君に二度、恋をした。

春夜夢

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第13話 ひとりでも平気だって、思ってた

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 「……ったく、仕事になんねぇ……」

 カフェの隅、冷めたカプチーノを見つめたまま、ため息が出た。

 

 遥に背を向けた昨日の帰り道から、心の中はぐちゃぐちゃだった。

 あのまま帰って、布団にもぐって、気づいたら朝になっていて。
 それなのに、何も変わっていない。
 変わったのは――俺の心の中だけ。

 

 「婚約話……子供の頃から決まってたって、なんだよ」

 

 遥は確かに“断った”って言った。
 でも、俺は――その事実を知るまで、“何も知らなかった”。

 それが悔しくて、悲しくて、なにより惨めだった。

 

 思い返すと、俺は昔からそうだった。

 親も教師も、誰も守ってくれなかった。
 だから、ひとりでなんでも片付けてきた。

 頼るのは弱さだと思ってた。
 泣くのは負けだと思ってた。

 

 「……俺、まだそう思ってたんだな」

 

 遥に甘えることができなかったのも、
 遥を“信じきれなかった”のも――

 結局は、俺がまだ「誰かにすがること」を怖がっていたからだ。

 

 (――でも、あいつは、俺を信じてくれてたのに)

 

 あの目。あの声。あの手。

 思い出すたび、胸の奥が痛くなる。

 

 「……俺、ほんとは、もうひとりじゃ平気じゃないくせに」

 

 言葉にして、ようやく自分の本音に気づいた。

 遥じゃなきゃダメなんだ。
 あの人が、隣にいてくれなきゃ――

 俺は、前に進めない。

 

 「……会いに行こう」

 

 まだ間に合う。遅すぎなんかじゃない。
 たとえ、また傷ついたとしても。

 それでも、もう一度、ちゃんと――この想いを届けたい。
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