148 / 295
第十七章 グループの分裂編
第49話‐2 去っていく仲間
しおりを挟む
「かっこいい・・・アドニス君、やっぱり好き♡」
アドニスの公式SNSを見ながら、ある女神がそう呟いていた。
彼女の名前はペルセポネという。 ギリシャ神話に登場する冥界の女王としても有名であり、豊穣の女神デメテルの最愛の娘でもある女神だ。
(お母さま、アドニス君を紹介してほしいって頼んだのに聞いてくださらなかったな…。男の子と関わることを警戒してるのかな?でも、諦めない!)
彼女はミーハーな所があり、アドニスを一目見て以来、熱烈なファンになっていた。
そしてペルセポネはある神に連絡を取ろうとしていたーーー
***
夜も更け、夜中の時間帯。
寮にいる美少年達も眠りについていた。
1人を除いては。
ガニュメデスはこの日も帰ってはこなかった。
皆が寝静まっている時、ある者が寮にやって来ていた。
その者は皆に気付かれぬよう、物音を立てないよう慎重に行動していた。
(よし……。荷物はこれで全部かな)
その者は手早く荷物をまとめ、部屋を出ていこうとしたときーーー
「おい、ガニュ」
「!?」
その者はガニュメデスだった。そしてこっそり帰ってきていた彼に声をかけたのはアドニスだった。
「……こんな時間に起きてるなんて、のんきな君にしては珍しいね」
「まあ、ちょっと眠れなくて」
少しの間沈黙が訪れた。
「こんな時間に帰ってくるなんて、そんなに俺達と顔を合わせたくないのか?」
「合わせる顔がないから。といっても、脱退するまでは嫌でも顔を合わせる時もあるけどね」
暗闇の中で、ガニュメデスは苦笑しながら答えた。
「お前、本当にやめるのか?本当は何か事情があるんだろ?」
「………」
(やはり彼は鋭いなあ…僕が怪しいことに気付いてたのも、君だけだったよね)
ガニュメデスはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「別に。もう僕の役目は終わったから」
「お前はそれでいいのか?」
「………」
(いいんだ、これで……。君達が助かるなら、それでいい……)
「僕は、寮を出ていくよ。まだ顔を合わせることもあるだろうけど、脱退する時期はマスターと相談して決めるから」
「……わかった。お前の意思を尊重するよ。だけど、いつでも戻ってきていいからな。お前は仲間なんだから」
「ありがとう……」
ガニュメデスは静かに微笑んだ。
「じゃあ、僕は行くよ。今まで世話になった」
ガニュメデスは振り切るように前を向き、玄関に向かった。
アドニスは見送るため、黙ってその後についていった。
玄関のドアに手をかけたガニュメデスは静かに振り返り、こう告げた。
「見送ってくれてありがとう。……僕は、君のこと好きだったよ」
切ない表情を浮かべながら、ガニュメデスは去って行った。
残されたアドニスは、ガニュメデスが去った後もその場に立ち尽くしていた。
「……ガニュメデス」
アドニスは茫然としたまま、その場にしばらくの間佇んでいた。
第50話に続く・・・
アドニスの公式SNSを見ながら、ある女神がそう呟いていた。
彼女の名前はペルセポネという。 ギリシャ神話に登場する冥界の女王としても有名であり、豊穣の女神デメテルの最愛の娘でもある女神だ。
(お母さま、アドニス君を紹介してほしいって頼んだのに聞いてくださらなかったな…。男の子と関わることを警戒してるのかな?でも、諦めない!)
彼女はミーハーな所があり、アドニスを一目見て以来、熱烈なファンになっていた。
そしてペルセポネはある神に連絡を取ろうとしていたーーー
***
夜も更け、夜中の時間帯。
寮にいる美少年達も眠りについていた。
1人を除いては。
ガニュメデスはこの日も帰ってはこなかった。
皆が寝静まっている時、ある者が寮にやって来ていた。
その者は皆に気付かれぬよう、物音を立てないよう慎重に行動していた。
(よし……。荷物はこれで全部かな)
その者は手早く荷物をまとめ、部屋を出ていこうとしたときーーー
「おい、ガニュ」
「!?」
その者はガニュメデスだった。そしてこっそり帰ってきていた彼に声をかけたのはアドニスだった。
「……こんな時間に起きてるなんて、のんきな君にしては珍しいね」
「まあ、ちょっと眠れなくて」
少しの間沈黙が訪れた。
「こんな時間に帰ってくるなんて、そんなに俺達と顔を合わせたくないのか?」
「合わせる顔がないから。といっても、脱退するまでは嫌でも顔を合わせる時もあるけどね」
暗闇の中で、ガニュメデスは苦笑しながら答えた。
「お前、本当にやめるのか?本当は何か事情があるんだろ?」
「………」
(やはり彼は鋭いなあ…僕が怪しいことに気付いてたのも、君だけだったよね)
ガニュメデスはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「別に。もう僕の役目は終わったから」
「お前はそれでいいのか?」
「………」
(いいんだ、これで……。君達が助かるなら、それでいい……)
「僕は、寮を出ていくよ。まだ顔を合わせることもあるだろうけど、脱退する時期はマスターと相談して決めるから」
「……わかった。お前の意思を尊重するよ。だけど、いつでも戻ってきていいからな。お前は仲間なんだから」
「ありがとう……」
ガニュメデスは静かに微笑んだ。
「じゃあ、僕は行くよ。今まで世話になった」
ガニュメデスは振り切るように前を向き、玄関に向かった。
アドニスは見送るため、黙ってその後についていった。
玄関のドアに手をかけたガニュメデスは静かに振り返り、こう告げた。
「見送ってくれてありがとう。……僕は、君のこと好きだったよ」
切ない表情を浮かべながら、ガニュメデスは去って行った。
残されたアドニスは、ガニュメデスが去った後もその場に立ち尽くしていた。
「……ガニュメデス」
アドニスは茫然としたまま、その場にしばらくの間佇んでいた。
第50話に続く・・・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

