11 / 14
3人とバランス
しおりを挟む
「なんとなく自分の心が分かってきた気がするんです」
「どういうこと?」
晴美は用事があり、実家に戻っていた。
久しぶりの2人きりに一戦交えた後のこと。
「晴美はずっと純粋でした。私と違って欲しいものも譲るような子だったんです」
「まぁ、なんとなく分かるよ」
「ずっと、ほかの友達と晴美とは何か違う違和感はあったんです。なんなのか分からなかったけど、今日の話を聞いて思ったんです、私と晴美の間には駆け引きも、張り合いもなかった」
「それで?」
「伸一さんが奥さんを2人にするかって冗談が引っ掛かりました」
「マズい発言だった?」
「いえ、それもありなのかなって…」
「えっ?いやいや冗談だよ。彼女に下心はないよ」
「それは分かってます。ただ、ふつうは想像するのも嫌ですよね?でも、嫌悪感が無かったので…」
「でもさ、現実じゃないから気にしてないってこともあるよ」
「そうかも知れません、実際には無理って話ですよね。ただ思い当たることがあって…」
「いつのこと?」
「影山のことでマンションに行った時に、自分だけ幸せになって置いて行かれた気がしたって言われました。あの時は晴美にふさわしい彼氏がいないからと思っていたんです、でも、あれは私が伸一さんと付き合って、晴美のそばからいなくなるのが嫌だったのかなって…」
「悦子に恋してる訳じゃないよね?」
「そうではないと思います。ただ、高校生の頃から私が色々と面倒を見てきたので依存しているのかも知れません」
「うーん…いわれるとそんな気もするね」
「たぶん、晴美自身も気づいてないと思います」
「つまり、彼女は悦子が居なくなるのが一番堪えるってわけか…」
「だから、ここに来るのも受けたんだと思います」
「悦子さえ、いてくれればそれでいいと…でも、俺への好意ってのは?」
「それはホントだと思います。晴美の性格では隠し事は出来ません。おそらく、一緒に住むようになって私の愛した人が晴美も求めていた人だと気付いたんだと思います」
「つまり、こういうことかな? 彼女は悦子に依存しつつ、俺への好意を抱いた、でも奪い取るような邪心は無いから言わずにいる、だから悦子もわだかまりが生まれない…と?」
「さすが伸一さんですね、やっぱり私の愛した人です」
「と、なれば問題は思いつくだけでも3つあるよね」
「なんですか?」
「1つは悦子がホントに受け入れられるか、ということ。もう1つは俺はどうするかってことだ」
「確かに…そうですよね」
「んで、最後は窯所がホントにそうなのか?ってことだ」
「はい」
翌日。
実家から晴美が戻ってきた。
悦子がリビングに呼んだ。
「どうしたの?」
「これから大事な話をするから、晴美も正直に答えてね」
「う…うん…なに?」
「怖がらないで。責めるつもりもないし本心聞いても私は嫌いなったりしないから」
晴美は伸一と悦子を見て頷いた。
「晴美さ…伸一さんのこと好きでしょ?」
「えっ…」
そのまま俯いてしまった。
「当たってるでしょ?」
しばらく動かにかったが黙って頷いた。
「やっぱりね、それからもう1つ聞くけど、アタシがいなくなったらイヤ?」
晴美はバッと顔を上げて首を激しく振った。
「ちゃんと答えて…」
「イヤ!絶対にイヤ!」
伸一と悦子は顔を見合わせた。
「分かった…昨日ね、伸一さんと2人で話したんだけど、最初は晴美をなんとか立ち直らせたいと思ってたんだけど、もしかしたら3人の問題になるかも知れないの」
「えっ…どういうこと?」
「男の人を信用できるようになった?」
「…まだ…」
「だよね、じゃあ伸一さんは信用できる?」
「……うん」
「どうして?」
「…だって、私のこと助けてくれたし…悦子の旦那さんだし…」
「他の人を探したいと思う?」
「…分からない…見つけたいけど怖いし…どうしていいのか…」
「じゃあ、ハッキリ言うね? このまま、ずっと3人で暮らすっていうのはどう思う?」
「ええっ? ずっと…?」
「そう、もちろんセックスもあり…で」
「え…あ…えっ?」
誰でも戸惑うだろう。
こんな提案聞いたことがない。
「もちろん、伸一さんとアタシは夫婦よ、これから子供も作りたいしね。でも、そうなると晴美の居場所がなくなってしまうでしょ?だから、伸一さんと晴美の間にも子供を作るの…」
「え…意味分かんない…え?」
「けど、どうなるか分からないこともあるの。伸一さんと晴美がセックスするのをアタシが受け入れられるのか?
それから伸一さんと晴美の間に恋愛が生まれるのか? 」
「晴美さん、いきなりの提案に混乱してるよね?」
「はい…」
「だから、簡潔に話すけど今のキミは悦子への依存と俺への好意があるだろう?」
少し考え込んだ。
確かに、と感じた。
「はい…ごめんなさい」
「それはいいんだよ、だけど、このままだとキミは悦子に言えないまま苦しむことになる、それは悦子も望むことではない、別に追い出したくて言ってることではないよ。俺たち2人が晴美さんを支えるってことだ」
「でも、そんなの私に都合良すぎです」
「いや、辛い面もある。俺と悦子は夫婦だが、晴美さんは公認の愛人ってことになる」
「……」
「あとは世間的な問題もたくさんある。晴美さんの両親だって納得なんかしない。形上はずっと独身のままだ。そこに子供が出来たら完全な不倫か行きずりの男の子としか思われない、縁を切られるかも知れない」
晴美は黙り込んだ。
「…やっぱりここにいちゃいけないですよね」
「それは違うわよ」
「だって、私のことで2人にいっぱい迷惑かけてるんだもの…いいの、私はなんとかやっていけるから…」
そう言って晴美は外に飛び出した。
「晴美!」
悦子が遅れて追ってきた。
道路に出たところで悦子が追いついた。伸一もすぐ後ろにいた。
「晴美!」
腕をつかんで体を引き寄せた時である。
「いや!離して!」
ドンと突き放したとき、縁石に脚が引っ掛かり悦子は転んで頭を打った。
切れたらしく血が滲み出た。
晴美はとっさに悦子をかかえた。
「悦子!悦子!いやぁぁぁ!」
気を失った悦子。
反応はない。
伸一は救急車を呼んだ。
満月が煌々と3人を照らしていた。
悦子の目が覚めると白い光景が広がった。
「ん…」
憔悴しきった晴美は悦子の声に反応した。
「悦子!」
「…どこ?」
「悦子!ごめんなさい!ホントにごめんなさい!」
伸一がどこからか病室に戻ってきた。
「悦子…目が覚めたか?」
「…伸一さん…」
「大丈夫だ、頭の皮膚が切れて血が出たけど脳も頭蓋骨も問題ないって」
その言葉が晴美を少し安心させた。
「ごめんなさい…悦子…ごめんなさい」
悦子は力強く手を握る晴美を見て微笑んだ。
「いいのよ…アタシが変なこと言ったせいよね」
晴美は泣いていた。
「伸一さん…晴美と2人にしてくれますか?」
「あぁっ…」
静かにドアを閉めて伸一はロビーに向かった。
「ごめんなさい…私…悦子が死んだと思って」
「…いいのよ、たとえ死んでも晴美を恨んだりしないから…」
「だって…」
「聞いてくれる?」
「…うん」
「…確かに、アタシの言ったことは常識じゃないのは分かってるの。でもね、晴美がアタシを必要としているようにアタシも晴美が離れるのは嫌なのよ」
泣きじゃくっていた晴美は、その言葉に驚いた。
「どうして?」
「うまく言えないんだけど…晴美がいたから今のアタシが居るのよ。もしかしたらアタシ達は2人で1人なのかも知れない…」
「でも、いっつも悦子には助けられてばかり…」
「…そうかもね…でも、晴美はいつも駆け引きなく付き合ってくれたわ。それが嬉しかったの…そして、ずっと晴美に癒されてた…」
「無邪気? 私が?」
「そう…ほら、高校生の時に忘れ物ばかりしてたから、晴美が気を利かせて用意してくれてたでしょ?」
「あぁっ…だって、あれは悦子がすぐアチコチに物置いて忘れるから…」
「…ふふっ、あの頃はだらしなかったからね、なんか晴美が奥さんみたいだった…」
「ふっ…そうね」
「男のことになると何も言えないくせに、アタシの忘れ物には口酸っぱく怒ってた…」
「…そうだった…ね」
「怒ってる晴美って可愛いのよ、それがアタシの癒しになってた…」
「もう昔のことよ?」
「そうね…でも、アタシ達は離れられないと思わない?」
「…うん…でも」
「どうしてもダメなら止められない。出ていくのも仕方ないわ。ただ、本気で話したことよ。馬鹿げてるけど、非常識な話だけど、アタシと晴美は2人でいないとダメなの。ちゃん考えてくれない?それでダメなら止めないから」
晴美は黙って頷いた。
悦子は優しく微笑んだ。
「…少し寝るね」
「うん、ゆっくり休んで」
晴美はロビーに座っている伸一を見つめて横に座った。
「いま、寝ました」
「そう」
「ホントに申し訳ありません」
「いいですよ、異常も無かったし…どうだった話し合いは?」
「…はい」
晴美は伸一に全てを伝えた。
「そっか…確かにおかしな話だよね、晴美さんに愛人になれって言うことだからね」
「でも、正直言って山咲さんと悦子の中に居てもいいのは嬉しい気持ちなんです」
「障害は山ほどあるけど、肝心なのはバランスの問題かな…」
「バランスですか?」
「うん、俺と悦子は夫婦として、俺と晴美さんは第二の夫婦として。そして晴美さんと悦子は友人として」
「…そうかもしれませんね」
「悦子が言ってたんだけどね。俺と晴美さんが寝るのはアリかもって…そこに嫉妬が湧かないんだってさ」
「どうしてなんですか?そこが分かりません」
「悦子が言うには晴美さんには邪心が無いからだって。例え、俺と晴美さんが寝ても悦子から奪うことはしない人だって言ってた。それは俺もそう思う」
「…でも、先々は分からないですよね?」
「うん、だからバランスが大事なんだと思う」
「……」
「君たち2人を見てると、親友という枠に収まらないように思ってるんだよ」
「えっ?」
「夫婦っぽくも彼氏彼女っぽくも見える時がある」
「そうですか?」
「ここで言うことじゃなくて申し訳ないが、悦子に抱かれてイヤな気分だった?」
顔が真っ赤になって俯いたが、首は横に振っていた。
「もしかしたら、俺ら3人はこうなる運命なのかも知れない」
「山咲さんはどうなんですか?あの話…」
「うん、まぁ最初は驚いた。どちらかというと悦子の入れ込みようが強かったからね、俺はそれを応援する…みたいな感覚だった。けど…」
「けど…なんですか?」
「晴美さんにも興味が出てきた…というのもある。確かに悦子とは違う天然?というのか癒しはあるね」
「哀れみとかじゃないよ、ほっとけないって感じかな。それに悦子の2人で1人っていうのは分かる気がする」
「あの…悦子とは上手くいってますよね?」
「もちろんだ、けど悦子はいつも晴美さんの心配をしていた…だから、なんとなく晴美さんが居ても当たり前みたいな感覚はあったんだ…」
「…そうなんですね」
「悦子は気が強そうだけど、弱い面もある。そんな時は晴美さんで癒されてたのかもなぁ」
「そんな風には見えなかったな…」
「晴美さんの事になるといつも必死だった。影山の時もそうだった。いつも悦子の後ろには晴美さんが居たように思うよ」
「…あの話ですけど、しばらく考えさせてもらえませんか?」
「そうだよね、すぐに結論が出る話じゃないしね」
悦子は大事をとって3日後に退院した。
「どうだ?」
「はい、時々ズキッと痛みますけど大丈夫です」
「悦子、家事はしばらく私がやるから」
「大丈夫よ、こんなの」
「ダメ!絶対ダメ!させないから!」
「ふふっ…はいはい、じゃあ、晴美にお任せします」
「なんだ、悦子も晴美さんには弱いのか?」
「こういう時は強いんです」
「ち、違うわ…だって、私のせいだから…」
「それはもういいの!」
「ははっ…今日は晴美さんの言う事聞いた方がいいな」
「そうねー、よろしくね」
晴美はキッチンで支度にかかった。
「ホントに大丈夫か?」
「はい…しばらく通院しますけど」
「あの話だけど、しばらく考えさせてくれってさ…」
「そうですね、私も晴美とは話しますから」
「2人で1人かぁ…そうかも知れないなぁ」
「聞いたんですね」
「うん、ロビーで色々話した。でも、晴美さんも納得してたよ」
「やっぱり離れられないのかも…あの…後悔してませんか?」
「大丈夫!それは無い!安心していい」
悦子はその口調で安心した。
伸一は、ホントに思ってる時は口調が強くなるクセがあった。
今までで、それが違ったことが無い。
「もしね、3人で暮らすことになったら、色々考えなきゃならないけど、苦にはならないよ。2人とも幸せにしたいからね」
「…ありがとうございます!アタシのワガママを受け入れてくれて…」
晩御飯を食べて、晴美は自室に戻った。
今頃は考えてるだろう。
「悦子…」
「はい?」
「幸せか?」
「はい!とっても幸せです」
悦子はこの質問を時々聞かれる。
その度に満遍の笑みで返す。
「夫婦の形も様々だよな。俺たち3人もさ、3人が居てホントの幸せかも知れないな」
「アタシは、嫉妬とか同情とかじゃなくて、晴美にもこの幸せを分けてあげたいんです」
「悦子らしいな…」
「そう思ったのは伸一さんだからなんですよ」
「どういうこと?」
「普通の男なら、2人の女とヤレるとか囲えるとか、単純に考えて同意すると思うんです。でも、伸一さんは違います。アタシと晴美の将来も考えてくれる、そういう目線で見てくれると思ったんです」
「ははっ…まぁ、世間から見たらオンナ垂らしか、だらしない男女にしか見えないだろうね」
「はい、そーですよね!先々の障害を思ったら出来ないコトだと思います…」
「でも、なんとかなるよ!それでちょっと考える事があるんだ」
「何ですか?」
「もしかしたら、独立するかも知れない」
「えっ?何かするんですか?」
「まだ構想の段階だけどね…3人と将来の子供とか考えたらね。それと不況の今だからチャンスでもある。反対かな?」
悦子は驚いたが、不思議と不安は無かった。
伸一なら、出来るような気がした。
「もし、決まったら教えて下さい。たとえダメでもついていきます」
「ありがとう…因みにさ、あのボンボン連中とは繋がってる?」
「たまに電話します。タク達もそれぞれ会社で頑張ってるみたいです!」
「それは何よりだ!彼らには、そのうち会うことになるかも知れないから…」
「えっ?彼らとするんですか?」
「いや、資金面でね…」
「なるほど…彼らも伸一さんの話してますよ」
「へぇ…」
「影山を追い詰めた時が1番エキサイトしたって言ってます…ふふっ」
「あー、そうかぁ…じゃその時はお願いするわ」
「はい」
「どういうこと?」
晴美は用事があり、実家に戻っていた。
久しぶりの2人きりに一戦交えた後のこと。
「晴美はずっと純粋でした。私と違って欲しいものも譲るような子だったんです」
「まぁ、なんとなく分かるよ」
「ずっと、ほかの友達と晴美とは何か違う違和感はあったんです。なんなのか分からなかったけど、今日の話を聞いて思ったんです、私と晴美の間には駆け引きも、張り合いもなかった」
「それで?」
「伸一さんが奥さんを2人にするかって冗談が引っ掛かりました」
「マズい発言だった?」
「いえ、それもありなのかなって…」
「えっ?いやいや冗談だよ。彼女に下心はないよ」
「それは分かってます。ただ、ふつうは想像するのも嫌ですよね?でも、嫌悪感が無かったので…」
「でもさ、現実じゃないから気にしてないってこともあるよ」
「そうかも知れません、実際には無理って話ですよね。ただ思い当たることがあって…」
「いつのこと?」
「影山のことでマンションに行った時に、自分だけ幸せになって置いて行かれた気がしたって言われました。あの時は晴美にふさわしい彼氏がいないからと思っていたんです、でも、あれは私が伸一さんと付き合って、晴美のそばからいなくなるのが嫌だったのかなって…」
「悦子に恋してる訳じゃないよね?」
「そうではないと思います。ただ、高校生の頃から私が色々と面倒を見てきたので依存しているのかも知れません」
「うーん…いわれるとそんな気もするね」
「たぶん、晴美自身も気づいてないと思います」
「つまり、彼女は悦子が居なくなるのが一番堪えるってわけか…」
「だから、ここに来るのも受けたんだと思います」
「悦子さえ、いてくれればそれでいいと…でも、俺への好意ってのは?」
「それはホントだと思います。晴美の性格では隠し事は出来ません。おそらく、一緒に住むようになって私の愛した人が晴美も求めていた人だと気付いたんだと思います」
「つまり、こういうことかな? 彼女は悦子に依存しつつ、俺への好意を抱いた、でも奪い取るような邪心は無いから言わずにいる、だから悦子もわだかまりが生まれない…と?」
「さすが伸一さんですね、やっぱり私の愛した人です」
「と、なれば問題は思いつくだけでも3つあるよね」
「なんですか?」
「1つは悦子がホントに受け入れられるか、ということ。もう1つは俺はどうするかってことだ」
「確かに…そうですよね」
「んで、最後は窯所がホントにそうなのか?ってことだ」
「はい」
翌日。
実家から晴美が戻ってきた。
悦子がリビングに呼んだ。
「どうしたの?」
「これから大事な話をするから、晴美も正直に答えてね」
「う…うん…なに?」
「怖がらないで。責めるつもりもないし本心聞いても私は嫌いなったりしないから」
晴美は伸一と悦子を見て頷いた。
「晴美さ…伸一さんのこと好きでしょ?」
「えっ…」
そのまま俯いてしまった。
「当たってるでしょ?」
しばらく動かにかったが黙って頷いた。
「やっぱりね、それからもう1つ聞くけど、アタシがいなくなったらイヤ?」
晴美はバッと顔を上げて首を激しく振った。
「ちゃんと答えて…」
「イヤ!絶対にイヤ!」
伸一と悦子は顔を見合わせた。
「分かった…昨日ね、伸一さんと2人で話したんだけど、最初は晴美をなんとか立ち直らせたいと思ってたんだけど、もしかしたら3人の問題になるかも知れないの」
「えっ…どういうこと?」
「男の人を信用できるようになった?」
「…まだ…」
「だよね、じゃあ伸一さんは信用できる?」
「……うん」
「どうして?」
「…だって、私のこと助けてくれたし…悦子の旦那さんだし…」
「他の人を探したいと思う?」
「…分からない…見つけたいけど怖いし…どうしていいのか…」
「じゃあ、ハッキリ言うね? このまま、ずっと3人で暮らすっていうのはどう思う?」
「ええっ? ずっと…?」
「そう、もちろんセックスもあり…で」
「え…あ…えっ?」
誰でも戸惑うだろう。
こんな提案聞いたことがない。
「もちろん、伸一さんとアタシは夫婦よ、これから子供も作りたいしね。でも、そうなると晴美の居場所がなくなってしまうでしょ?だから、伸一さんと晴美の間にも子供を作るの…」
「え…意味分かんない…え?」
「けど、どうなるか分からないこともあるの。伸一さんと晴美がセックスするのをアタシが受け入れられるのか?
それから伸一さんと晴美の間に恋愛が生まれるのか? 」
「晴美さん、いきなりの提案に混乱してるよね?」
「はい…」
「だから、簡潔に話すけど今のキミは悦子への依存と俺への好意があるだろう?」
少し考え込んだ。
確かに、と感じた。
「はい…ごめんなさい」
「それはいいんだよ、だけど、このままだとキミは悦子に言えないまま苦しむことになる、それは悦子も望むことではない、別に追い出したくて言ってることではないよ。俺たち2人が晴美さんを支えるってことだ」
「でも、そんなの私に都合良すぎです」
「いや、辛い面もある。俺と悦子は夫婦だが、晴美さんは公認の愛人ってことになる」
「……」
「あとは世間的な問題もたくさんある。晴美さんの両親だって納得なんかしない。形上はずっと独身のままだ。そこに子供が出来たら完全な不倫か行きずりの男の子としか思われない、縁を切られるかも知れない」
晴美は黙り込んだ。
「…やっぱりここにいちゃいけないですよね」
「それは違うわよ」
「だって、私のことで2人にいっぱい迷惑かけてるんだもの…いいの、私はなんとかやっていけるから…」
そう言って晴美は外に飛び出した。
「晴美!」
悦子が遅れて追ってきた。
道路に出たところで悦子が追いついた。伸一もすぐ後ろにいた。
「晴美!」
腕をつかんで体を引き寄せた時である。
「いや!離して!」
ドンと突き放したとき、縁石に脚が引っ掛かり悦子は転んで頭を打った。
切れたらしく血が滲み出た。
晴美はとっさに悦子をかかえた。
「悦子!悦子!いやぁぁぁ!」
気を失った悦子。
反応はない。
伸一は救急車を呼んだ。
満月が煌々と3人を照らしていた。
悦子の目が覚めると白い光景が広がった。
「ん…」
憔悴しきった晴美は悦子の声に反応した。
「悦子!」
「…どこ?」
「悦子!ごめんなさい!ホントにごめんなさい!」
伸一がどこからか病室に戻ってきた。
「悦子…目が覚めたか?」
「…伸一さん…」
「大丈夫だ、頭の皮膚が切れて血が出たけど脳も頭蓋骨も問題ないって」
その言葉が晴美を少し安心させた。
「ごめんなさい…悦子…ごめんなさい」
悦子は力強く手を握る晴美を見て微笑んだ。
「いいのよ…アタシが変なこと言ったせいよね」
晴美は泣いていた。
「伸一さん…晴美と2人にしてくれますか?」
「あぁっ…」
静かにドアを閉めて伸一はロビーに向かった。
「ごめんなさい…私…悦子が死んだと思って」
「…いいのよ、たとえ死んでも晴美を恨んだりしないから…」
「だって…」
「聞いてくれる?」
「…うん」
「…確かに、アタシの言ったことは常識じゃないのは分かってるの。でもね、晴美がアタシを必要としているようにアタシも晴美が離れるのは嫌なのよ」
泣きじゃくっていた晴美は、その言葉に驚いた。
「どうして?」
「うまく言えないんだけど…晴美がいたから今のアタシが居るのよ。もしかしたらアタシ達は2人で1人なのかも知れない…」
「でも、いっつも悦子には助けられてばかり…」
「…そうかもね…でも、晴美はいつも駆け引きなく付き合ってくれたわ。それが嬉しかったの…そして、ずっと晴美に癒されてた…」
「無邪気? 私が?」
「そう…ほら、高校生の時に忘れ物ばかりしてたから、晴美が気を利かせて用意してくれてたでしょ?」
「あぁっ…だって、あれは悦子がすぐアチコチに物置いて忘れるから…」
「…ふふっ、あの頃はだらしなかったからね、なんか晴美が奥さんみたいだった…」
「ふっ…そうね」
「男のことになると何も言えないくせに、アタシの忘れ物には口酸っぱく怒ってた…」
「…そうだった…ね」
「怒ってる晴美って可愛いのよ、それがアタシの癒しになってた…」
「もう昔のことよ?」
「そうね…でも、アタシ達は離れられないと思わない?」
「…うん…でも」
「どうしてもダメなら止められない。出ていくのも仕方ないわ。ただ、本気で話したことよ。馬鹿げてるけど、非常識な話だけど、アタシと晴美は2人でいないとダメなの。ちゃん考えてくれない?それでダメなら止めないから」
晴美は黙って頷いた。
悦子は優しく微笑んだ。
「…少し寝るね」
「うん、ゆっくり休んで」
晴美はロビーに座っている伸一を見つめて横に座った。
「いま、寝ました」
「そう」
「ホントに申し訳ありません」
「いいですよ、異常も無かったし…どうだった話し合いは?」
「…はい」
晴美は伸一に全てを伝えた。
「そっか…確かにおかしな話だよね、晴美さんに愛人になれって言うことだからね」
「でも、正直言って山咲さんと悦子の中に居てもいいのは嬉しい気持ちなんです」
「障害は山ほどあるけど、肝心なのはバランスの問題かな…」
「バランスですか?」
「うん、俺と悦子は夫婦として、俺と晴美さんは第二の夫婦として。そして晴美さんと悦子は友人として」
「…そうかもしれませんね」
「悦子が言ってたんだけどね。俺と晴美さんが寝るのはアリかもって…そこに嫉妬が湧かないんだってさ」
「どうしてなんですか?そこが分かりません」
「悦子が言うには晴美さんには邪心が無いからだって。例え、俺と晴美さんが寝ても悦子から奪うことはしない人だって言ってた。それは俺もそう思う」
「…でも、先々は分からないですよね?」
「うん、だからバランスが大事なんだと思う」
「……」
「君たち2人を見てると、親友という枠に収まらないように思ってるんだよ」
「えっ?」
「夫婦っぽくも彼氏彼女っぽくも見える時がある」
「そうですか?」
「ここで言うことじゃなくて申し訳ないが、悦子に抱かれてイヤな気分だった?」
顔が真っ赤になって俯いたが、首は横に振っていた。
「もしかしたら、俺ら3人はこうなる運命なのかも知れない」
「山咲さんはどうなんですか?あの話…」
「うん、まぁ最初は驚いた。どちらかというと悦子の入れ込みようが強かったからね、俺はそれを応援する…みたいな感覚だった。けど…」
「けど…なんですか?」
「晴美さんにも興味が出てきた…というのもある。確かに悦子とは違う天然?というのか癒しはあるね」
「哀れみとかじゃないよ、ほっとけないって感じかな。それに悦子の2人で1人っていうのは分かる気がする」
「あの…悦子とは上手くいってますよね?」
「もちろんだ、けど悦子はいつも晴美さんの心配をしていた…だから、なんとなく晴美さんが居ても当たり前みたいな感覚はあったんだ…」
「…そうなんですね」
「悦子は気が強そうだけど、弱い面もある。そんな時は晴美さんで癒されてたのかもなぁ」
「そんな風には見えなかったな…」
「晴美さんの事になるといつも必死だった。影山の時もそうだった。いつも悦子の後ろには晴美さんが居たように思うよ」
「…あの話ですけど、しばらく考えさせてもらえませんか?」
「そうだよね、すぐに結論が出る話じゃないしね」
悦子は大事をとって3日後に退院した。
「どうだ?」
「はい、時々ズキッと痛みますけど大丈夫です」
「悦子、家事はしばらく私がやるから」
「大丈夫よ、こんなの」
「ダメ!絶対ダメ!させないから!」
「ふふっ…はいはい、じゃあ、晴美にお任せします」
「なんだ、悦子も晴美さんには弱いのか?」
「こういう時は強いんです」
「ち、違うわ…だって、私のせいだから…」
「それはもういいの!」
「ははっ…今日は晴美さんの言う事聞いた方がいいな」
「そうねー、よろしくね」
晴美はキッチンで支度にかかった。
「ホントに大丈夫か?」
「はい…しばらく通院しますけど」
「あの話だけど、しばらく考えさせてくれってさ…」
「そうですね、私も晴美とは話しますから」
「2人で1人かぁ…そうかも知れないなぁ」
「聞いたんですね」
「うん、ロビーで色々話した。でも、晴美さんも納得してたよ」
「やっぱり離れられないのかも…あの…後悔してませんか?」
「大丈夫!それは無い!安心していい」
悦子はその口調で安心した。
伸一は、ホントに思ってる時は口調が強くなるクセがあった。
今までで、それが違ったことが無い。
「もしね、3人で暮らすことになったら、色々考えなきゃならないけど、苦にはならないよ。2人とも幸せにしたいからね」
「…ありがとうございます!アタシのワガママを受け入れてくれて…」
晩御飯を食べて、晴美は自室に戻った。
今頃は考えてるだろう。
「悦子…」
「はい?」
「幸せか?」
「はい!とっても幸せです」
悦子はこの質問を時々聞かれる。
その度に満遍の笑みで返す。
「夫婦の形も様々だよな。俺たち3人もさ、3人が居てホントの幸せかも知れないな」
「アタシは、嫉妬とか同情とかじゃなくて、晴美にもこの幸せを分けてあげたいんです」
「悦子らしいな…」
「そう思ったのは伸一さんだからなんですよ」
「どういうこと?」
「普通の男なら、2人の女とヤレるとか囲えるとか、単純に考えて同意すると思うんです。でも、伸一さんは違います。アタシと晴美の将来も考えてくれる、そういう目線で見てくれると思ったんです」
「ははっ…まぁ、世間から見たらオンナ垂らしか、だらしない男女にしか見えないだろうね」
「はい、そーですよね!先々の障害を思ったら出来ないコトだと思います…」
「でも、なんとかなるよ!それでちょっと考える事があるんだ」
「何ですか?」
「もしかしたら、独立するかも知れない」
「えっ?何かするんですか?」
「まだ構想の段階だけどね…3人と将来の子供とか考えたらね。それと不況の今だからチャンスでもある。反対かな?」
悦子は驚いたが、不思議と不安は無かった。
伸一なら、出来るような気がした。
「もし、決まったら教えて下さい。たとえダメでもついていきます」
「ありがとう…因みにさ、あのボンボン連中とは繋がってる?」
「たまに電話します。タク達もそれぞれ会社で頑張ってるみたいです!」
「それは何よりだ!彼らには、そのうち会うことになるかも知れないから…」
「えっ?彼らとするんですか?」
「いや、資金面でね…」
「なるほど…彼らも伸一さんの話してますよ」
「へぇ…」
「影山を追い詰めた時が1番エキサイトしたって言ってます…ふふっ」
「あー、そうかぁ…じゃその時はお願いするわ」
「はい」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる