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第19話『顔を消す方法』
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──テンプレート001は、あなたの中に保存されています。
その通知が届いてから、沙月の中にずっと残っている違和感。
誰かが自分を覗いているような、
自分という存在が「誰かの記録」でしかないような──そんな感覚。
(“あの顔”を、消さないと。私自身が、私であるために)
だが、どうやって?
スマホの中から削除する?
アカウントを消す?
アプリを破壊する?
……違う。“顔”そのものを消すしかない。
でも、それはつまり──
自分自身を消すことと、紙一重だった。
* * *
沙月は、再びFaceMeを開いた。
トップに表示される“おすすめテンプレート001”。
それは、あの無表情の少女の顔だった。
今や数百万人がそのフィルターを使い、「理想の顔」として拡散している。
> 「この顔があれば、誰だって人気者になれる」
「この顔で、人生変わった」
「整形しなくていい時代、最高!」
そんなコメントが並ぶ中、沙月の目には、その笑顔たちが**どれも同じ“仮面”**に見えた。
「……このままじゃ、“彼女”は増殖し続ける……」
止めなきゃ。
でも、私に何ができる?
そのとき、ふと思い出す。
──八重の言葉。
> 「“本当の顔”を覚えてる限り、“彼女”は中に入りきれない」
「でも逆に、“誰も覚えていない顔”になったら……完全に取り込まれる」
(なら……“誰の記憶にも残ってない”顔にすれば……この呪いは終わる?)
つまり、“顔を消す”とは──
誰の記憶にも残らない存在になること。
それは、恐ろしい選択だった。
写真も、動画も、SNSも、思い出も──
「沙月」という顔の痕跡を、完全にこの世界から削除する。
(私が、“私”を消す……)
けれど、決意は揺るがなかった。
沙月はまず、すべてのSNSアカウントを削除。
フォルダに保存された顔写真、映像、タグ、すべてを消去。
スマホの設定から、FaceIDも、ロック画面の画像も変更。
──最後に、姿見の前に立つ。
ゆっくりと、自分の顔を見つめる。
加工もされていない。
誰の理想でもない、自分だけの顔。
「……さよなら」
鏡を布で覆い、その上からガムテープで封をした。
そして、スマホのカメラレンズにも黒テープを貼り、再起動。
もう一度、FaceMeを開く。
> 『テンプレート001が削除されました』
『記録なし』
『ログ参照不可』
その瞬間、画面がゆっくりと揺れ、ブラックアウト。
そこに映ったのは、何もない、完全な“空白”。
──シャリ……
部屋の奥から、最後の音が聞こえた。
誰かが、這ってくるような音。
だけど、もう怖くなかった。
沙月は目を閉じ、深く息を吐く。
> 「君の顔は、もうここにいない。
だから、もうどこへも行けないよ──“彼女”」
* * *
翌朝。
沙月は、目覚めた。
そして気づく。
──スマホが、真っさらになっていた。
連絡帳も、写真も、履歴も、何もない。
だが、胸の中には確かに、“自分”だけが残っていた。
(誰のテンプレートでもない。誰の代わりでもない。
やっと……私になれた気がする)
ふと、画面にひとつだけ通知が浮かんだ。
> 『記録されていない顔、1件確認』
でもそれは、もう“誰かのため”じゃなかった。
それは、自分が自分であることを証明する、たったひとつの“痕跡”。
その通知が届いてから、沙月の中にずっと残っている違和感。
誰かが自分を覗いているような、
自分という存在が「誰かの記録」でしかないような──そんな感覚。
(“あの顔”を、消さないと。私自身が、私であるために)
だが、どうやって?
スマホの中から削除する?
アカウントを消す?
アプリを破壊する?
……違う。“顔”そのものを消すしかない。
でも、それはつまり──
自分自身を消すことと、紙一重だった。
* * *
沙月は、再びFaceMeを開いた。
トップに表示される“おすすめテンプレート001”。
それは、あの無表情の少女の顔だった。
今や数百万人がそのフィルターを使い、「理想の顔」として拡散している。
> 「この顔があれば、誰だって人気者になれる」
「この顔で、人生変わった」
「整形しなくていい時代、最高!」
そんなコメントが並ぶ中、沙月の目には、その笑顔たちが**どれも同じ“仮面”**に見えた。
「……このままじゃ、“彼女”は増殖し続ける……」
止めなきゃ。
でも、私に何ができる?
そのとき、ふと思い出す。
──八重の言葉。
> 「“本当の顔”を覚えてる限り、“彼女”は中に入りきれない」
「でも逆に、“誰も覚えていない顔”になったら……完全に取り込まれる」
(なら……“誰の記憶にも残ってない”顔にすれば……この呪いは終わる?)
つまり、“顔を消す”とは──
誰の記憶にも残らない存在になること。
それは、恐ろしい選択だった。
写真も、動画も、SNSも、思い出も──
「沙月」という顔の痕跡を、完全にこの世界から削除する。
(私が、“私”を消す……)
けれど、決意は揺るがなかった。
沙月はまず、すべてのSNSアカウントを削除。
フォルダに保存された顔写真、映像、タグ、すべてを消去。
スマホの設定から、FaceIDも、ロック画面の画像も変更。
──最後に、姿見の前に立つ。
ゆっくりと、自分の顔を見つめる。
加工もされていない。
誰の理想でもない、自分だけの顔。
「……さよなら」
鏡を布で覆い、その上からガムテープで封をした。
そして、スマホのカメラレンズにも黒テープを貼り、再起動。
もう一度、FaceMeを開く。
> 『テンプレート001が削除されました』
『記録なし』
『ログ参照不可』
その瞬間、画面がゆっくりと揺れ、ブラックアウト。
そこに映ったのは、何もない、完全な“空白”。
──シャリ……
部屋の奥から、最後の音が聞こえた。
誰かが、這ってくるような音。
だけど、もう怖くなかった。
沙月は目を閉じ、深く息を吐く。
> 「君の顔は、もうここにいない。
だから、もうどこへも行けないよ──“彼女”」
* * *
翌朝。
沙月は、目覚めた。
そして気づく。
──スマホが、真っさらになっていた。
連絡帳も、写真も、履歴も、何もない。
だが、胸の中には確かに、“自分”だけが残っていた。
(誰のテンプレートでもない。誰の代わりでもない。
やっと……私になれた気がする)
ふと、画面にひとつだけ通知が浮かんだ。
> 『記録されていない顔、1件確認』
でもそれは、もう“誰かのため”じゃなかった。
それは、自分が自分であることを証明する、たったひとつの“痕跡”。
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