの子として生きていって欲しい。
親の亡くなった子供達は兄弟や親戚が自分の子の様に育ててくれる。

もう私は折れた。立ち上がれない。

ラナの人が来たと青年が言う。

追っ手に追いつかれるのは不味い。

今のままでは治っていてもイヴは殺されてしまうかもしれない。

父は呪いの子して処分すると言って追っ手をかけている。

追っ手の人達に命令違反などの罪を侵して欲しくない。
もうこれ以上私の勝手な行動の所為で苦しまないで欲しい。

感じた事のないきっと悔しさという感情が私の心を支配する。
タロスと母を病で亡くし…イヴが治っても今の状況。

そして、私自身が憎い。
掟に縛られている自分が憎い。
抗いたいとさえ思ってこなかった。
でもイヴがあの病になってから掟に抗いたいと思ってしまった。
そんな自分が嫌だ。
信じていた物が間違っていると思うのは何でこんなに心を壊すのだろう。

絶望する必要がないって証明するっとレイチェル様はその空色の瞳で真っ直ぐ私を見て言い切った。

イヴか優しく昨日のレイチェル様の様に抱き締めてくれた。

イヴの元気な姿とその優しさに涙が溢れた。

突然レイチェル様が信じられない事を言うと不思議な扉が現れた。

信じられない。
その扉を出るとラナの大樹の祭壇の前に出た。

イヴをまた離さない様にしっかり握りしめた。
ラナの人達が叫んでいる声が聞こえる。

レイチェル様の行動から目が離せなかった。

大樹が輝いて門が作られる。
その光の門から出てきたのは妖精王オベロンその人だった。

先人達から伝えられている容姿そのままのオーロラの髪、オーロラの瞳のその人の周りをいつもより喜んで輝いて妖精達が舞っている。

発する力の強さが人の物ではない。
唖然としていたが祭壇の玉座に座るのを見た瞬間身体が自然に跪いた。

その後の光景も信じられない。
レイチェル様と妖精王オベロンの会話を唖然と眺めていた。

妖精王オベロンは掟を気にするなっといった。変わっていく事を許すと…。

そして、優しく笑った。

兄さんに近づき優しく頭を撫でた。

その次は、その行動に驚いている私の隣にいる青年達に近づくと獣人だと言った。

獣人が人の姿をしているなんて初めて聞いた。

妖精王オベロンは私の前で止まると無垢な魂と言ってイヴの頭を撫でてくれた。

ラナの人達も驚いている。
この前まで人の姿ではなかった子供がそこには元気な姿で妖精王オベロンに撫でれている。

元気な姿もそうだが呪いの子として処分しようとしたり、イヴの所為で病が流行ったと思っていた人達はその言葉と様子に驚愕した事だろう。

思わず抱き締めて涙がまた溢れた。

そして、私にも素敵な言葉を言ってくれた。
そして、頭を優しく撫でられた瞬間色んな気持ちが弾けた。

掟が絶対だった。
全ての人が掟を守って生きてきた。
破るなんて考えた事もなければ破りたい何て思った事なかった。
大樹と妖精とラナの人達が大好きだ。
愛してる。
それを守る事が嬉しいしその為に生きてきた。
そして、それと同じくらいイヴを愛している。
変わらない世界で変化を願った。
変化してはいけないと思っているのに。
変わる事は罪だ。
この場所を危険に晒す事になる。
妖精達を危険に晒す事になる。
でも妖精王は優しく変わっていいと言ってくれた。

きっと私の絶望感は誰に何を言われても変わらなかった。

でもそのラナが守りたかった妖精王が守る事は大事だけど変わる者である私達の変化を許すと笑ってくれた。

そして、優しく撫でてくれるその手から愛を感じる。
優しさを感じる。

汚れきった無様な私を綺麗だと言ってくれた。

私の流す涙を妖精王オベロンが口にする。
私に生きろと言っている。
触れられた手から伝わってくる。
今日までよく頑張ったと。

レイチェル様と同じ瞳で私を真っ直ぐ見つめた。
そのオーロラの瞳が空色に輝いた気がした。

それから妖精王オベロンはラナの人達みんなを褒めてその頭を優しく撫でた。
その触れられた手から愛と優しさが伝わる。
妖精王は自分の気持ちを触れて相手に伝えている。

それは、ラナの人達への労りで溢れていた。

必死に守ってきた事をありがとうと。

先人達から受け継いだ全ての事が報われた気がした。

みんな涙した。

そして、妖精王オベロンは大樹にも祝福を与えてレイチェル様を家族として頼れと言う言葉を残して去っていた。

誰1人として動けなかった。

父が泣き崩れている。
兄さんの言葉が響く。

兄さんが力強く抱き締めてくれた。

そこからも私はずっと唖然としていた。

レイチェル様の質問に頷く。

私の芯がぐちゃぐちゃになった場所を妖精王は優しく撫でてそれで良いのだと言ってくれた。
絶望なんてする必要ないと優しく撫でてくれた。

レイチェル様も優しく抱き締めてくれる。

レイチェル様が父から渡された掟を読み出すと涙を流し出した。

会った時から今まで見た事もない輝きをしていて、雰囲気からも5歳の子だとは信じられなかったのに、突然年相応の女の子の様に泣き出してしまった。

そして、感謝とラナを労る言葉を泣きながら精一杯伝えてくれる。

泣き続けるレイチェル様にどうしたら良いのかと困っていると銀髪の青年が笑って場を和ませてくれた。

林檎を食べる事になった。

その青年を先程妖精王は獣人と言ったが信じられなかった。

獣人が人間の姿をして人間と笑い合っているなんて聞いた事ない。

そして、私達の目から見ても彼らは人の姿をしている。

獣人に強制なんて出来ないだろうし、獣人の彼の少ししか知らない行動を思い返してもレイチェル様の事を心配や気遣っているのが分かる。

考えながら様子を見ていると妖精達がいつもの様に歌い出した。

妖精王オベロンの髪と同じ色の林檎が沢山なって喜んでいる。
妖精王に会えた事を喜んでいる。

みんなも一緒に歌ってと請われて歌い出す。
みんなの色んな気持ちが聞こえてくる。

イヴもハミングして喜びが伝わってくる。
その様子に涙が出た瞬間、目の前に座るレイチェル様が歌い出した。

その歌から伝わってくるのは、ラナの人達への感謝と尊敬、人間の1人としての謝罪。

彼女の輝きが強くなる。

レイチェル様に妖精が妖精王に会った時の様に喜んで集まってきている。
そして、輝く光が降り注ぐ。

その中を泣いていた少女は嬉しそうに笑って回った。
彼女の気持ちが伝ってくる。

そして、その歌声自体も今まで聴いたどの歌声より素晴らしかった。

先人達が伝えるラナの歌声はこんなだったんじゃないかと思った。

光の中、輝く少女は回り妖精と一緒に舞っている様だった。

その光景はラナの再来を見ている様だと思った。
そして、伝わってくる暖かい気持ちに何故だかみんな膝をついてその光景に涙していた。

その後も信じれない魔法を使って私達を驚かせた。

レイチェル様はみんなで話し出すと先に確認したい事があると願い出て私とイヴの事を質問してみんなの答えを聞くと満足そうに頷いていた。

話し合いの時、レイチェル様はみんなに言った。

「ラナが住みだした時と今では状況は違ってます。1000年近く厳しく掟を守ったからこそ、ラナは今や辺境の変わった少数民族として関心も集めず静かに暮らせています。今日のオベロンのお陰で森の警護も前よりしやすくなったでしょう。あの霧は人では抜けられません。今までラナの人達は外の人に優しく、自分達に厳しかったと思います。なので、もう少し自分達にも優しくして良いと思います。素敵な事は変わらずしんどいと感じる所は変えていけば良いと思います。素敵なラナの人達なら上手く変わっていけるはずです。」

レイチェル様はそう言って優しく笑った。

その人と出逢ってから私の世界は全て変わった。

私の折れた心の全てを掬いあげて口づけしてくれた妖精王と同じ衝撃を私に与えた。

私は出逢った。

光の様に輝く人に。

私は出逢った。

絶望を許さない人に。

私は出逢った。

優しく抱き締めてくれる人に。

私は出逢った。

私の世界を変える人に。

レイチェル・サン・ヴィクトリア
私はその人に出逢った。

















































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