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黄国へ
黄国へ ⑤
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「こちらでございます」
鏡が振り返り小声でそう囁いた。小さく頷き、内心ほっとしながら碧琉は緊張で汗ばむ身体を前へと動かした。
列は碧琉が一歩進む度に頭を下げる。こういう光景は見慣れている。樹に客人を迎える時もやはりこうする。
迎える側の経験はあるが祖国から出た事のない碧琉にはこうした出迎えを受けることは初めてだった。
黄に到着してから乾いた暑さに汗ばんでいたが、緊張で汗が背を脇を滴る。一挙手一投足を見られているかと思うと気が張る。
それにしても暑い。もう脱ぎたいなと思う。
鏡に続き建物の中に入っていく。広間を横切り庭に面した回廊へ出る。人波は広間で途切れた。碧琉は回廊を少し進んだところで袂に忍ばせていた布で額の汗を拭いた。
「これからどこに向かうのでしょうか?」
こそっと囁く碧琉に前を歩く鏡が顔を横に向けた。
「国王がお待ちですのでこのままお会い頂きたく存じますが、如何で御座いましょうか?」
「ではそのように。ところで巻はどこに行ったのでしょう?まだ馬車ですか?」
鏡が歩みを緩めぬまま顔を前に向けた。
「巻様、その他五人のお付きの方は別室で待機していただいております」
「そうですか。あの、」
「はい?」
「巻だけでもこちらに寄越してはもらえませんか?」
「ご希望はしかとお伺いいたしました。後ほど国王へお伝えいたします」
「お願いします」
碧琉は首を傾げる。今の話から推察するに巻らを控えさせているのは黄国王という事になる。
そんな事まで指示しているのか。
今回派遣される兵数はおよそ黄国兵全体の三割ほどと樹国側は推察している。今回の派兵で樹、若しくは樹燃連合軍が黄国兵を捕虜として捕らえ、黄国側に卑怯な取引を要求しないとも限らない。そう考えた黄国が保険の意味で碧琉の身柄を拘束しておく、碧琉は今回の黄国行きをそう考えていた。
だから黄国内のどこかに留め置かれるがそう息苦しい生活ではない、黄国に碧琉が存在する事が大事でその他生活などは取り立てて指示を受けるものではないだろうと思っていた。
友好関係にある黄、樹の関係もまた碧琉がそう考える一因でもあったが黄国王は碧琉と従者を離した。
思っていたより状況は厳しいのだろうか、碧琉は進むごとに表情を固くなる。
胸にじわじわと広がる疑問と暑さで息苦しい。碧琉は喉が渇いて堪らなかった。
鏡が振り返り小声でそう囁いた。小さく頷き、内心ほっとしながら碧琉は緊張で汗ばむ身体を前へと動かした。
列は碧琉が一歩進む度に頭を下げる。こういう光景は見慣れている。樹に客人を迎える時もやはりこうする。
迎える側の経験はあるが祖国から出た事のない碧琉にはこうした出迎えを受けることは初めてだった。
黄に到着してから乾いた暑さに汗ばんでいたが、緊張で汗が背を脇を滴る。一挙手一投足を見られているかと思うと気が張る。
それにしても暑い。もう脱ぎたいなと思う。
鏡に続き建物の中に入っていく。広間を横切り庭に面した回廊へ出る。人波は広間で途切れた。碧琉は回廊を少し進んだところで袂に忍ばせていた布で額の汗を拭いた。
「これからどこに向かうのでしょうか?」
こそっと囁く碧琉に前を歩く鏡が顔を横に向けた。
「国王がお待ちですのでこのままお会い頂きたく存じますが、如何で御座いましょうか?」
「ではそのように。ところで巻はどこに行ったのでしょう?まだ馬車ですか?」
鏡が歩みを緩めぬまま顔を前に向けた。
「巻様、その他五人のお付きの方は別室で待機していただいております」
「そうですか。あの、」
「はい?」
「巻だけでもこちらに寄越してはもらえませんか?」
「ご希望はしかとお伺いいたしました。後ほど国王へお伝えいたします」
「お願いします」
碧琉は首を傾げる。今の話から推察するに巻らを控えさせているのは黄国王という事になる。
そんな事まで指示しているのか。
今回派遣される兵数はおよそ黄国兵全体の三割ほどと樹国側は推察している。今回の派兵で樹、若しくは樹燃連合軍が黄国兵を捕虜として捕らえ、黄国側に卑怯な取引を要求しないとも限らない。そう考えた黄国が保険の意味で碧琉の身柄を拘束しておく、碧琉は今回の黄国行きをそう考えていた。
だから黄国内のどこかに留め置かれるがそう息苦しい生活ではない、黄国に碧琉が存在する事が大事でその他生活などは取り立てて指示を受けるものではないだろうと思っていた。
友好関係にある黄、樹の関係もまた碧琉がそう考える一因でもあったが黄国王は碧琉と従者を離した。
思っていたより状況は厳しいのだろうか、碧琉は進むごとに表情を固くなる。
胸にじわじわと広がる疑問と暑さで息苦しい。碧琉は喉が渇いて堪らなかった。
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