天界アイドル~ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら~

B-pro@神話創作してます

文字の大きさ
140 / 295
第十六章 アトランティスの真相編

第46話‐1 デメテルの思い

しおりを挟む
第46話「デメテルの思い」


ガニュメデスがゼウスと会って話をしていた頃。
アポロンはオリンポス12神の1人である豊穣の女神デメテルと会っていた。

無論、ヒュアキントスとアドニスの件に関して話し合うためだった。

彼女は1万3千年前まで、この2人の上司だった。



彼女が管轄している植物園の一角にあるテラス席で二人は向かい合って座っていた。テーブルの上には紅茶の入ったティーカップが置かれており、湯気が立ち上っていることから淹れてからそれほど時間が経っていないことが窺えた。


「あの子達のことは最近知ったの。うちの娘が、アドニスのことを気に入ってね……TVに出ているのを見て、ファンになったって騒いでたの」


デメテルの最愛の娘であるペルセポネは、冥府の王ハデスの妻であり、冥界の女王である。

彼女は普段はおとなしい性格なのだが、一度暴走し始めると手がつけられなくなる困った一面も持っていたのだった。

その話を聞いたアポロンは思わず苦笑いしてしまった。何故なら彼女の性格を知っているからだ。


何でもアドニスのことが好きすぎてファンクラブにまで入会したらしく、かなりの熱狂ぶりのようだ。

グッズを揃えたり、彼が出ている全ての雑誌を買ったりなど、もはや信者といっても過言ではないくらいだった。

ついには、知り合いたいと考えるようになり、オリンポス12神であるデメテルに頼んでくるほどだったのである。


「それで・・・あなたはどうするつもりなのですか?」

その問いにデメテルは少し困ったような表情を浮かべて言った。

「娘は、私があの2人の元上司だと何も知らないから…彼らの罪のことも。私はまだあの2人と会うつもりはないけど、陰ながら見守りたいと思ってるわ」


「そうですか。私はあの2人の処分を回避させたいと考えています」

その言葉にデメテルは一瞬驚きの表情を見せたが、その後悲し気な表情になり俯いたのだった。


「私もそれは考えていたわ。でも無理でしょうね・・・1万3千年も保留にされていたくらいなのだから」
「確かに事は大きい。だが、逆に考えれば1万3千年も保留が許されていたのです。彼らにそれだけの価値があったということに他ならないのではないでしょうか?」
「そうね・・・」
「そして、彼らは音楽活動を命令され、今となっては有名になり一躍時の人となりました。これはチャンスだと思います」

そこまで言うと、デメテルは黙って彼の話を聞いていた。その表情には期待の色が浮かんでいるように見えた。



「・・・もしかして、それを狙った者がいるということかしら?」
「そうであれば、彼らが音楽活動を命令されたことも合点がいきますからね」


2人はお互いを見つめ合ったまま黙り込んだのだった。しばし沈黙の時間が流れる中、ふと思いついたようにデメテルが言ったのだ。




「ねえ・・・一つ聞いても良いかしら?」
「何でしょう?」
「・・・あなたが彼らを救おうとする理由は何なのかしら?あなたの口から聞かせてちょうだい」

真剣な眼差しを向ける彼女を見て、彼は覚悟を決めたかのように語り始めたのだったーーー


「私はヒュアキントスに恋心を抱き、そして彼も私を想ってくれるようになりました。彼のためではありますが、それだけではありません。彼らを見ていく内に…私も影響を少なからず受けた。不器用ながらひたむきに努力する彼らを見ていると応援してやりたいと思ったのです」

アポロンは真っすぐに見据えて言った。その瞳からは強い意志を感じたのだ。

「そう。あの子達には味方がいるようね。あの子達は神として未熟ではあるけれどーーひたむきなところは今も変わってないのね」

デメテルは昔を思い出しているかのような遠い目をしていた。その様子を見たアポロンは優しい笑みを浮かべていたのだったーーー

***


ガニュメデスやアポロンが、ヒュアキントス達の処分を回避させようと必死に動いていたその一方ーーー

そんなことを何も知らないナルキッソスは、彼自身のことで悩んでいたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...