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一章 梅雨明け
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――物心ついたときから、男の人が好きだった。
初恋は、幼稚園の男の先生。
思いきってプロポーズしたら、先生には冗談だととられた上、友達や親からは変な目で見られた。
その次は、小学校のときの親友。
僕が彼を想っていたせいで、色々なすれ違いが重なり、結局彼に嫌われてしまった。
だから、もう、同性に恋なんてしない。
そう、決めていたのに。
今日また、新しい恋を見つけてしまった。
須貝守くん。
声とか、メッシュとか、細いのにしっかりしてる体型とか、すごく好きだ。
てか正直今までのこととか全部忘れるほど好きだ。
守くんは彼女いるのかな?経験あるのかな?もし僕と付き合ったらどっち側に――
(って僕なに考えてるんだ……)
うわー酷い、会ってまだ一分も経ってない上に言われた言葉が「お前、さっきから何?」だけなのに、変な妄想しか浮かばない。
煩悩を消すため、真剣な目で、横幅の広い汗っかきな担任を見つめる。
ネクタイの模様がハートだ。
とても萎えた。
「さーてと、自己紹介は終わったね。じゃあ先生の自己紹介をするね」
にこやかに語る中年太り先生。
けど、話も面白いし、去年の国語の授業は分かりやすかったし、教師としてはとても良い先生だ。
……って、僕は一体人をどんな目で見てるんだ……もうやだ……。
そして連絡のプリントを配られて、初日は終わった。
「佐々野くん、佐々野くん!」
帰る準備をしていたとき、声をかけられた。
そこには、髪を巻いた女の子が四人。
「うわー、近くで見てもイケメン!」
「ねえ、うちらといっしょ帰ろ~」
そう言ってけらけら笑う四人。
それにすぐに答えられず、思わず苦笑いする。
待って、女の子四人に男一人とか、端から見たら僕、女たらしじゃないか……!
こういうとき、前のクラスだったら友達がいたから、他の男子もついてきたけど……。
周りを見渡すと、みんなはこちらを気にせず帰っていた。
うん、知り合いとかいないよね。
元々、この高校に入学してから市内に引っ越してきたし、友達は少ない。
その上この学校は二年生からは文理で教室が別れるため、文系のこのクラスには男子が少ない。
どうしよう、何て断ろう……。
そう思ってちらりと、後ろをみると。
守くんが、机に突っ伏して寝ていた。
「……あ、僕、須貝くんと一緒に帰るから!」
咄嗟に言って、その須貝守くんを指差す。
女の子たちは不思議そうだったが、不良っぽい人と帰るのは嫌だったみたいで、
「あー、うん、わかったー!」
「じゃーねー!」
楽しそうに手を振り、教室を出ていった。
「うん、またね!」
僕も手を振り返し、ほっと肩をおろすと、
「誰がお前と帰るって?」
「あ」
守くんは目を覚ましていた。
ものすごく不機嫌そうだ。
とても興奮すr――じゃなくて。
「えっと……僕といっしょ帰ろ~?」
「誰が帰るか」
守くんは立ち上がってそう吐き捨てて、鞄を持って教室を出た。
嫌われたかな……と落ち込んでいたとき、彼の机の上にあるものを見つけた。
「あれ、筆箱――」
*
「今日はパンなんだね」
「ん」
メロンパンを持って、短く頷く守くん。
守くんには、初めはあれだけ嫌がられていたが、今では二人でお昼御飯を食べる仲になっていた。
今日は六月後半なのに、すごく晴れていて、せっかくだから屋上でご飯を食べることにした。
夏の近い、青い空が眩しい。
にしても……守くんにメロンパンっていう組み合わせ、とても可愛い。
僕も隣で、お母さんにつくってもらったお弁当を広げた。
「……そういえば守くん、前もメロンパン食べてたよね」
ふと聞くと、守くんはパンの袋を破りながら、思い出したように答える。
「ああ、そうだな、二回目だったか。あれは――」
……まだ、五月の連休が始まる前。
初恋は、幼稚園の男の先生。
思いきってプロポーズしたら、先生には冗談だととられた上、友達や親からは変な目で見られた。
その次は、小学校のときの親友。
僕が彼を想っていたせいで、色々なすれ違いが重なり、結局彼に嫌われてしまった。
だから、もう、同性に恋なんてしない。
そう、決めていたのに。
今日また、新しい恋を見つけてしまった。
須貝守くん。
声とか、メッシュとか、細いのにしっかりしてる体型とか、すごく好きだ。
てか正直今までのこととか全部忘れるほど好きだ。
守くんは彼女いるのかな?経験あるのかな?もし僕と付き合ったらどっち側に――
(って僕なに考えてるんだ……)
うわー酷い、会ってまだ一分も経ってない上に言われた言葉が「お前、さっきから何?」だけなのに、変な妄想しか浮かばない。
煩悩を消すため、真剣な目で、横幅の広い汗っかきな担任を見つめる。
ネクタイの模様がハートだ。
とても萎えた。
「さーてと、自己紹介は終わったね。じゃあ先生の自己紹介をするね」
にこやかに語る中年太り先生。
けど、話も面白いし、去年の国語の授業は分かりやすかったし、教師としてはとても良い先生だ。
……って、僕は一体人をどんな目で見てるんだ……もうやだ……。
そして連絡のプリントを配られて、初日は終わった。
「佐々野くん、佐々野くん!」
帰る準備をしていたとき、声をかけられた。
そこには、髪を巻いた女の子が四人。
「うわー、近くで見てもイケメン!」
「ねえ、うちらといっしょ帰ろ~」
そう言ってけらけら笑う四人。
それにすぐに答えられず、思わず苦笑いする。
待って、女の子四人に男一人とか、端から見たら僕、女たらしじゃないか……!
こういうとき、前のクラスだったら友達がいたから、他の男子もついてきたけど……。
周りを見渡すと、みんなはこちらを気にせず帰っていた。
うん、知り合いとかいないよね。
元々、この高校に入学してから市内に引っ越してきたし、友達は少ない。
その上この学校は二年生からは文理で教室が別れるため、文系のこのクラスには男子が少ない。
どうしよう、何て断ろう……。
そう思ってちらりと、後ろをみると。
守くんが、机に突っ伏して寝ていた。
「……あ、僕、須貝くんと一緒に帰るから!」
咄嗟に言って、その須貝守くんを指差す。
女の子たちは不思議そうだったが、不良っぽい人と帰るのは嫌だったみたいで、
「あー、うん、わかったー!」
「じゃーねー!」
楽しそうに手を振り、教室を出ていった。
「うん、またね!」
僕も手を振り返し、ほっと肩をおろすと、
「誰がお前と帰るって?」
「あ」
守くんは目を覚ましていた。
ものすごく不機嫌そうだ。
とても興奮すr――じゃなくて。
「えっと……僕といっしょ帰ろ~?」
「誰が帰るか」
守くんは立ち上がってそう吐き捨てて、鞄を持って教室を出た。
嫌われたかな……と落ち込んでいたとき、彼の机の上にあるものを見つけた。
「あれ、筆箱――」
*
「今日はパンなんだね」
「ん」
メロンパンを持って、短く頷く守くん。
守くんには、初めはあれだけ嫌がられていたが、今では二人でお昼御飯を食べる仲になっていた。
今日は六月後半なのに、すごく晴れていて、せっかくだから屋上でご飯を食べることにした。
夏の近い、青い空が眩しい。
にしても……守くんにメロンパンっていう組み合わせ、とても可愛い。
僕も隣で、お母さんにつくってもらったお弁当を広げた。
「……そういえば守くん、前もメロンパン食べてたよね」
ふと聞くと、守くんはパンの袋を破りながら、思い出したように答える。
「ああ、そうだな、二回目だったか。あれは――」
……まだ、五月の連休が始まる前。
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