不機嫌なヒーロー

でんし

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2.回想(永久編)

1.ヒーローの誕生(永久視点)

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(こんな態度を取っていたら、悠人はますます俺から離れていくんだろうな。)

小さくなっていく悠人の後ろ姿を見つめながら、ぼんやりとそう思った。

(…でも、それでいい。俺はもう、ヒーローにはなれないのだから。)

ある時、俺は「ヒーローになる」という幼い頃からの夢を捨てた。それが悠人を守る為だったとはいえ、この夢を捨てた俺が、悠人の傍にいてもいいとは到底思えなかった。

「それでもまだ悠人の傍にいたい」という自分の心の声を無視して、俺は呟いた。

「約束は守る。今度こそ。」



俺がヒーローになる夢を抱いたのは、俺と悠人がまだ幼稚園に通っていた頃のことだ。

あの頃の俺は、今と違って自分のことが嫌いじゃなかった。それに友達もそれなりにいたと思う。

その一方で、悠人は今よりももっと内気で、身体も弱かった。幼稚園を休むことが多かったし、来たとしても母親から離れようとしなかった。母親が帰ってしまうと、今度は幼なじみの俺から離れようとしなかった。

俺は悠人のことを弟みたいに思っていたから、頼りにしてもらえていることが嬉しかった。

そして自分を頼ってくれる悠人を、他の誰かを守れるヒーローになりたいと思うようになるまでに、時間はかからなかった。


卒園が迫ってきたある日、先生が言った。
 
先生「今日はみんなの将来の夢を聞きたいと思います。みんな、将来はどんな人になりたいかな?」

クラスの皆が看護師や野球選手などと答えるなか、俺は何の躊躇いもなく、こう答えた。

永久「ヒーローになりたい!!」

そう答えた途端、皆が笑いだした。もうすぐ小学生になるのに、まだヒーローなんかに憧れているのか、と。

自分の夢をバカにされて、悔しかった。でも、俺の夢を笑わなかった人が二人だけいた。先生と…悠人だ。

先生「ヒーローになりたい、というのも素敵な夢ですね。永久君ならきっとなれますよ。」

悠人「永久くんならきっと、みんなのヒーローになれるよ。だって、僕のヒーローだもん。」

悠人は俺の夢を聞いて、にこっと笑った。

クラスの皆とは違う、悠人の純粋な笑顔に背中を押された気がした。きっと、俺の夢は間違ってない。悠人を笑顔にできる夢なのだから。


俺は、そう信じていた。


卒園式の日、小学校では違うクラスになってしまい不安だと泣いている悠人に、俺は四つ葉のクローバーで作った栞を渡した。

永久「これ、母さんに頼んで作ってもらったんだ。寂しい時やつらい時、この栞が俺の代わりに悠人を守ってくれる。それに、呼んでくれれば俺がいつでも助けに行くから。約束だ!」

悠人「こ、これ、僕にくれるの…?」

永久「ああ、俺は悠人のヒーローだから。ヒーローは大事な人を守るんだ!」

悠人「…ありがとう、ずっと大切にするね。」

悠人は目に涙をためたまま、嬉しそうに微笑んだ。

俺は自分の頬が少し熱くなるのを感じた。
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