天界アイドル～ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら～

第十六章 アトランティスの真相編

第45話‐2 最高神ゼウス

ナルキッソスは、自分しか愛せない呪いに今も葛藤する思いがあった。
だが彼は変わり始めていた。

義務感でしかなかったアイドルとしての活動に、生きがいを見出すようになったからだった。

そして仲間との関わりが、彼の心に変化をもたらしていたのだった。


ガニュメデスも内心は重い気持ちを抱えていた。

ヒュアキントスとアドニスの処分はまだ保留のままだからだ。


彼らは何も知らず、生活を送っている。そのこともガニュメデスの心を重くさせていた。
何も知らずに笑ったりふざけたりしている彼らを見ていて、心が痛まないはずがなかった。

(事が大きすぎて、僕にはどうしようもできない…だが、このまま見て見ぬふりをするのは限界だ……）


彼らを救う方法はないのかーーー
（どうすれば良いのだろう・・・）


***


1ヶ月後ーーーついにアルバムは完成した。
あとは発売を待つばかりとなったのである。


このアルバムを発売すれば、彼らの最終ゴール達成条件である1万人収容のライブを開催することが可能となる。

つまり、彼らのゴールがいよいよ目前にまで迫ってきたのだ。

「とうとうここまで来たな……」
感慨深げに呟くアドニスの言葉に全員が頷いた。

「ああ・・・」
「長かったような短かったような感じだね」


あとは発売日の決定をマスターが知らせるだけだった。


***

その日、珍しくオフの日だったガニュメデスはある者と会う約束をしていた。

「おお、ガニュメデス。相変わらず美しいな」

そう言ってガニュメデスの前に現れたのはシリウス最高神ゼウスだった。
相変わらず陽気な雰囲気を漂わせている彼を見て、ガニュメデスは少し呆れた表情をしてみせた。

（まったくこの人はいつも能天気なんだからなぁ・・・まあそこがいいところでもあるんだけど）

そんなことを思いながら彼を見つめていたら、その視線に気づいたのか不思議そうに見つめ返してきたので慌てて視線を外したのだった。


そんなガニュメデスの様子に気づいていないのか、それとも気にしていないのかはわからないが、ゼウスは相変わらずニコニコしながら話しかけてきたのだった。


「ところで今日はどうしたのだ？」


その言葉にガニュメデスは少し気まずそうに視線を泳がせたが、意を決したように話し始めたのだった。

「ゼウス様。折り入って貴方にお願いしたいことがあるのです」