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1章:冒険の終わりと物語の始まり
わがまま
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マリーはクロウの姿を見かけると、目を見開きその表情には恐怖が宿った。
「なっ・・・どうしてあなたがっ!?」
そう言いながら後ずさった。クロウは無言でマリーへ近づき、そして腰に付けた刀袋から抜身の刀を取り出した。その様子を見た彼女は引きつらせた笑顔を浮かべ
「どういうつもりだい?冗談にしてもたちがわるすぎやしないかい」
その話し声はいつも通り暖かであったが、クロウにはどこか陰があるように感じた。クロウはしっかりとマリーを見据え、こぶしを握り締め言った。
「冗談じゃないさ、こうでもしなきゃきっとあなたはずっと息子の死と向き合えない」
そう言う彼をマリーはキッと睨んだ。
「向き合う!?そんなことをあんたに言われたくなんかない、あの人を、私の夫を殺したあなたなんかに!」
その怨嗟に、少し遠くにいた村人たちも事態に気が付き集まってきた。村人の一人がクロウを止めようと近づいてくる。その村人をローレンスがいた腕を上げて制止させた。そして一歩クロウのほうへ近づき
「・・・・クロウ君、これが君の言った救う方法なのかい?」
「これが正しいのか、最良の方法がほかにもあるんじゃないか、それは分からない。もしかしたなら、このまま今の現状を続けたほうがうまくいくのかもしれない」
ローレンスは、だったらどうしてと尋ねた。
「結局結果なんてやってみなければわからないし、どうしたって後悔することは山ほどあるさ。例え最善だと思ってとった行動でもそれが最悪の結末を迎えることだってある」
そう言いながら、クロウはあの日の地獄を、恐怖を思い出し、少し震えた。しかしそれでもしっかりと前を見て言った。
「それでも選んで、進んでいかなきゃいけないんだ。そして俺はマリーさんだけじゃなく、ここにいる全員を救いたい。だから俺は可能性があるのなら全員を助けられる方を選ぼうと決めたんだ。」
「マリーを救いたい気持ちは分かるが、どうして君は私たちのことまで救おうとするんだい?我々は別に救われることなんて望んじゃいないんだよ。これは我々の罪なんだ、彼女の夫であるハンスとの約束を守れなかったね」
夫と息子を亡くし、壊れてしまったマリーと、彼女の夫からの最後の頼みを守れず彼女の息子を守れなかったという負い目から、マリーに対し必要以上に気を遣う村人たち。そんな過去に捕らわれた彼らを救うにはどうすればよいのかと、クロウはずっと考え続けてきた。そんな時、クロウはふいに思った、どうして彼らのことをこんなにも救いたいと思うのだろうと。そのことについて考えた時、答えはとてもシンプルだった。
「俺が嫌だからです」
クロウのそんな答に、ローレンス含め村人たちはキョトンとした表情となった。その様子を気にせずクロウは続けた。
「こんなどこのだれか分からないような奴にこんなにも良くしてくれた、そんなあなた達が苦しんでいるのを、俺自身が見たくないんだ。だから、これは俺のわがままなんです。そして、過去に捕らわれているあなた達に今日という日を生きてもらうためには、アレン君を偽りの生者から死者に帰さなきゃいけないんだ。」
ローレンスは語り終わったクロウをしばし真剣な瞳で見つめると、
「・・・・そうか」
そういって、一歩下がった。それを見てマリーさんはその行動の意味を悟り一瞬その瞳に恐怖が宿った。しかし次の瞬間には、その瞳には冷たい怒りが宿っていた。
「どうして助けてくれないの!またっ、誰もっ、誰も私たちを助けてくれないの!」
そう叫ぶ彼女の声が夕闇の空に木霊した。彼女の頬には涙が流れていたが、その瞳にはただひたすらクロウが映し出されていた。クロウはその視線から目をそらさず、ゆっくりと彼女に、いやアレンに近づいて行った。マリーは思わず後ずさりしようとしたが、自身の後ろにたたずむアレンを見てその足を止めた。そして、震える手を重ね合わせ、ぶつぶつと何かをつぶやいた。
すると彼女の足元の土が盛り上がり、数体の土人形(ゴーレム)が形成された。そのゴーレムたちは緩慢な動きでクロウへと攻撃を仕掛けてきた。
しかしクロウは慌てることなく最小限の動きでその攻撃をかわし、一閃、白銀色に輝く刀を薙いだ。すると、すべてのゴーレムは形を維持できず、土くれへと戻った。マリーは絶望した表情をしつつも、懸命にゴーレムを生成し続けた。だがクロウの刀が、その能力がそんな彼女の努力をかき消した。
そうして、クロウは悲しげな表情で一歩一歩、初めて会った時から一切表情を変えることのないアレンのもとへと歩んでいった。そうして、残りあと4歩・・、3歩・・・とその時、修復が終わったばかりの橋の向こうから轟音が聞こえ、大気が揺れた。固唾をのんでクロウ達の一挙一動に注目していた村人たちは虚を突かれ戸惑っていた。しかし、この音を、この咆哮をクロウとアリスは知っていた、いやになるほどに。そして、クロウが村人に警告を出すよりも早くアリスが叫んだ。
「村の近くにある森へ逃げ込むんだ、蒼龍が来る!」
「なっ・・・どうしてあなたがっ!?」
そう言いながら後ずさった。クロウは無言でマリーへ近づき、そして腰に付けた刀袋から抜身の刀を取り出した。その様子を見た彼女は引きつらせた笑顔を浮かべ
「どういうつもりだい?冗談にしてもたちがわるすぎやしないかい」
その話し声はいつも通り暖かであったが、クロウにはどこか陰があるように感じた。クロウはしっかりとマリーを見据え、こぶしを握り締め言った。
「冗談じゃないさ、こうでもしなきゃきっとあなたはずっと息子の死と向き合えない」
そう言う彼をマリーはキッと睨んだ。
「向き合う!?そんなことをあんたに言われたくなんかない、あの人を、私の夫を殺したあなたなんかに!」
その怨嗟に、少し遠くにいた村人たちも事態に気が付き集まってきた。村人の一人がクロウを止めようと近づいてくる。その村人をローレンスがいた腕を上げて制止させた。そして一歩クロウのほうへ近づき
「・・・・クロウ君、これが君の言った救う方法なのかい?」
「これが正しいのか、最良の方法がほかにもあるんじゃないか、それは分からない。もしかしたなら、このまま今の現状を続けたほうがうまくいくのかもしれない」
ローレンスは、だったらどうしてと尋ねた。
「結局結果なんてやってみなければわからないし、どうしたって後悔することは山ほどあるさ。例え最善だと思ってとった行動でもそれが最悪の結末を迎えることだってある」
そう言いながら、クロウはあの日の地獄を、恐怖を思い出し、少し震えた。しかしそれでもしっかりと前を見て言った。
「それでも選んで、進んでいかなきゃいけないんだ。そして俺はマリーさんだけじゃなく、ここにいる全員を救いたい。だから俺は可能性があるのなら全員を助けられる方を選ぼうと決めたんだ。」
「マリーを救いたい気持ちは分かるが、どうして君は私たちのことまで救おうとするんだい?我々は別に救われることなんて望んじゃいないんだよ。これは我々の罪なんだ、彼女の夫であるハンスとの約束を守れなかったね」
夫と息子を亡くし、壊れてしまったマリーと、彼女の夫からの最後の頼みを守れず彼女の息子を守れなかったという負い目から、マリーに対し必要以上に気を遣う村人たち。そんな過去に捕らわれた彼らを救うにはどうすればよいのかと、クロウはずっと考え続けてきた。そんな時、クロウはふいに思った、どうして彼らのことをこんなにも救いたいと思うのだろうと。そのことについて考えた時、答えはとてもシンプルだった。
「俺が嫌だからです」
クロウのそんな答に、ローレンス含め村人たちはキョトンとした表情となった。その様子を気にせずクロウは続けた。
「こんなどこのだれか分からないような奴にこんなにも良くしてくれた、そんなあなた達が苦しんでいるのを、俺自身が見たくないんだ。だから、これは俺のわがままなんです。そして、過去に捕らわれているあなた達に今日という日を生きてもらうためには、アレン君を偽りの生者から死者に帰さなきゃいけないんだ。」
ローレンスは語り終わったクロウをしばし真剣な瞳で見つめると、
「・・・・そうか」
そういって、一歩下がった。それを見てマリーさんはその行動の意味を悟り一瞬その瞳に恐怖が宿った。しかし次の瞬間には、その瞳には冷たい怒りが宿っていた。
「どうして助けてくれないの!またっ、誰もっ、誰も私たちを助けてくれないの!」
そう叫ぶ彼女の声が夕闇の空に木霊した。彼女の頬には涙が流れていたが、その瞳にはただひたすらクロウが映し出されていた。クロウはその視線から目をそらさず、ゆっくりと彼女に、いやアレンに近づいて行った。マリーは思わず後ずさりしようとしたが、自身の後ろにたたずむアレンを見てその足を止めた。そして、震える手を重ね合わせ、ぶつぶつと何かをつぶやいた。
すると彼女の足元の土が盛り上がり、数体の土人形(ゴーレム)が形成された。そのゴーレムたちは緩慢な動きでクロウへと攻撃を仕掛けてきた。
しかしクロウは慌てることなく最小限の動きでその攻撃をかわし、一閃、白銀色に輝く刀を薙いだ。すると、すべてのゴーレムは形を維持できず、土くれへと戻った。マリーは絶望した表情をしつつも、懸命にゴーレムを生成し続けた。だがクロウの刀が、その能力がそんな彼女の努力をかき消した。
そうして、クロウは悲しげな表情で一歩一歩、初めて会った時から一切表情を変えることのないアレンのもとへと歩んでいった。そうして、残りあと4歩・・、3歩・・・とその時、修復が終わったばかりの橋の向こうから轟音が聞こえ、大気が揺れた。固唾をのんでクロウ達の一挙一動に注目していた村人たちは虚を突かれ戸惑っていた。しかし、この音を、この咆哮をクロウとアリスは知っていた、いやになるほどに。そして、クロウが村人に警告を出すよりも早くアリスが叫んだ。
「村の近くにある森へ逃げ込むんだ、蒼龍が来る!」
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