天界アイドル～ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら～

第三十二章 最終章④ 新たな出発編

第102話‐1 ライトワーカー

第102話「ライトワーカー」

エロスとの会合は終わり、美少年達もそれぞれ仕事があるため、解散となった。

ヒュアキントスとアドニスは、気持ちの整理がつかず、2人で話すことにした。
2人はしばらく無言でいた。

いろいろなことを一気に知りすぎて、気持ちが追い付かないからだ。
先に口を開いたのは、ヒュアキントスだった。

「ねえ、アドニス」
「ん？」
「僕、正直まだ信じられないよ……僕達が人工的に作られた神で、実験体だったなんて……」
「そうだな。俺もショックだし信じたくない気持ちもある。だけど受け入れるしかないんだろうな」

2人はまたしても沈黙する。
アドニスが言う通りに、こうして生きている以上、受け入れるしかないだろう。
エロスの温情により、大罪を犯したにも関わらず、生かされたのだから・・・


「俺たちの正体を知って複雑だけど、念願だった神格も取り戻せて、みんなのおかげで罪も許された……俺達は幸せ者だな」
「そうだね……。幸せだね僕たち……」

だがヒュアキントスの表情は曇っていた。
アドニスには痛いほどその理由がわかっていた。なぜなら、おそらく自分と同じ気持ちだろうから……。

「僕は本当に幸せ者だと思う。応援してくれたり助けてくれる人達がたくさんいてくれて、ガニュメデスやナルキッソスみたいな仲間思いの仲間もいて、それにアポロン様とも恋人になれて……でも……」

そこで言葉を切ったヒュアキントスの肩をアドニスは抱いた。


「わかってるさ、お前の気持ちは……」
「………僕達は幸せになれても……僕達は、アトランティス人達を助けられなかった………。水没する大陸と一緒にアトランティス人は……」

そうだ。
自分達は幸せでハッピーエンドになれても、1万3千年前のことだとしても、愛する人間たちを結局救うことができず、見捨てる形になったのは何も変わらない。

どうしてもっと前に異変に気付けなかったんだろう？
どうしてあんなことになる前に、人間達の暴走を止めることができなかったんだろう？
どうしてもっと、神として人間達のために尽くせなかったのだろう？ 


どうして、どうして、どうして………


深い、深い後悔と悲しみの念が2人に押し寄せてくる。