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第二章
志を選びし者
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評定所から戻った翌朝──
開門してまだひと月ほどの香月流剣術道場には、目に見えぬ緊張が静かに張りつめていた。
稽古場には、いつもと変わらぬ木刀の打ち合う音が響いている。
だが、その一打一打の中に、わずかな乱れが混じっていた。
迷いを滲ませる者。必要以上に力み、荒く打ち込む者。
踏み込みの一歩を、無意識にためらう者。
それらは、技の拙さではなく、心の揺らぎのあらわれだった。
──剣は、心を映す。
それを誰より理解していた朔也は、門弟たちの微細な変化を見逃さなかった。
この道場が開かれて、わずか一か月。
集まってきたのは、香月悠臣の志に共鳴し、“人を護る剣”という理念に惹かれた者たちだった。
だが、まだ土台は脆く、心も結束も固まりきっていない。
その矢先に突きつけられた、幕府からの“注視”という現実。
揺らぎが生まれるのは、当然のことだった。
「……なあ」
稽古の合間、若い門弟のひとりが、声を潜めて朔也に近づいた。
「評定所での話……本当なんですか。
香月流が、“目を付けられた”って……」
その言葉に、稽古の手が止まり、周囲の視線が一斉に集まった。
皆が気にしていた。けれど、それを口に出す者はいなかった。
朔也は一拍、呼吸を整え、それからまっすぐに頷いた。
「……ああ。事実だ」
その一言に、ざわりと場の空気が揺れる。
「じゃあ……俺たちはどうなるんですか?」
「開いて間もないのに、もう潰されちまうのか?」
「……家族に何かあったらと思うと……怖いです」
次々と漏れ出す声は、弱さではなかった。
それぞれが抱える生活と責任の重さが、恐れというかたちで現れていた。
そのとき、年配の門弟が一歩前へと出る。
「……不安になるのは分かる。だが」
低く、よく通る声だった。
その声音には、長く剣を握ってきた者の覚悟と信念が込められていた。
「武士が一度掲げた看板を、世の風向きひとつで下ろすというのか。
それこそ“剣を捨てる”ということではないか」
「だが、その看板のせいで道場が潰れたら、本末転倒だろう!」
別の門弟が鋭く言い返す。
「奉行所も評定所も、世間の目も……
俺たちが何のために剣を学んでるのか、わからなくなる。
武士が町人に頭を下げるなんて──それでいいのかよ?」
「じゃあ──それで人を斬っていいのか!」
声を張り上げたのは、まだ若く、剣の道を歩みはじめたばかりの門弟だった。
「俺は、謝るべきときに頭を下げるのが恥だとは思いません!
“人を護る剣”って、そう教わってきたはずです!」
空気が、張り詰める。
剣を交える場が、今や思想のぶつかり合う場へと変わっていた。
朔也は、その中心で静かに立っていた。
(……兄上が言っていた。“組織は情で崩れる”と)
まさに今、香月流は揺れている。
道場としての歴史が浅い今だからこそ、理念の温度差がそのまま動揺に繋がる。
──だが。
朔也は一歩、前へと出た。
「……ここに残るも、去るも、誰も責めません」
その声は落ち着いていたが、はっきりと響いた。
「香月流は、誰かを縛る場所ではない。
剣の意味を問い続ける場所だと、俺は信じています」
すると年配の門弟が、険しい眼差しを向けて問うた。
「ならば聞こう。お前は、“秩序”か、“志”か」
朔也は、ほんのわずかも迷わず、静かに言った。
「……志です」
「“人を護る剣”を、俺は選びます。
たとえそれが間違いだったとしても──
その責任から、逃げない覚悟で」
広間に、深い沈黙が落ちた。
──そして、ぽつりとひとりが口を開いた。
「……俺は、残る」
「……俺も。怖いけど、逃げたくない」
「……志を、信じたいです」
一方で、静かに頭を下げる者もいた。
「……俺は、家族を守りたい。ここを離れる。
けど、香月流を否定する気はない。ずっと、感謝してます」
その言葉に、誰も咎める者はいなかった。
互いに、互いの選択を認めたのだ。
その光景を、道場の奥から悠臣が静かに見つめていた。
(……始まったな)
開門からわずか一か月──
香月流は、すでに“ただの新設道場”ではなくなっていた。
今、志を問われ、理念を選び、選ばれようとしている。
だが──
悠臣は朔也の背中を見つめ、わずかに目元を和らげる。
(それでも、立つ者がいるのなら……剣は、まだ死んではいない)
冬の朝の光が、静かに道場の床を照らす。
その光の中、異なる道を選んだ者たちの影が、くっきりと分かれて伸びていた。
──香月流は、いま確かに、“分岐の刻”に立っていた。
◆
道場の空気が、ようやく静けさを取り戻しつつあった。
だがそれは、すべてが落ち着いたという証ではない。
むしろ──嵐が通り過ぎたあとの、息を潜めるような緊張に近かった。
正面の出入口から、数人の門弟が黙ったまま背を向け、道場をあとにする。
草履が板張りの床を擦る微かな音が、しんとした空間に余韻を残しながら遠ざかっていく。
その背中に滲んでいたのは、迷いと決断が入り混じった、名残惜しさと覚悟の影だった。
桐原篤哉は、その光景を黙って見送りながら、ふう、と長く息を吐く。
「……なんや。不穏な空気が流れ出したな」
その声には、いつもの軽妙さはなかった。
飄々とした仮面の下に潜ませていた感情が、ほんの僅かに滲み出る。
「ここは“道場”や。道を学び、志を鍛える場……
それを守るために、道そのものを捨てる者が出るとは。皮肉なもんやな」
言葉に棘はない。ただ、去っていった門弟たちの背中を、どこか切なげに見つめていた。
怒りではなく、喪失にも似た痛みが、静かに彼の眼差しに宿っていた。
その隣、腕を組んで佇む御影直熙が、目を伏せたまま静かに言葉を継ぐ。
「……志を掲げたところで、それが現実に抗えるとは限らない。
それが、今のこの国だ」
淡々とした声音。だがその奥には、諦観と、それでも消えぬ意志とが交錯していた。
一拍の沈黙ののち、直熙はゆっくりと顔を上げ、場を見渡すようにして続ける。
「加えて言えば──香月流剣術道場は、幕府公認の道場だ。
名があるというのは、守られる盾にもなるが、同時に強い縛りにもなる。
だからこそ、このような不祥事には、いっそう厳しい視線が注がれる。
今後、さらに外からの圧がかかることも、覚悟せねばならないだろう」
それでも──と、直熙はごく浅く息を吸い、揺らがぬまま言葉を継いだ。
「……それでも私は、此処を去る理由を見出せない。
志があるのなら、なおさら今ここで立ち止まり、考えるべきだと思っている」
その言葉の芯に宿る覚悟が、場の空気をふっと引き締めた。
少し離れた場所で木刀を握りしめていた真木智久は、うつむいたまま足元を見つめていた。
まるで心の奥に沈殿した感情を、じっと見据えているかのように。
やがて、ぽつりと呟くように口を開く。
「……剣に、理念を込めるというのは──そんなにも、罪なのでしょうか」
その声には微かな震えがあった。
いまだ整理のつかない想いが、胸の奥で燻り続けているのだろう。
「誰かを、何かを守りたかった……それだけだったはずなのに。
“間違いかもしれない”と告げられただけで……
こんなにも、自分が揺らいでしまうなんて」
言葉の最後は、吐き出すようだった。
唇を噛み、握る木刀に力を込めたその手は、痛みを押し殺すように震えていた。
またひとつ、沈黙が落ちる。
問いに答えを出せないまま、誰もがそれぞれの内側と向き合っていた。
その沈黙を破ったのは、朝倉洸太だった。
冬の淡い光が床に射し込むのをじっと見つめながら、彼は静かに口を開いた。
「理想と現実……結局のところ、すべての結論において、両者は相容れないものなのだろうか」
その声は穏やかだったが、遠くを見つめるような眼差しには、深い問いが宿っていた。
「正しさを貫けば、現実からは孤立する。
現実に迎合すれば、理想は風化する。
まるで、交わることのない二本の川を、同時に掬おうとするようなものだ」
洸太は一度、静かに目を閉じた。
そして再び目を開き、静かに、だが確信をもって言葉を紡ぐ。
「……それでも、俺は思う。
理想がなければ、現実はただ“生き延びる”だけの場所になってしまう。
何のために戦うのか、何を守るのか──それすら見失ってしまう。
だから俺は──理想を、手放したくない。
たとえそれが現実に押し潰されるとしても。
俺は、理想を握る側に立ちたい」
その言葉が場の空気をゆるやかに揺らした。
誰一人として、洸太の言葉を否定する者はいなかった。
むしろその誠実さに、自らの胸の内を照らされるように、皆が静かに目を伏せた。
それぞれの中にあった「信じたいもの」が、そっと顔をのぞかせていた。
その時、稽古場の障子が、かすかに揺れる音を立てた。
冬の風が、一筋の静けさとともに吹き込んでくる。
道場の床に落ちる影は、去った者と、残った者とで、分かたれていた。
だが──その剣を選び取った一瞬だけは、彼らの眼差しは同じ未来を見据えていた。
香月流に集った者たちの「真価」が、いま、試されようとしていた。
開門してまだひと月ほどの香月流剣術道場には、目に見えぬ緊張が静かに張りつめていた。
稽古場には、いつもと変わらぬ木刀の打ち合う音が響いている。
だが、その一打一打の中に、わずかな乱れが混じっていた。
迷いを滲ませる者。必要以上に力み、荒く打ち込む者。
踏み込みの一歩を、無意識にためらう者。
それらは、技の拙さではなく、心の揺らぎのあらわれだった。
──剣は、心を映す。
それを誰より理解していた朔也は、門弟たちの微細な変化を見逃さなかった。
この道場が開かれて、わずか一か月。
集まってきたのは、香月悠臣の志に共鳴し、“人を護る剣”という理念に惹かれた者たちだった。
だが、まだ土台は脆く、心も結束も固まりきっていない。
その矢先に突きつけられた、幕府からの“注視”という現実。
揺らぎが生まれるのは、当然のことだった。
「……なあ」
稽古の合間、若い門弟のひとりが、声を潜めて朔也に近づいた。
「評定所での話……本当なんですか。
香月流が、“目を付けられた”って……」
その言葉に、稽古の手が止まり、周囲の視線が一斉に集まった。
皆が気にしていた。けれど、それを口に出す者はいなかった。
朔也は一拍、呼吸を整え、それからまっすぐに頷いた。
「……ああ。事実だ」
その一言に、ざわりと場の空気が揺れる。
「じゃあ……俺たちはどうなるんですか?」
「開いて間もないのに、もう潰されちまうのか?」
「……家族に何かあったらと思うと……怖いです」
次々と漏れ出す声は、弱さではなかった。
それぞれが抱える生活と責任の重さが、恐れというかたちで現れていた。
そのとき、年配の門弟が一歩前へと出る。
「……不安になるのは分かる。だが」
低く、よく通る声だった。
その声音には、長く剣を握ってきた者の覚悟と信念が込められていた。
「武士が一度掲げた看板を、世の風向きひとつで下ろすというのか。
それこそ“剣を捨てる”ということではないか」
「だが、その看板のせいで道場が潰れたら、本末転倒だろう!」
別の門弟が鋭く言い返す。
「奉行所も評定所も、世間の目も……
俺たちが何のために剣を学んでるのか、わからなくなる。
武士が町人に頭を下げるなんて──それでいいのかよ?」
「じゃあ──それで人を斬っていいのか!」
声を張り上げたのは、まだ若く、剣の道を歩みはじめたばかりの門弟だった。
「俺は、謝るべきときに頭を下げるのが恥だとは思いません!
“人を護る剣”って、そう教わってきたはずです!」
空気が、張り詰める。
剣を交える場が、今や思想のぶつかり合う場へと変わっていた。
朔也は、その中心で静かに立っていた。
(……兄上が言っていた。“組織は情で崩れる”と)
まさに今、香月流は揺れている。
道場としての歴史が浅い今だからこそ、理念の温度差がそのまま動揺に繋がる。
──だが。
朔也は一歩、前へと出た。
「……ここに残るも、去るも、誰も責めません」
その声は落ち着いていたが、はっきりと響いた。
「香月流は、誰かを縛る場所ではない。
剣の意味を問い続ける場所だと、俺は信じています」
すると年配の門弟が、険しい眼差しを向けて問うた。
「ならば聞こう。お前は、“秩序”か、“志”か」
朔也は、ほんのわずかも迷わず、静かに言った。
「……志です」
「“人を護る剣”を、俺は選びます。
たとえそれが間違いだったとしても──
その責任から、逃げない覚悟で」
広間に、深い沈黙が落ちた。
──そして、ぽつりとひとりが口を開いた。
「……俺は、残る」
「……俺も。怖いけど、逃げたくない」
「……志を、信じたいです」
一方で、静かに頭を下げる者もいた。
「……俺は、家族を守りたい。ここを離れる。
けど、香月流を否定する気はない。ずっと、感謝してます」
その言葉に、誰も咎める者はいなかった。
互いに、互いの選択を認めたのだ。
その光景を、道場の奥から悠臣が静かに見つめていた。
(……始まったな)
開門からわずか一か月──
香月流は、すでに“ただの新設道場”ではなくなっていた。
今、志を問われ、理念を選び、選ばれようとしている。
だが──
悠臣は朔也の背中を見つめ、わずかに目元を和らげる。
(それでも、立つ者がいるのなら……剣は、まだ死んではいない)
冬の朝の光が、静かに道場の床を照らす。
その光の中、異なる道を選んだ者たちの影が、くっきりと分かれて伸びていた。
──香月流は、いま確かに、“分岐の刻”に立っていた。
◆
道場の空気が、ようやく静けさを取り戻しつつあった。
だがそれは、すべてが落ち着いたという証ではない。
むしろ──嵐が通り過ぎたあとの、息を潜めるような緊張に近かった。
正面の出入口から、数人の門弟が黙ったまま背を向け、道場をあとにする。
草履が板張りの床を擦る微かな音が、しんとした空間に余韻を残しながら遠ざかっていく。
その背中に滲んでいたのは、迷いと決断が入り混じった、名残惜しさと覚悟の影だった。
桐原篤哉は、その光景を黙って見送りながら、ふう、と長く息を吐く。
「……なんや。不穏な空気が流れ出したな」
その声には、いつもの軽妙さはなかった。
飄々とした仮面の下に潜ませていた感情が、ほんの僅かに滲み出る。
「ここは“道場”や。道を学び、志を鍛える場……
それを守るために、道そのものを捨てる者が出るとは。皮肉なもんやな」
言葉に棘はない。ただ、去っていった門弟たちの背中を、どこか切なげに見つめていた。
怒りではなく、喪失にも似た痛みが、静かに彼の眼差しに宿っていた。
その隣、腕を組んで佇む御影直熙が、目を伏せたまま静かに言葉を継ぐ。
「……志を掲げたところで、それが現実に抗えるとは限らない。
それが、今のこの国だ」
淡々とした声音。だがその奥には、諦観と、それでも消えぬ意志とが交錯していた。
一拍の沈黙ののち、直熙はゆっくりと顔を上げ、場を見渡すようにして続ける。
「加えて言えば──香月流剣術道場は、幕府公認の道場だ。
名があるというのは、守られる盾にもなるが、同時に強い縛りにもなる。
だからこそ、このような不祥事には、いっそう厳しい視線が注がれる。
今後、さらに外からの圧がかかることも、覚悟せねばならないだろう」
それでも──と、直熙はごく浅く息を吸い、揺らがぬまま言葉を継いだ。
「……それでも私は、此処を去る理由を見出せない。
志があるのなら、なおさら今ここで立ち止まり、考えるべきだと思っている」
その言葉の芯に宿る覚悟が、場の空気をふっと引き締めた。
少し離れた場所で木刀を握りしめていた真木智久は、うつむいたまま足元を見つめていた。
まるで心の奥に沈殿した感情を、じっと見据えているかのように。
やがて、ぽつりと呟くように口を開く。
「……剣に、理念を込めるというのは──そんなにも、罪なのでしょうか」
その声には微かな震えがあった。
いまだ整理のつかない想いが、胸の奥で燻り続けているのだろう。
「誰かを、何かを守りたかった……それだけだったはずなのに。
“間違いかもしれない”と告げられただけで……
こんなにも、自分が揺らいでしまうなんて」
言葉の最後は、吐き出すようだった。
唇を噛み、握る木刀に力を込めたその手は、痛みを押し殺すように震えていた。
またひとつ、沈黙が落ちる。
問いに答えを出せないまま、誰もがそれぞれの内側と向き合っていた。
その沈黙を破ったのは、朝倉洸太だった。
冬の淡い光が床に射し込むのをじっと見つめながら、彼は静かに口を開いた。
「理想と現実……結局のところ、すべての結論において、両者は相容れないものなのだろうか」
その声は穏やかだったが、遠くを見つめるような眼差しには、深い問いが宿っていた。
「正しさを貫けば、現実からは孤立する。
現実に迎合すれば、理想は風化する。
まるで、交わることのない二本の川を、同時に掬おうとするようなものだ」
洸太は一度、静かに目を閉じた。
そして再び目を開き、静かに、だが確信をもって言葉を紡ぐ。
「……それでも、俺は思う。
理想がなければ、現実はただ“生き延びる”だけの場所になってしまう。
何のために戦うのか、何を守るのか──それすら見失ってしまう。
だから俺は──理想を、手放したくない。
たとえそれが現実に押し潰されるとしても。
俺は、理想を握る側に立ちたい」
その言葉が場の空気をゆるやかに揺らした。
誰一人として、洸太の言葉を否定する者はいなかった。
むしろその誠実さに、自らの胸の内を照らされるように、皆が静かに目を伏せた。
それぞれの中にあった「信じたいもの」が、そっと顔をのぞかせていた。
その時、稽古場の障子が、かすかに揺れる音を立てた。
冬の風が、一筋の静けさとともに吹き込んでくる。
道場の床に落ちる影は、去った者と、残った者とで、分かたれていた。
だが──その剣を選び取った一瞬だけは、彼らの眼差しは同じ未来を見据えていた。
香月流に集った者たちの「真価」が、いま、試されようとしていた。
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