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第24話 「おかえり」と言ってくれる人が、家にいるということ
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引っ越しの日は、快晴だった。
遥のタワーマンションを出て、俺たちは**“ふたりで選んだ部屋”**へ移った。
そこは、都心から少し外れた場所。静かで、広すぎず、けれど陽当たりの良い部屋。
「どう? 意外とまともな家具のセンスしてただろ?」
「いや、センスより“生活力”があるかどうかだよね」
そんな他愛もない会話を交わしながら、段ボールをほどいていく。
冷蔵庫にはふたりの名前が並ぶメモ、
玄関には並ぶ靴、
洗面台にはまた、ふたつの歯ブラシ。
「……これで、いよいよ本当に“帰る場所が一緒”になったんだな」
遥の言葉に、俺は軽く頷いた。
「“ただいま”って言って、“おかえり”って返してくれるやつがいる。
それだけで、たぶん、どんな日も乗り越えられる気がする」
「おかえり」
たったその言葉が、昔の俺には手に入らなかったものだった。
家にいても誰も帰りを待っていなかった。
孤独を埋める手段ばかりを探していたあの頃。
(でも、今は違う)
夕方、スーパーで買ってきた材料で、簡単な夕飯を一緒に作った。
キッチンで並んで立つだけで、なんだか照れくさいのは不思議だ。
「味、どう?」
「うん、遥にしては上出来。食える」
「……あのな?」
笑いながら、ふたりで食卓を囲んだ。
ふと――遥が聞いた。
「そういえばさ、春翔って……家族とは連絡とってる?」
その言葉に、箸が止まった。
「……いや。ずっと、連絡先も変えてないけど、向こうからは来てない」
「そっか」
それ以上、遥は何も聞かなかった。
でも、その“聞かない優しさ”が逆に、胸に沁みた。
「……俺から、一度くらい連絡してもいいかもな」
自分で言って、驚いた。
あれだけ閉ざしていたのに、今は――「伝えたい」と思っている自分がいる。
家族に、自分のことを。
遥という存在を。
そして――今、幸せだってことを。
「……うん。もし、会いたくなったら、そっと背中押すから」
遥がそう言ってくれたとき、俺は小さく「ありがとう」と返した。
この人が隣にいる限り、
どんな過去も、ちゃんと越えていける気がした。
遥のタワーマンションを出て、俺たちは**“ふたりで選んだ部屋”**へ移った。
そこは、都心から少し外れた場所。静かで、広すぎず、けれど陽当たりの良い部屋。
「どう? 意外とまともな家具のセンスしてただろ?」
「いや、センスより“生活力”があるかどうかだよね」
そんな他愛もない会話を交わしながら、段ボールをほどいていく。
冷蔵庫にはふたりの名前が並ぶメモ、
玄関には並ぶ靴、
洗面台にはまた、ふたつの歯ブラシ。
「……これで、いよいよ本当に“帰る場所が一緒”になったんだな」
遥の言葉に、俺は軽く頷いた。
「“ただいま”って言って、“おかえり”って返してくれるやつがいる。
それだけで、たぶん、どんな日も乗り越えられる気がする」
「おかえり」
たったその言葉が、昔の俺には手に入らなかったものだった。
家にいても誰も帰りを待っていなかった。
孤独を埋める手段ばかりを探していたあの頃。
(でも、今は違う)
夕方、スーパーで買ってきた材料で、簡単な夕飯を一緒に作った。
キッチンで並んで立つだけで、なんだか照れくさいのは不思議だ。
「味、どう?」
「うん、遥にしては上出来。食える」
「……あのな?」
笑いながら、ふたりで食卓を囲んだ。
ふと――遥が聞いた。
「そういえばさ、春翔って……家族とは連絡とってる?」
その言葉に、箸が止まった。
「……いや。ずっと、連絡先も変えてないけど、向こうからは来てない」
「そっか」
それ以上、遥は何も聞かなかった。
でも、その“聞かない優しさ”が逆に、胸に沁みた。
「……俺から、一度くらい連絡してもいいかもな」
自分で言って、驚いた。
あれだけ閉ざしていたのに、今は――「伝えたい」と思っている自分がいる。
家族に、自分のことを。
遥という存在を。
そして――今、幸せだってことを。
「……うん。もし、会いたくなったら、そっと背中押すから」
遥がそう言ってくれたとき、俺は小さく「ありがとう」と返した。
この人が隣にいる限り、
どんな過去も、ちゃんと越えていける気がした。
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