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第三章
優しさのかたち
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夜更けの香月流剣術道場──。
本屋敷の屋根の上、その高みに、ひとりの男が静かに腰を下ろしていた。
月光が降り注ぐ瓦の上。
桐原篤哉は肘を膝に乗せ、腕越しに夜空を仰いでいる。
天に浮かぶ満月は冴え冴えと輝き、屋根の端々に銀の輪郭を落としていた。
ふわりと風が吹き抜け、頬を撫でる。
香月悠臣と天城朔也の姿は、まだ戻らない。
ふたりが屋敷を出て、どこまで歩いているのか──桐原は知らない。
ただ、ひとりきりの静寂の中で、ぽつりと息を漏らした。
「……厄介やなあ」
呟きは軽く投げられたようでいて、その奥に沈殿するような重さを秘めていた。
香月美織の縁談話。
それを聞いた朔也の、あの目の色。
そして──何も言わなかった悠臣の、沈黙。
桐原の瞳には、普段の飄々とした色合いは消えていた。
ただ月光を映した静かな光が宿り、仄かに冷たい。
無表情なその横顔は、夜の影をそのまま纏っているようで──
けれど、その静けさを破ったのは、どこか緊張した、少女の声だった。
「き、桐原さんっ……そんな高いところに登っちゃ、危ないですっ……!」
足元から響いた声に、桐原はそっと視線を落とす。
庭先から屋根を見上げていたのは、香月美織だった。
月灯りに浮かぶ顔には驚きの色があり、両手で口元を押さえる仕草がどこかいじらしい。
「おお、美織ちゃん。こんな夜更けに、どうしたんや?」
頬を緩めた篤哉は、片手をひらりと振って見せる。
「こっち、ええ眺めやで? ほら、跳んで来ぃ。……ぴょん、っとな」
冗談めいた口ぶりに、美織は戸惑いながら辺りを見回し、
おそるおそる数歩踏み出して──小さく、ぴょん、と跳ねてみせた。
「き、桐原さん……やっぱり……わたくしには無理みたいです……っ」
両手を上げて小さく跳ねるその姿は、まるで小動物のようで──
あまりの可愛さに、桐原は堪えきれず吹き出しそうになった。
「……な、何やあの生き物。可愛すぎんか……」
思わず漏れた呟きのあと、彼はひと息ついて身を翻すと、
屋根を蹴って宙を舞った。
風を裂くように回転し、そのまま軽やかに地面へと着地する。
「お見事……です……」
呆けたように見つめていた美織が、思わず感嘆の声を漏らす。
桐原は肩を竦めるようにして笑いながら、美織へと歩み寄った。
「ほら、しっかり掴まっときや」
「──え?」
その一言と同時に、美織の身体はふわりと宙に浮く。
「きゃっ……!」
気づけば、彼女は桐原の腕の中。
横抱きにされて、思わず首元に腕を回していた。
「行くで?」
囁くように言い添えると、篤哉は再び地を蹴った。
月を背に、瓦の上へと滑るように跳躍し──数歩で屋根の上へと舞い戻る。
「……ほれ、着いたで」
そう言って彼女を下ろそうとしたそのとき──
美織の細い腕が、首元にぎゅっとしがみついた。
「だ、駄目ですっ……桐原さん、離しちゃ……いやですっ……!」
目をぎゅっと瞑り、顔を胸元に埋めたまま、震える声で懇願する。
「こ、こんな高いところ……立てませんわっ……!」
そのあまりの必死さに、桐原は肩を揺らして笑いを噛み殺した。
「はは……ほな、もうちょいだけ抱えといたろか」
「お、お願いします……」
美織は、そっと目を開きながら、再びその胸元に頬を寄せる。
そのぬくもりに、静かに身を預けるようにして。
やがて、美織はふと篤哉の横顔を見上げ、ぽつりと呟いた。
「……桐原さんって、すごいですね。なんだか、忍者みたいです」
篤哉は喉の奥で笑みを含み、月を仰いだ。
「……ええ線いってるなあ。でもな──残念ながら、俺は何者でもないで。
誰かのために戦えるほど、ちゃんとしたもんちゃうねん」
その言葉に、美織もまた静かに月を仰ぐ。
──手が届きそうなくらい近くに、月があった。
「……こんなに、近く感じたのは初めてです」
囁くような声に、篤哉は優しく目を細める。
「……眠れんかったんか?」
「……はい。兄上が、まだ戻って来られないので……」
伏せられた睫毛が月の光を受けて、淡くきらめいた。
その横顔に目を落とし、桐原は言葉をかける。
「……美織ちゃんが、“帰らへん”って言うたら、案外、兄上すぐ帰って来るかもしれんで?」
冗談めかした声に、美織はふっと肩を揺らす。
けれど、次に顔を上げたその微笑みは、どこか安らぎに満ちていた。
「……そうであれば、いいのですが」
その声は、夜風にそっと溶けていった。
屋根の上、寄り添うように並ぶふたり。
やさしい夜風が、そっと頬を撫でていった。
桐原は、美織を腕に抱いたまま、夜空を仰いでいた。
瞳を細めるその視線の先には、冴え冴えと輝く満月が浮かび、月光が銀の薄膜のように二人を包んでいる。
彼の胸元に身を預けた美織も、同じ空を見上げていた。
けれど、その瞳に映る月はどこか遠く、焦点の定まらないまま、彼女の意識は揺らいでいた。
まるで気持ちの置き場を見失ったまま、静かに呼吸だけを繋いでいるようだった。
しばらくの沈黙ののち、桐原がぽつりと口を開く。
「……こんな時くらい、無理して笑わんでもええんやで」
普段の調子とは違っていた。
冗談も軽口もない、まっすぐで穏やかな声音だった。
言葉そのものが、夜風のように柔らかく寄り添ってくる。
「……疲れんか?」
低く問う声に、美織は小さく肩をすくめ、伏し目がちに顔を伏せた。
「……それは……」
言葉は喉の奥でかすれ、そのまま細く消えていく。
しゅんとした表情のまま、彼女は項垂れてしまった。
その様子に、篤哉は思わず苦笑を漏らす。
「……ああ、すまん。そんな顔させたくて言うたんやない」
気まずそうに眉を下げながらも、気遣うようにすぐ言葉を繋ぐ。
けれど美織は、ただ小さく首を横に振るだけだった。
ふたりのあいだを、夜風がふわりと通り過ぎていく。
──そして、ふと。
「……本当に、それでいいのか?」
その言葉は、これまでの柔らかい西訛りとも、飄々とした口調とも違っていた。
静かで、深く、心の奥から零れ落ちるような響きだった。
思わず、美織は目を瞬かせる。
その声に込められた“本音”が、確かに胸を打った。
少しの間ののち──美織はそっと問い返す。
「……桐原さん。選別の時におっしゃっていた言葉……覚えていらっしゃいますか?」
桐原は、きょとんと目をしばたたかせた後、肩をすくめて首を傾げた。
「んー……正直、あのときは気ぃ張っとったしな。何しゃべったか覚えとらへん。たぶん、適当に言うたと思うわ」
悪びれる様子もなく、あっけらかんとした口ぶり。
それがかえって、緊張をゆるめてくれる。
美織は思わず小さく笑った。
「……桐原さんらしいです」
そして、そっと月を見上げる。
「“終わるその前に、たった一度でも──自分の意思で何かを選ぶことができたら、人って少しは報われる気がする”って……おっしゃっていました」
桐原の視線が、美織の横顔を捉える。
「“守る相手も、名乗る名も、自分で選びたい”って……。
その言葉が、わたくしにはとても……眩しかったのです」
彼女の声は震えていなかった。けれど、その奥底には、小さな炎のような感情が灯っていた。
「わたくしは、“香月”という家に名を持って生まれました。
何も選ばぬうちから、進む道はすでに決まっていて……
だから、“自分の意思”にどうすれば辿りつけるのか……ずっと分からなくて……」
その苦悩は、押し殺した声音の隙間から、確かに滲んでいた。
桐原は黙って、ただ耳を傾けていた。
「……でも、もし。
終わるその前に、たった一度でも、“これは自分が選んだ”って言えるものがあれば……
それだけで、少しは救われるような気がして……」
言いながら、美織は再び空を仰ぐ。
月明かりを映す瞳は、澄んでいるようで、どこか不安げでもあった。
その横顔を見つめながら、桐原はそっと息を吐き、口を開く。
「……美織ちゃん」
再び、関西のやわらかな響きが戻っていた。
「俺はな……あの時、自分に言い聞かせたくて、ちょっとええこと言うてしもうたんやと思う」
伏し目がちに、苦笑をひとつ。
「“自分で選ぶ”ってな……ほんまは、怖いことや。
上手くいかんかったとき、誰のせいにもできへん。
失敗も後悔も、ぜんぶ自分で引き受けなあかんからな」
「……はい」
静かに応える美織の声には、覚悟のようなものが滲んでいた。
「せやけど……それでもや。
たった一度でも、自分で選んだって思えるもんがあったら──
人は、それを頼りに前に進める。たとえ結果がどうであっても、や」
その言葉は、軽口ではなかった。
桐原篤哉という男が、これまでの人生で体得してきた“真実”だった。
しばらくの沈黙のあと、美織はそっと口を開く。
「……兄上は、きっと……戻ってきてくださいますよね」
その問いに、篤哉は肩をすくめて、にやりと笑う。
「そらもう。お姫さんが“帰らへん”って言うて待っとったら──
血相変えて、今ごろ全速力で走っとるわ」
その言葉に、美織はふっと笑う。
わずかに強張っていた肩が、やわらかく緩んだ。
「……わたくしも、もう少しだけ──選んでみようと思います」
その言葉に、桐原はゆっくりと頷いた。
月が高く昇り、風がふたりを撫でていく。
その銀色の光の下で、そっと寄り添うふたつの影が──夜の静けさの中に、確かに息づいていた。
静かな夜の屋根の上。
柔らかな夜風がふたりの間を撫でてゆき、静けさの中に、ほのかな体温と呼吸のリズムが溶けていく。
「……桐原さんは、“何かを自分で選んだ”って言えるものは、ありますか?」
胸元から顔を上げた美織が、ふいに問いかけた。
声は小さかったが、そこには揺るがぬ芯があった。
桐原はしばし沈黙したのち、ゆるやかに目を細め、遥かな夜空を仰ぐ。
その瞳には、月光が滲むような翳りが浮かび、過ぎた時間を静かにたどっているようだった。
「……あるよ」
ぽつりとこぼれた声音には、優しさと──ほんのかすかな苦みが混ざっていた。
「あるにはあるんやけどなぁ……おたくの兄貴に、ぜーんぶ台無しにされてもーたわ」
思わぬ名が出て、美織の肩がぴくりと揺れる。頬がわずかに紅潮した。
「……兄上に“忠義という名の愛の告白”をした、あの時……ですね?」
その言葉に、桐原の顔が一瞬で引きつった。
「してへんっ!!してへんねんっ!!美織ちゃんまで乗っかってどうすんねん!」
抱き上げたままの姿勢で抗議するように身じろぎ、美織の横顔を覗き込む。
けれど美織は、唇を押さえ、堪えきれずにくすくすと笑っていた。
「ふふ……だって、あの時の桐原さん、とっても真剣で、素敵でしたから」
「やめぇぇ……これ以上いじられたら、俺ほんまに屋根から飛び降りてまうで……」
言いながらも、桐原の声にはどこか照れた苦笑が滲んでいた。
やがて目線を夜空へ戻し、ふっと静かに息を吐く。
「……うちの一族はな。昔は“忠義”を重んじる家柄やったらしい。
宗家の血やとか、武家の誇りやとか、そういうもんをちゃんと持っとったんやろな」
そこまで語り、彼はふと目を伏せる。
「でもな……気づいた時には、もう道を外れてしもてた。
俺が生まれた頃には、名だけが残った抜け殻でな。
誇りも理も、ただの呪縛になってたんや」
美織は、静かにその胸に身を預けたまま、耳を澄ませている。
「……俺は“与えられた道”しか知らんかった。
それが全てやと思い込んで──気づいたら地の底まで転がり落ちとった」
語調は穏やかでも、その奥には静かな怒りと、痛みの影が潜んでいた。
「“正義”やと信じとったもんが、実は“間違い”やった──
それに気づいた瞬間、俺は初めて立ち止まったんや」
屋根の瓦をそっと撫でるように、夜風がふたりを包む。
「ほんまにな……自分が情けなくなるくらい、打ちのめされた。
でもな──そのときや。俺が“本当の忠義”を目の当たりにしたのは」
桐原は、美織のぬくもりを確かめるようにそっと抱き直す。
その瞳が、月へとゆっくり向けられる。
「……俺の“正義”が間違いやと気づいたきっかけはな、ある“一族”との出会いやった」
語りの調子が、次第に深く、静かな重みを帯びていく。
「──二十年前。うちの一族は、その一族に滅ぼされた。
生き残ったのは、俺が知っとる限り、ほんの数人や」
風が、そっと桐原の髪を揺らした。
「俺は子どもの頃から、ずっと“復讐”を刷り込まれて育った。
その一族は卑劣で、お前の仇や──って。
“お前が仇を討たな、誰がうちの誇りを取り戻すんや”ってな」
美織の腕が、ほんのわずかに彼の着物を掴む。
「──十一の時や。俺は居場所を突き止めて、剣を手に、一人で襲いかかった。
復讐だけを胸に抱えて、何も見えてなかった」
微かに掠れた声が、夜に溶けていく。
「……けど、俺は敗れた。同じくらいの歳の、名も知らん忍びに。
死ぬ覚悟をしたその瞬間──小さな女の子が、俺の前に立ったんや」
一呼吸おき、彼は言葉を選ぶように続ける。
「震えながらも、俺を庇って言うた。
“お願い、殺さないで”って──泣きながら、必死でな」
美織の唇が、小さく震える。
「俺を討とうとしてた忍びが、すっと膝をついて言うたんや。
“貴女の意のままに”って。自分より幼い少女に、命を預ける忠義やった」
その語りに、静謐な余韻が流れる。
「──衝撃やった。
俺が知っとる“忠義”とは、まるで違った。
“仕える”って、こういうことなんやって……心が揺れた」
ふたりの影を、月光が淡く縁取っている。
「その一族は、俺を捕らえることもなく、一時的に保護してくれた。
……そこで、真実を教えられたんや」
語調が、さらに深まっていく。
「──先に襲ったのは、俺らの方やった。
あの一族は、大切なもんを守るために剣を取っただけや。
俺たちは、誇りも理も捨てて、ただ“滅ぼしに”行った。それだけやった」
美織は、じっと篤哉を見上げていた。
その瞳には、ただ真摯なまなざしが宿っている。
「……信じたくなかった。
それまでの全部が否定される気がして、めちゃくちゃ怖かった。
けどな──ほんのひと月でも一緒に過ごして、見えたんや」
桐原はそっと目を伏せる。
「彼らの言葉、姿、生き様……全部が、俺らとはまるで違ってた。
俺たちは“呪い”を背負ってたけど、彼らは“誇り”を守ってた」
風がそっと吹き抜ける。
「滅びかけた敵にすら敬意を向けてくれたんや、“あなたたちは確かに立派だった”って。
──俺はその言葉に救われた。
誇りってな、他人に認められてこそ、意味があるんやって」
言葉が胸に沁み渡る。桐原の声は揺るがず、優しく、確かだった。
「……うちの一族も、本来はきっと、そうやったはずや。
どこで間違えたかは、もう分からん。けど──
“自分で誇りを手放したら、もう終わり”なんや」
しばしの沈黙ののち、彼はゆっくりと微笑んだ。
「──だから、俺は“選び直した”んや。
誰かになるためやなくて、“どう在るか”を選んだんや。
過去を背負ったままでも、誇りを取り戻す生き方を……選んだんや」
それは、静かで確かな決意だった。
美織は、胸の奥にじんわりとあたたかさが灯るのを感じた。
言葉にできない感情が、ゆっくりと満ちていく。
(……この人は、選んだのだ。過去も痛みも抱いたまま、生き直すことを)
“何を守るか”を、自分で決めるために。
“どんな名で在るか”を、自分で選ぶために──
それは、血と涙の果てに辿り着いた、たったひとつの在り方だった。
桐原は、美織をそっと見下ろしながら、やわらかく笑った。
「──そして出会ったのが、おたくの兄貴やった」
美織のまなざしが、わずかに揺れる。
「悠臣は、何も言わへんかった。
けど……その背中も、剣も、目の奥の覚悟も……
全部が、俺の胸に突き刺さったんや」
その瞳に、一瞬だけ、優しい揺らぎが浮かぶ。
「……せやから俺は、“この人になら命を預けてもええ”って思えた。
それが──俺が初めて“自分で選んだ”道や」
ふいに、美織がその胸元に顔をうずめる。
「……桐原さんって、本当に……すごい人、なんですね」
「なんや、急に……」
照れくさそうに目を逸らし、彼は肩をすくめた。
「俺は、何者でもない。ただの通りすがりの変人や」
そう口にしながらも、その声はどこまでも優しく、あたたかかった。
冴え渡る夜空の下、月がふたりをそっと照らしていた。
その月光は静かに降り、美織の胸に、確かな灯火を宿していた。
本屋敷の屋根の上、その高みに、ひとりの男が静かに腰を下ろしていた。
月光が降り注ぐ瓦の上。
桐原篤哉は肘を膝に乗せ、腕越しに夜空を仰いでいる。
天に浮かぶ満月は冴え冴えと輝き、屋根の端々に銀の輪郭を落としていた。
ふわりと風が吹き抜け、頬を撫でる。
香月悠臣と天城朔也の姿は、まだ戻らない。
ふたりが屋敷を出て、どこまで歩いているのか──桐原は知らない。
ただ、ひとりきりの静寂の中で、ぽつりと息を漏らした。
「……厄介やなあ」
呟きは軽く投げられたようでいて、その奥に沈殿するような重さを秘めていた。
香月美織の縁談話。
それを聞いた朔也の、あの目の色。
そして──何も言わなかった悠臣の、沈黙。
桐原の瞳には、普段の飄々とした色合いは消えていた。
ただ月光を映した静かな光が宿り、仄かに冷たい。
無表情なその横顔は、夜の影をそのまま纏っているようで──
けれど、その静けさを破ったのは、どこか緊張した、少女の声だった。
「き、桐原さんっ……そんな高いところに登っちゃ、危ないですっ……!」
足元から響いた声に、桐原はそっと視線を落とす。
庭先から屋根を見上げていたのは、香月美織だった。
月灯りに浮かぶ顔には驚きの色があり、両手で口元を押さえる仕草がどこかいじらしい。
「おお、美織ちゃん。こんな夜更けに、どうしたんや?」
頬を緩めた篤哉は、片手をひらりと振って見せる。
「こっち、ええ眺めやで? ほら、跳んで来ぃ。……ぴょん、っとな」
冗談めいた口ぶりに、美織は戸惑いながら辺りを見回し、
おそるおそる数歩踏み出して──小さく、ぴょん、と跳ねてみせた。
「き、桐原さん……やっぱり……わたくしには無理みたいです……っ」
両手を上げて小さく跳ねるその姿は、まるで小動物のようで──
あまりの可愛さに、桐原は堪えきれず吹き出しそうになった。
「……な、何やあの生き物。可愛すぎんか……」
思わず漏れた呟きのあと、彼はひと息ついて身を翻すと、
屋根を蹴って宙を舞った。
風を裂くように回転し、そのまま軽やかに地面へと着地する。
「お見事……です……」
呆けたように見つめていた美織が、思わず感嘆の声を漏らす。
桐原は肩を竦めるようにして笑いながら、美織へと歩み寄った。
「ほら、しっかり掴まっときや」
「──え?」
その一言と同時に、美織の身体はふわりと宙に浮く。
「きゃっ……!」
気づけば、彼女は桐原の腕の中。
横抱きにされて、思わず首元に腕を回していた。
「行くで?」
囁くように言い添えると、篤哉は再び地を蹴った。
月を背に、瓦の上へと滑るように跳躍し──数歩で屋根の上へと舞い戻る。
「……ほれ、着いたで」
そう言って彼女を下ろそうとしたそのとき──
美織の細い腕が、首元にぎゅっとしがみついた。
「だ、駄目ですっ……桐原さん、離しちゃ……いやですっ……!」
目をぎゅっと瞑り、顔を胸元に埋めたまま、震える声で懇願する。
「こ、こんな高いところ……立てませんわっ……!」
そのあまりの必死さに、桐原は肩を揺らして笑いを噛み殺した。
「はは……ほな、もうちょいだけ抱えといたろか」
「お、お願いします……」
美織は、そっと目を開きながら、再びその胸元に頬を寄せる。
そのぬくもりに、静かに身を預けるようにして。
やがて、美織はふと篤哉の横顔を見上げ、ぽつりと呟いた。
「……桐原さんって、すごいですね。なんだか、忍者みたいです」
篤哉は喉の奥で笑みを含み、月を仰いだ。
「……ええ線いってるなあ。でもな──残念ながら、俺は何者でもないで。
誰かのために戦えるほど、ちゃんとしたもんちゃうねん」
その言葉に、美織もまた静かに月を仰ぐ。
──手が届きそうなくらい近くに、月があった。
「……こんなに、近く感じたのは初めてです」
囁くような声に、篤哉は優しく目を細める。
「……眠れんかったんか?」
「……はい。兄上が、まだ戻って来られないので……」
伏せられた睫毛が月の光を受けて、淡くきらめいた。
その横顔に目を落とし、桐原は言葉をかける。
「……美織ちゃんが、“帰らへん”って言うたら、案外、兄上すぐ帰って来るかもしれんで?」
冗談めかした声に、美織はふっと肩を揺らす。
けれど、次に顔を上げたその微笑みは、どこか安らぎに満ちていた。
「……そうであれば、いいのですが」
その声は、夜風にそっと溶けていった。
屋根の上、寄り添うように並ぶふたり。
やさしい夜風が、そっと頬を撫でていった。
桐原は、美織を腕に抱いたまま、夜空を仰いでいた。
瞳を細めるその視線の先には、冴え冴えと輝く満月が浮かび、月光が銀の薄膜のように二人を包んでいる。
彼の胸元に身を預けた美織も、同じ空を見上げていた。
けれど、その瞳に映る月はどこか遠く、焦点の定まらないまま、彼女の意識は揺らいでいた。
まるで気持ちの置き場を見失ったまま、静かに呼吸だけを繋いでいるようだった。
しばらくの沈黙ののち、桐原がぽつりと口を開く。
「……こんな時くらい、無理して笑わんでもええんやで」
普段の調子とは違っていた。
冗談も軽口もない、まっすぐで穏やかな声音だった。
言葉そのものが、夜風のように柔らかく寄り添ってくる。
「……疲れんか?」
低く問う声に、美織は小さく肩をすくめ、伏し目がちに顔を伏せた。
「……それは……」
言葉は喉の奥でかすれ、そのまま細く消えていく。
しゅんとした表情のまま、彼女は項垂れてしまった。
その様子に、篤哉は思わず苦笑を漏らす。
「……ああ、すまん。そんな顔させたくて言うたんやない」
気まずそうに眉を下げながらも、気遣うようにすぐ言葉を繋ぐ。
けれど美織は、ただ小さく首を横に振るだけだった。
ふたりのあいだを、夜風がふわりと通り過ぎていく。
──そして、ふと。
「……本当に、それでいいのか?」
その言葉は、これまでの柔らかい西訛りとも、飄々とした口調とも違っていた。
静かで、深く、心の奥から零れ落ちるような響きだった。
思わず、美織は目を瞬かせる。
その声に込められた“本音”が、確かに胸を打った。
少しの間ののち──美織はそっと問い返す。
「……桐原さん。選別の時におっしゃっていた言葉……覚えていらっしゃいますか?」
桐原は、きょとんと目をしばたたかせた後、肩をすくめて首を傾げた。
「んー……正直、あのときは気ぃ張っとったしな。何しゃべったか覚えとらへん。たぶん、適当に言うたと思うわ」
悪びれる様子もなく、あっけらかんとした口ぶり。
それがかえって、緊張をゆるめてくれる。
美織は思わず小さく笑った。
「……桐原さんらしいです」
そして、そっと月を見上げる。
「“終わるその前に、たった一度でも──自分の意思で何かを選ぶことができたら、人って少しは報われる気がする”って……おっしゃっていました」
桐原の視線が、美織の横顔を捉える。
「“守る相手も、名乗る名も、自分で選びたい”って……。
その言葉が、わたくしにはとても……眩しかったのです」
彼女の声は震えていなかった。けれど、その奥底には、小さな炎のような感情が灯っていた。
「わたくしは、“香月”という家に名を持って生まれました。
何も選ばぬうちから、進む道はすでに決まっていて……
だから、“自分の意思”にどうすれば辿りつけるのか……ずっと分からなくて……」
その苦悩は、押し殺した声音の隙間から、確かに滲んでいた。
桐原は黙って、ただ耳を傾けていた。
「……でも、もし。
終わるその前に、たった一度でも、“これは自分が選んだ”って言えるものがあれば……
それだけで、少しは救われるような気がして……」
言いながら、美織は再び空を仰ぐ。
月明かりを映す瞳は、澄んでいるようで、どこか不安げでもあった。
その横顔を見つめながら、桐原はそっと息を吐き、口を開く。
「……美織ちゃん」
再び、関西のやわらかな響きが戻っていた。
「俺はな……あの時、自分に言い聞かせたくて、ちょっとええこと言うてしもうたんやと思う」
伏し目がちに、苦笑をひとつ。
「“自分で選ぶ”ってな……ほんまは、怖いことや。
上手くいかんかったとき、誰のせいにもできへん。
失敗も後悔も、ぜんぶ自分で引き受けなあかんからな」
「……はい」
静かに応える美織の声には、覚悟のようなものが滲んでいた。
「せやけど……それでもや。
たった一度でも、自分で選んだって思えるもんがあったら──
人は、それを頼りに前に進める。たとえ結果がどうであっても、や」
その言葉は、軽口ではなかった。
桐原篤哉という男が、これまでの人生で体得してきた“真実”だった。
しばらくの沈黙のあと、美織はそっと口を開く。
「……兄上は、きっと……戻ってきてくださいますよね」
その問いに、篤哉は肩をすくめて、にやりと笑う。
「そらもう。お姫さんが“帰らへん”って言うて待っとったら──
血相変えて、今ごろ全速力で走っとるわ」
その言葉に、美織はふっと笑う。
わずかに強張っていた肩が、やわらかく緩んだ。
「……わたくしも、もう少しだけ──選んでみようと思います」
その言葉に、桐原はゆっくりと頷いた。
月が高く昇り、風がふたりを撫でていく。
その銀色の光の下で、そっと寄り添うふたつの影が──夜の静けさの中に、確かに息づいていた。
静かな夜の屋根の上。
柔らかな夜風がふたりの間を撫でてゆき、静けさの中に、ほのかな体温と呼吸のリズムが溶けていく。
「……桐原さんは、“何かを自分で選んだ”って言えるものは、ありますか?」
胸元から顔を上げた美織が、ふいに問いかけた。
声は小さかったが、そこには揺るがぬ芯があった。
桐原はしばし沈黙したのち、ゆるやかに目を細め、遥かな夜空を仰ぐ。
その瞳には、月光が滲むような翳りが浮かび、過ぎた時間を静かにたどっているようだった。
「……あるよ」
ぽつりとこぼれた声音には、優しさと──ほんのかすかな苦みが混ざっていた。
「あるにはあるんやけどなぁ……おたくの兄貴に、ぜーんぶ台無しにされてもーたわ」
思わぬ名が出て、美織の肩がぴくりと揺れる。頬がわずかに紅潮した。
「……兄上に“忠義という名の愛の告白”をした、あの時……ですね?」
その言葉に、桐原の顔が一瞬で引きつった。
「してへんっ!!してへんねんっ!!美織ちゃんまで乗っかってどうすんねん!」
抱き上げたままの姿勢で抗議するように身じろぎ、美織の横顔を覗き込む。
けれど美織は、唇を押さえ、堪えきれずにくすくすと笑っていた。
「ふふ……だって、あの時の桐原さん、とっても真剣で、素敵でしたから」
「やめぇぇ……これ以上いじられたら、俺ほんまに屋根から飛び降りてまうで……」
言いながらも、桐原の声にはどこか照れた苦笑が滲んでいた。
やがて目線を夜空へ戻し、ふっと静かに息を吐く。
「……うちの一族はな。昔は“忠義”を重んじる家柄やったらしい。
宗家の血やとか、武家の誇りやとか、そういうもんをちゃんと持っとったんやろな」
そこまで語り、彼はふと目を伏せる。
「でもな……気づいた時には、もう道を外れてしもてた。
俺が生まれた頃には、名だけが残った抜け殻でな。
誇りも理も、ただの呪縛になってたんや」
美織は、静かにその胸に身を預けたまま、耳を澄ませている。
「……俺は“与えられた道”しか知らんかった。
それが全てやと思い込んで──気づいたら地の底まで転がり落ちとった」
語調は穏やかでも、その奥には静かな怒りと、痛みの影が潜んでいた。
「“正義”やと信じとったもんが、実は“間違い”やった──
それに気づいた瞬間、俺は初めて立ち止まったんや」
屋根の瓦をそっと撫でるように、夜風がふたりを包む。
「ほんまにな……自分が情けなくなるくらい、打ちのめされた。
でもな──そのときや。俺が“本当の忠義”を目の当たりにしたのは」
桐原は、美織のぬくもりを確かめるようにそっと抱き直す。
その瞳が、月へとゆっくり向けられる。
「……俺の“正義”が間違いやと気づいたきっかけはな、ある“一族”との出会いやった」
語りの調子が、次第に深く、静かな重みを帯びていく。
「──二十年前。うちの一族は、その一族に滅ぼされた。
生き残ったのは、俺が知っとる限り、ほんの数人や」
風が、そっと桐原の髪を揺らした。
「俺は子どもの頃から、ずっと“復讐”を刷り込まれて育った。
その一族は卑劣で、お前の仇や──って。
“お前が仇を討たな、誰がうちの誇りを取り戻すんや”ってな」
美織の腕が、ほんのわずかに彼の着物を掴む。
「──十一の時や。俺は居場所を突き止めて、剣を手に、一人で襲いかかった。
復讐だけを胸に抱えて、何も見えてなかった」
微かに掠れた声が、夜に溶けていく。
「……けど、俺は敗れた。同じくらいの歳の、名も知らん忍びに。
死ぬ覚悟をしたその瞬間──小さな女の子が、俺の前に立ったんや」
一呼吸おき、彼は言葉を選ぶように続ける。
「震えながらも、俺を庇って言うた。
“お願い、殺さないで”って──泣きながら、必死でな」
美織の唇が、小さく震える。
「俺を討とうとしてた忍びが、すっと膝をついて言うたんや。
“貴女の意のままに”って。自分より幼い少女に、命を預ける忠義やった」
その語りに、静謐な余韻が流れる。
「──衝撃やった。
俺が知っとる“忠義”とは、まるで違った。
“仕える”って、こういうことなんやって……心が揺れた」
ふたりの影を、月光が淡く縁取っている。
「その一族は、俺を捕らえることもなく、一時的に保護してくれた。
……そこで、真実を教えられたんや」
語調が、さらに深まっていく。
「──先に襲ったのは、俺らの方やった。
あの一族は、大切なもんを守るために剣を取っただけや。
俺たちは、誇りも理も捨てて、ただ“滅ぼしに”行った。それだけやった」
美織は、じっと篤哉を見上げていた。
その瞳には、ただ真摯なまなざしが宿っている。
「……信じたくなかった。
それまでの全部が否定される気がして、めちゃくちゃ怖かった。
けどな──ほんのひと月でも一緒に過ごして、見えたんや」
桐原はそっと目を伏せる。
「彼らの言葉、姿、生き様……全部が、俺らとはまるで違ってた。
俺たちは“呪い”を背負ってたけど、彼らは“誇り”を守ってた」
風がそっと吹き抜ける。
「滅びかけた敵にすら敬意を向けてくれたんや、“あなたたちは確かに立派だった”って。
──俺はその言葉に救われた。
誇りってな、他人に認められてこそ、意味があるんやって」
言葉が胸に沁み渡る。桐原の声は揺るがず、優しく、確かだった。
「……うちの一族も、本来はきっと、そうやったはずや。
どこで間違えたかは、もう分からん。けど──
“自分で誇りを手放したら、もう終わり”なんや」
しばしの沈黙ののち、彼はゆっくりと微笑んだ。
「──だから、俺は“選び直した”んや。
誰かになるためやなくて、“どう在るか”を選んだんや。
過去を背負ったままでも、誇りを取り戻す生き方を……選んだんや」
それは、静かで確かな決意だった。
美織は、胸の奥にじんわりとあたたかさが灯るのを感じた。
言葉にできない感情が、ゆっくりと満ちていく。
(……この人は、選んだのだ。過去も痛みも抱いたまま、生き直すことを)
“何を守るか”を、自分で決めるために。
“どんな名で在るか”を、自分で選ぶために──
それは、血と涙の果てに辿り着いた、たったひとつの在り方だった。
桐原は、美織をそっと見下ろしながら、やわらかく笑った。
「──そして出会ったのが、おたくの兄貴やった」
美織のまなざしが、わずかに揺れる。
「悠臣は、何も言わへんかった。
けど……その背中も、剣も、目の奥の覚悟も……
全部が、俺の胸に突き刺さったんや」
その瞳に、一瞬だけ、優しい揺らぎが浮かぶ。
「……せやから俺は、“この人になら命を預けてもええ”って思えた。
それが──俺が初めて“自分で選んだ”道や」
ふいに、美織がその胸元に顔をうずめる。
「……桐原さんって、本当に……すごい人、なんですね」
「なんや、急に……」
照れくさそうに目を逸らし、彼は肩をすくめた。
「俺は、何者でもない。ただの通りすがりの変人や」
そう口にしながらも、その声はどこまでも優しく、あたたかかった。
冴え渡る夜空の下、月がふたりをそっと照らしていた。
その月光は静かに降り、美織の胸に、確かな灯火を宿していた。
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